「軽い立ち話のつもりで会話を始めたら相手がなかなか話を終えてくれない」「もっと話したかったのに相手が会話を打ち切ってしまった」など、会話が理想のタイミングで終わらなかった経験は多くの人が持っているはず。ハーバード大学やペンシルベニア大学のチームが発表した研究では、両者にとって望ましいタイミングで会話が終わるのは全体の2%未満であり、なんと会話の98%は両者が納得したタイミングで終わらないことが判明しました。

Do conversations end when people want them to? | PNAS

https://www.pnas.org/content/118/10/e2011809118

Only 2% of conversations end when we want them to - here's why that's cause for celebration

https://theconversation.com/only-2-of-conversations-end-when-we-want-them-to-heres-why-thats-cause-for-celebration-156231

Conversations rarely end when you want them to, study finds - CNN

https://edition.cnn.com/2021/03/01/health/conversation-ending-study-wellness/index.html

会話による社会的つながりは身体的・精神的幸福感をもたらす重要な手段ですが、一体どのようにして会話が始まり、そして終わるのかについて詳しいことはわかっていません。そこで、ハーバード大学の博士課程に在籍するAdam Mastroianni氏が率いる研究チームは、「実際に行われた会話の長さ」と「人々が本当に望んでいた会話の長さ」の違いを調べるため、2つの調査を行いました。

1つ目の調査では、806人の被験者に「最近あった会話」を思い出してもらい、その時に抱いた感情や会話が終わったタイミングについて回答してもらいました。被験者が思い出した会話のうち80%が恋人や友人、または家族といった親密な関係の人と行ったものでしたが、被験者の66%近くが「ここで会話を終えるべきだ」という時点を過ぎても会話が続いてしまったと回答したとのこと。

また、会話が理想のタイミングを超えて続いてしまった被験者は、まだ会話をしたかったタイミングで会話が終わってしまった被験者よりも、会話を楽しんでいなかったことも判明したと研究チームは述べています。

2つ目の調査では252人の被験者を研究室に招き、「お互いを知らない相手同士」でペアを作って会話をしてもらいました。この実験では、2人は1〜45分の間で会話を続けるように要求され、会話が終わったら被験者にインタビューを実施して、会話中に抱いた感情や会話を終えたタイミングについて聞き取りました。

インタビューの結果は1つ目の調査とほぼ同じであり、被験者の68%以上が「途中で会話を終えたいと思ったタイミングがあった」と回答。理想よりも長く会話が続いてしまった被験者は、その他の被験者と比較して会話をあまり楽しんでいないこともわかりました。

2つの調査結果を分析すると、調査対象となった会話の98%以上で「少なくともどちらか一方が望まないタイミング」で会話が終了しており、両者が望んだタイミングで終了した会話は2%未満だったとのこと。この数字は、話している相手が親密な関係だろうと見知らぬ相手だろうと、ほぼ一貫していたそうです。

会話が望ましいタイミングで終わらない理由について、研究チームは会話の中でお互いが礼儀正しくあろうとして、会話を終える際にお互いが協調してしまうことが理由だと考えています。

多くの人々は会話を無意識的に行っていますが、その流れは人生の中で習得した「会話のパターン」に沿ったものです。人々が従う「会話のパターン」には、「相手がある程度話したら、今度は自分が話す」「本題に切り込む前に予備的な発言を入れる」といったものがあります。後者の場合、最終的に「昼ご飯を食べてきたらどうですか?」と提案するために「もう昼ご飯を食べましたか?」と尋ねる、といった流れが当てはまります。このように、お互いがパターンに沿った会話をしている場合、どうしても会話は長くなりがちだそうです。

Mastroianni氏は、誰かとの会話は高速道路で運転するようなものだと指摘。高速道路では他の車や壁との衝突を避けようとして出口を見過ごさざるを得ない場合があるように、会話も終えるための出口はたくさんあるものの、流れによっては終えるための糸口を見過ごさなければなりません。「適切な時間に終了するのを待つ必要があるため、出口までの距離が非常に長くなることがあるとわかりました」とMastroianni氏は述べました。

また、会話に従事する人々は、相手の表情や視線、ボディランゲージ、せき払いといったさまざまな反応に適応し、そのたびに会話の軌道を微修正していますが、時には相手の反応を見誤ったり見過ごしたりすることがあります。そのため、一方が会話を終わらせようとしたにもかかわらずもう一方が会話を続けたり、一方は会話を続けたいのに相手が会話を終えようとしたりするケースが生じます。

今回の研究結果は、「会話がほとんど理想的に終わらない」という悲惨な結果を浮き彫りにしたようにも見えます。しかし、学術系メディアのThe Conversationは、見方を変えれば98%の人々が「相手が気持ちよく会話を終えられるように配慮した」ともいえると述べ、人々が会話相手を思いやっていることを示唆すると語りました。