【木村隆志】V6解散が青天の霹靂でなく「必然」でしかない訳

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3月13日付のスポーツ新聞各紙は1面あるいは最終面でV6解散と森田剛さんの退所を大きく報じました。突然の発表はネガティブかポジティブか――(東洋経済オンライン編集部撮影)

まさに急転直下。3月12日、ジャニーズ事務所はV6が今年11月1日で解散することを発表しました。メンバー6人のうち、森田剛さんはジャニーズ事務所を退所し、坂本昌行さん、長野博さん、井ノ原快彦さん、三宅健さん、岡田准一さんの5人は事務所に残ってソロとして活動するようです。

近年、ジャニーズ事務所のタレントが次々に退所しているほか、嵐のように活動休止するグループも現れる中、1995年のデビューから一人も欠けることのなかったV6には「抜群の安定感」「変わらない安心感が凄い」などと称える声が挙がっていました。また、昨年はデビュー25周年を迎え、11月1日には彼らの聖地・国立代々木競技場第一体育館で配信ライブを行うなど健在ぶりを見せていただけに、驚きを感じる人も少なくないでしょう。

しかし、V6の解散は決して青天の霹靂ではなく、むしろ必然の理に見えるのです。

ファンが「ねぎらいムード一色」の理由

V6はジャニーズ事務所のホームページに「ファンの皆さんへ」と題したメッセージをつづりました。

その中で特筆すべきは、「僕たちは、2019年の春頃から、自分たちの人生について深く話し合うようになりました。何度も6人だけで話し合いを重ね、それぞれが一人の男として、大きな決断をすることとなりました」というフレーズ。この文章で、コロナ禍の前から長い時間をかけて話し合ってきたこと、25周年を飾ってファンを楽しませてからの解散発表であったことの2点が多くの人々に伝わったのです。

これによって世間は、賛否両論ではなく、ねぎらいムード一色になりました。事実、ネット上には、「ありがとう、V6」「寂しいけど応援しています」「仲間割れとか不祥事とかの解散じゃなくてよかった」などのポジティブな声があふれています。こういうときは決まって「解散じゃなく5人でも続けてほしい」などの声が挙がるものですが、今回は「『6人じゃなければV6じゃない』ってグループ愛があるよね」などと理解を示す声が大勢を占めていることに驚かされました。

さらにファンたちを「解散もやむなし」「むしろ今までありがとう」という気持ちにさせたのが、「今もなお、メンバー同士、冗談を言い合える日々が続いていることに感謝し、残された時間を大切なファンの皆さんとどう過ごしていけるのか、日々話し合っていきたいと思います。僕たちの気持ちは一つです」というフレーズ。解散するのに冗談を言い合える、「僕たちの気持ちは一つ」と言い切れる、彼らの関係性をはっきりさせたことがポジティブな印象を決定づけました。

SMAPが解散したほか、少年隊とTOKIOも事実上の解散状態。関ジャニ∞、NEWS、KAT-TUNの人数も減り、そのたびにネガティブな記事が飛び交っていましたが、V6の解散はそんな重苦しい流れを変えるポジティブなものになりそうなのです。

解散も人数減も復活もぜんぶアリ

V6の解散がポジティブなものになりそうな最大の理由は、「新たなスタンダードを作り、他グループの選択肢を増やすことになる」から。

個人の意思が尊重される現在の世の中で、「解散は悪」「あいつのせいだ」などとネガティブなムードになる風潮は時代錯誤。どんなに人気のあるグループでも「解散は悪いことではなく、個々人の意志を尊重する」のがスタンダードであり、人生の選択肢を与え合うべき時代なのです。

一方で、結成時8人から現在5人の関ジャニ∞、結成時9人から現在3人のNEWS、結成時6人から現在3人のKAT-TUNのように、人数が減りながら活動を続けていく形もアリ。いくつかの選択肢があり、話し合いのうえで選ぶことで、本人、事務所、ファンの3者が納得できる形につながっていくでしょう。

