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春になると子どもをもつ親の間で、PTAをめぐる攻防戦が繰り広げられるといいます。本来であれば、子どものための活動であるのに、なぜ時に保護者間の対立をうみ、学校に対する不信感が芽生える結果にもなっているのでしょうか。

「PTAは必要ですか?」

弁護士ドットコムがLINEで意見を募集すると、様々な声が寄せられました。切実な訴えの声をあげる方もいる一方で、実際に役員をつとめた方からは「やってよかった」という声も届きました。さまざまな体験談をご紹介します。

●「『子どものために』という大義名分を振り回されて…」

「不要だと思います。ほとんどのみなさん当然嫌がっていますし地獄だと言っていますが、全ては『こどもたちのために』という大義名分を振り回されて泣く泣く嫌々続けている活動です」というのは、神奈川県の主婦の女性(30代半ば)です。

この女性の地域では、学校の保護者というだけで、学校のPTAに1年間、さらに町内会の仕事を1年間、あわせて2年も費やす義務があるといいます。PTAと町内会がなぜつながるのか、疑問をもつ人もいるかもしれませんが、学校の予算が足りないため、PTAや地域からの補充で学校運営がなされている実態があるのだとか。

「学校に提出する個人情報を提出すると、勝手に町内会にも加入者扱いになります。そして学校での待ち伏せや電話連絡、訪問連絡を受けて、町内会活動もすることになっています」

女性は、学校が町内会にも名簿を横流ししている疑いを抱いています。PTAを通して得るものはなかったのでしょうか。唯一よかったことがあったと言います。

「日本の公教育の著しい時代遅れな面を体感できたことです。そのことにより、一部の先生方の熱意だけで保たれてることを知りました。改めて先生方に対して感謝の気持ちになれたことはよかったです。悪かったことは、あげ切れないほどありすぎますが」
「コロナのおかげで、PTAに関しては(仕事が減り)周りもみんな本当に喜んでます! このまま、簡素化されてしまえば良いと心から思います。本当に必要な活動はごく一部です」

●退会を申し入れると「子どもがかわいそう」

この女性に限らず、学校に不信感を抱く原因として、名簿の不適切利用を指摘する人が複数ありました。

「PTAが任意であることを知らずに勝手に入会させられて無理矢理役割を押し付けられ、とても嫌な思いをしました。退会して学校からの名簿の横流し(ここから役員決めのくじが作られます)は条例違反であるとお伝えしてやめていただき、学校とPTAに任意を周知してほしいと訴えています。しかし、なかなかうまくいきません」(鹿児島県・会社員)

本部や教育委員会に対し、退会の申し入れをした方々もいました。

東京都の主婦(43)は、入学と同時にPTA会員となる制度に疑問を抱き、本部にかけあいました。ところが、本部側は露骨に拒否したのだといいます。

「子どもの不利益を言われ退会阻止されました。『卒業記念品など、PTA会費で買っているものをあげられなくなるし、イベントの参加も出来なくなってしまう。未加入だとお子さんがかわいそう』という話でした」(同)

そこで、教育委員会にも訴えました。

「教育委員会の回答は、親の加入未加入で児童を区別することは許されないとの事でしたが。しかし社会教育法上、教育委員会や区はPTA を指導する事が出来ないとのこと。こういった構造が1番問題ではないかと思いました」

こうした現状に、関東地方の会社員男性(35)は「学校も教育委員会もPTAに対し個人情報を当然のように提供している現状に不信感が募る」と指摘しました。

「市役所及び教育委員会の個人情報保護担当に話を伺ったところ、教育委員会自体が個人情報保護条例違反をしていたと認めた。ただし同条例においての罰則は『個人』に対してのみであり、教育委員会及び学校を訴えることは実質難しい。

おかげで現状では学校はPTAに対し個人情報をなんでも提供し放題。先日のニュースで保護者が土下座させられた事件があったが、(学校側はPTAに名簿を流しているため)住所が知られており、自宅に乗り込んでくる可能性を考えると恐怖を覚える」(同)

●役員になると義父母が「そこまで出しゃばりたいの?」

PTA活動を通して、家族のストレスが高まったという人もいました。

東京都の専業主婦の女性(50代)は、夫が転勤族だったため、その土地ごとに何度もPTA活動をしてきたそうです。「子どもが問題起こしたり苛められた時には、そのお陰か先生やママ友に助けられたりもしました」といいますが、3人の子どもがいたため、苦労もありました。

「役員の押しつけ合いで困った事は、妊娠中でも乳幼児や介護を抱えていても、断る理由にはならない事。複数の子供がいても、それぞれの子で受けなければなりません。生徒数の多かった昔はきょうだい免除が有りましたが、子どもが3人以上なら、毎年受けている状態で、負担は大きいです。3人も産む方が悪いと言われているような制度です」

また活動そのものではなく、義父母との関係にもストレスがありました。

「児童数が多く、役員が保護者全員回り持ちの時代でなかった時代の義父母が、PTAは特別やりたい人だけする事、と思い込み、理解が無かった事です。『断れば良いのに、押し付けられるなんて、みんなから馬鹿にされてる』『そこまでして出しゃばりたいの?』と、既に受けた役を断るように言われました」

学校はどう思っているのでしょうか。元教員という男性(福岡県、50代)は、次のように話しました。

「PTA役員が学校の行事や研究会の下請けになってしまっているのなら辞めた方が良いと思います。すなわち意味がないということです。しかし、仕事が多忙なため世間との関係が少ない先生にとっては、本当にいい機会であると思います」

教員にとってもメリットがあるのだとしました。PTAを通して、ある変化もみられると言います。

「今は昼間に役員会や委員会があることはなくなりました。母親任せではなく、父親が委員になる方ちらほら出てきましたよ。全体としては委員会の縮小など学校のPTAの仕事を減らすことはやっています。スリム化は大変ですが、賛成していただけます」

●相次いだ「自動加入」への疑問

PTAに不信感が募る理由として、「いつの間にか加入していた」問題を指摘する声が相次ぎました。学校側からはPTAに名簿を渡さないなど厳密に運用する学校もあるようですが、それでもPTA会費を給食費と一緒に引き落とすことで、自動的に入会しているケースもありました。

学校、各家庭で事情は異なりますが、皆さんの意見を読み、加入方法の整備をすることで、PTAに対するネガティブな見方は和らぐのではないかと感じます。

この記事では主に「PTAは不要」と考える読者の声を紹介しました。では「PTAは必要」とする保護者はなぜそう考えるのか。続いて紹介していきます。