写真はイメージです(以下同じ)

 ホワイトデーが近づくと「今年はどんなお返しがもらえるんだろう」と、わくわくする人も多いはず。しかし、藤沢朋美さん(仮名・31歳)はそんな気持ちを、これまでに抱いたことがありませんでした。

「私にとってホワイトデーは“無”のイベントでした。何も返ってこないのが当たり前。罵倒されることも多かったので、毎年、こんなイベントなんてなくなればいいのに……と思っていました」

◆穏やかだと思っていた彼はモラハラ気質だった

 藤沢さんは22歳の頃、10代の頃から付き合っていた男性と結婚。自身の家庭環境があまり良くなかったこともあり、幸せな家庭を作りたいと強く願っていました。しかし、結婚後、穏やかだと思っていた彼の本性を知り、驚愕。夫は朋美さんが些細なミスをするたびに、「ともちゃんってさ、本当に馬鹿だねぇ。役立たずだね」と笑いながら罵倒してきました。

「耐えられずに本気で怒ったこともありましたが『冗談も通じないの?』と言われ、何週間も無視されました。ギスギスした空気を感じると自分が苦しくなってしまう。だから、言いたいことを飲み込むようになりました」

 夫の言動は機嫌によって変わるため、朋美さんは居心地のいい家庭を作ろうと頑張ったそう。

「特に料理は力を入れていました。例えばグラタンの日なら時間がなくても、ホワイトソースから手作りしたりして。笑っていてくれるときは暴言を吐かれないし、優しい人だったから、私がしっかり尽くしていればいいんだと思っていました」

◆ホワイトデーは罵倒される日

 夫の機嫌を損ねないように尽くし続ける日々……。そうした中で感覚が麻痺していっても朋美さんが毎年、憂鬱な気持ちになってしまうのがホワイトデー。

「バレンタインに贈ったチョコレートの至らなさを責め立てられるのが、我が家のホワイトデー。手作りじゃなかったり、あげなかったりしたら余計に罵倒されたので、毎年欠かさず作っていました」

「何年作っても、上達しない」「今年もおいしくなかったよ」そんな言葉を夫から言われるたびに朋美さんの心はすり減っていきました。

「付き合っているときにもらったものも、まずかったから捨てていた、と言われたときは一番苦しかった。交際中も含め、私はホワイトデーに夫から何かを貰ったり、ありがとうと言ってもらえたりしたことはありません」

 心を何度も傷つけられた結果、朋美さんは精神を病み、実家へ戻ることに。その後、両親や友人のサポートを得て、夫との離婚が成立しました。

◆離婚成立から3年…新たな彼氏が

 離婚から3年ほど経った頃、ようやく新しい出会いに前向きになれたことから、朋美さんはマッチングアプリを利用してみることに。2歳年上の男性と意気投合し、交際するようになりました。

「彼はとにかく、イベント事を大事にしてくれる人。私の誕生日もちゃんと祝ってくれて、バレンタインにはこちらが委縮してしまうほど、喜んでくれました。そういう人だと知ったのに、初めてのホワイトデーは怖くてたまらなかったです」

 不安だらけで迎えたホワイトデーでしたが、その日はこれまでとは違った感情が芽生えた1日となりました。夜景の見えるレストランで食事をごちそうしてくれ、チョコが苦手な朋美さんでも食べられそうなお菓子を「お返しだよ」と、くれた彼。今まで経験したことがない優しさに触れ、朋美さんは嬉しく思い、戸惑いもしました。

◆「なぜこんなことをしてくれるの?」彼の答えは…

「他の人にとっては当たり前なことなのかもしれませんが、私は何も与えられないのが当たり前だったので、なぜこんなことをしてくれるのかとも思い、彼に尋ねてしまいました」

 すると、彼は「ホワイトデーはいつもよりちょっといいご飯を食べたりして、朋美が笑顔になる日なんだよ。バレンタインありがとうの気持ちが伝われば嬉しいな」と言ってくれたそう。この言葉は、朋美さんの心に深く刺さりました。

「けなされるのが当たり前な期間が長かったので、人から思ってもらえることが怖く感じるときもありますが、ありがたいことにこうやって優しさをくれる人と出会えたので、ゆっくりと自分も変わっていけたら……と思います」

 今年のホワイトデーも朋美さんはきっと、笑顔でいられたはず。これまで、人の気持ちを最優先してきたからこそ、これからは自分を優先した人生を歩んでほしくなります。

<取材・文/古川諭香>【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291