さらに言えば、もし解散を選んでも、バンドなどでよくあるように「やっぱりもう一度やろう」と復活することも、スタンダードの1つにして選択肢に含めるのもアリ。それくらい気楽なスタンスのほうが本人たちは思い切った決断を下しやすく、ファンも受け入れやすいものです。例えば、「解散後の復活もアリ」という気楽なスタンスが浸透し、他グループの再結成につながれば、喜ぶ人は多いのではないでしょうか。

アイドルに限らず活動期間の長いグループほど、その去就は「0か100か」の両極で考えがちですが、あえてファジーにしておくほうが、むしろ自分たちにもファンにも優しい決断となることがあるものです。

アイドルもアラフォーで人生を考え直す

また、アイドルグループの去就に選択肢が増えることは、ジャニーズ事務所にとってもポジティブなこと。

主にローティーンのころから人生を捧げてきたジャニーズのアイドルたちは、このところアラフォー世代に差し掛かったころ、自分の人生を考え直す傾向があります。そんなとき、マネジメントサイドが今後の選択肢を提示して、よりよい形を模索していく形が望ましいのですが、これまでのジャニーズ事務所にはそうした動きが見られず、本人もファンも不本意な結果になることが少なくありませんでした。だからこそV6の発展的な解散は、事務所全体のイメージアップになるとともに、所属タレントたちの不安を軽減することにもつながっていくでしょう。

国民的グループだったSMAPが解散し、嵐が活動休止したばかりの今、ジャニーズ事務所は若手グループの売り込みと人気定着に動いている真っ最中。民放各局に、King & Prince、Snow Man、SixTONES、なにわ男子、Travis Japan、HiHi Jets、美 少年ら、主に20代のアイドルを猛烈に売り込み、ここまでは順調に露出を増やし、認知度が上がりはじめています。

V6のポジティブな解散と、それに伴うジャニーズ事務所のイメージアップは、彼ら若手グループの追い風にもなるでしょう。世間の人々に「SMAPのようにならないでほしい」「嵐のような活動休止は本当に幸せなのかな」などと思われるのではなく、「彼らならV6のように解散まで誰も欠けることなく活動できるのではないか」と感じさせられる可能性が生まれたのです。

ジャニーズ事務所は今年1月16日、「満22歳到達後の最初の3月31日までに、ジャニーズJr.としての活動継続についてジャニーズ事務所との合意に至らない場合は、ジャニーズJr.の活動としては同日をもちまして終了とさせていただくことといたします」と発表しました。いわゆる定年制であり、2023年3月31日からの適用が予定されています。

これは「大学卒業にあたる年齢で一線を引くことで、人生の選択肢を広げてもらったほうがいいだろう」という親心も感じさせる制度。しかし、人生の選択肢を考えるべき年齢は、入口となる22歳だけではなく、出口になりやすいアラフォーやアラフィフも同様でしょう。その点、V6が出口の新たなスタンダードを作ることで入口と出口が整理されて、組織としてのバランスがよくなり、健全な世代交代を実現させることにもつながっていきます。

もともと年齢差が大きいグループの安定感

もともとV6は、年上3人の20th Centuryと、年下3人のComing Centuryとの年齢差が大きく、結成当初は「他グループ以上に長年続けていくことが難しいのではないか」と言われていました。そんな彼らが「抜群の安定感」「変わらない安心感が凄い」と言われるほどになったのですから、「解散の悲しさ」ではなく「継続の素晴らしさ」を感じさせるのは当然なのかもしれません。

今回のコメントは、「新型コロナウイルスの影響により、世界中で困難な状況が続いております。表現者として、V6として、一人でも多くの笑顔を増やせるよう努めてまいります」「まだまだ、僕たち6人にしか出来ないことを追求していきます」という力強い文章で締めくくられていました。

最後にV6として何をして笑顔を増やしてくれるのか。まだ7カ月あまりの時間があるだけに彼らなら、集大成となるライブとリリース、さらにシンボル的番組である「学校へ行こう」(TBS系)のフィナーレも飾ってくれるでしょう。