ロマンスカーミュージアム館長 高橋孝夫さんは元小田急の運転士 展示されている全てのロマンスカーを運転した経験を持つ

2021年3月26日、小田急線海老名駅隣接地に今春オープンする「ロマンスカーミュージアム」の竣工お披露目会が行われました。

ロマンスカーミュージアム入り口 小田急海老名駅とJR海老名駅の間に位置する

小田急電鉄としては小田急線開業(1927年)以来初となる屋内常設展示施設です。同社はこれまで喜多見・海老名に退役車両を保存し、ファミリー鉄道展などの場で一般公開してきましたが、2011年ごろから本施設の構想がスタート。複々線が完成することで車両が増え、保存のための場所がなくなるという物理的な事情もあり、2018年4月に同施設の建設を発表しました。

「ロマンスカーミュージアム」には、開業当時の車両や同社の「顔」である歴代特急ロマンスカーが並びます。それだけでも鉄道ファン・小田急ファンとしては足を運びたくなるものですが、他にも沿線の巨大ジオラマやキッズエリアなど、小田急の特性を生かした様々なコンテンツを用意し、「“子ども”も“大人”も楽しめる鉄道ミュージアム」として2021年4月19日に晴れてオープンを迎える運びとなりました。

小田急電鉄執行役員 CSR・広報部長の山口淳さんによれば、地域の方々のコミュニケーション施設としての役割にも期待しているそうで、「様々なイベントや企画展示を行ったり、近隣の施設と協力しながら、町の賑わい創出にも寄与していきたい」と語りました。そうして小田急ファンや鉄道ファンのみならず、地域の方々も視野に入れながら、老若男女問わず様々な方に「小田急に親しんでいただく場」を目指しています。

1階には歴代ロマンスカーや「モハ1」を展示

歴代ロマンスカー車両が並ぶ 一部車両は内部への立ち入りも可能

展示内容を順番に見ていきましょう。1階では1957年から2018年にかけて新宿と小田原・箱根を結んで走ったロマンスカーの歴代5車種を常設展示しています。展示車両の中には立ち入りが可能なものも。なお、床の路線はミュージアムのために新たに敷設したもので、どの角度から見ても美しく見えるようライティングにもこだわったそうです。

また1階ヒストリーシアターには小田急線開業当時の車両「モハ1」が展示されています。もともと小田急電鉄から熊本電鉄に譲渡された車両ですが、30年ほど前に小田急電鉄が買い戻し、喜多見の電車基地へ。その後喜多見から相模大野へ移動して一年近く留置したのち、ミュージアムへ移送されました。

シアターでは軽快なタップダンスとジャズの音楽にあわせ、小田急電鉄のはじまりと歴史、特急ロマンスカーの誕生と進化の軌跡をたどる映像が流れます。私見ですが、この4分半ほどの映像はPVとしてもワクワクさせてくれるつくりで、クラブミュージックが好きな方は特に気に入るかもしれません。

ジャズとダンスと小田急の歴史を融合したスタイリッシュな映像

2階は沿線を再現した巨大ジオラマほか、体験型コンテンツも充実

展示が中心の1階とは異なり、2階は視覚型・体験型のコンテンツが充実しています。

「ジオラマパーク」では、新宿から箱根までの沿線の多様さを表す約190平方メートルの巨大なジオラマを展示。壁一面をスクリーンとした光と音のジオラマショー「時間と距離のロマンス」や、刻々と移り変わる沿線の町並みの中をロマンスカー10種と通勤電車5種が走るジオラマ展示「小田急沿線の1日」など、ジオラマを活用したコンテンツを視覚的に楽しめる場となっています。

小田急沿線をジオラマで再現
夜の時間帯ではこのような写真も撮れます

「キッズロマンスカーパーク」では、ロマンスカーのシンボルとして親しまれる「展望席」を再現。滑り台やネット・ボールプールなど子供が身体を動かして楽しめる遊び場も用意されています。「こうさくしつ」ではオリジナルの「ロマンスカー」や「おうち」を作る「ペーパークラフト体験」が楽しめるだけでなく、作ったロマンスカーを走らせることも!

展望席を再現した「車両」や体を動かして楽しめる場所も
ペーパークラフト体験で作った車両を実際に走らせることもできる

「ロマンスカーアカデミア」もご家族で楽しめそうな場になっています。壁の前で手を動かすことで線路がひかれ、駅を中心に家やお店、学校など沿線の町並みができていく非接触型のインタラクティブアートや、ロマンスカーLSE(7000形)の運転台を再活用したシミュレーターも。時間は交代も含めて1回15分、運転時間は10〜12分ほど。本物の運転台と実際に運転台から撮影した展望映像、そして本物の小田急司令のアナウンスを聞きながら運転を疑似体験できます。

壁の前で手を動かすと魔法のように線路や沿線の町が次々できあがる
運転台シミュレータを操作する様子
本物にこだわったシミュレーター

2階エントランス左側にはミュージアムカフェ「ROMANCECAR MUSEUM CLUBHOUSE」も。ロマンスカーミュージアム利用者のみならず、どなたでも入場無料で利用でき、小田急電車が海老名駅を発着する様子を見ながら食事を楽しめるようになっています。

海老名駅を眺めながら軽食を

トレインビュースポットと言えば、屋上の「ステーションビューテラス」も見逃せません。海老名駅を通過・停車する小田急電鉄車両の動きが見渡せるうえ、ロマンスカーの時刻表も掲示されているため、誰でも簡単にロマンスカーを眺めたり撮影したりできるスポットです。

屋上に掲示されたロマンスカー時刻表
時間通りMSEがやってきました

入館料は? 最初は予約制?

コロナ禍ということもあり、「ロマンスカーミュージアム」への入館は当面の間、日時指定の完全予約制です。

予約は2021年4月1日(木)12時から、「ロマンスカーミュージアムWEBサイト」で受付開始。1ヶ月先まで予約でき、2021年5月1日以降の受付は1ヶ月前の12時からとなります。

入館料は大人(中学生以上)900円、子ども(小学生)400円、幼児(3歳以上)100円、3歳未満は100円です。また運転シミュレーターなどは有料で、来館後に時間帯ごとの抽選で当選された方のみ体験できるなど、コンテンツごとに細かな違いがありますので、必ず事前にWEBサイトでご確認ください。

文/写真:一橋正浩