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足元の住宅市場は非常に好調です。2020年春の緊急事態宣言で半減した取引も、6月になると急回復。その後は新築・中古・マンション・一戸建てともに堅調といっていいでしょう。1991年のバブル崩壊や2008年のリーマン・ショック時と今回が異なるのは何より「物件価格下落がなかったこと」です。かつて起きた金融システム破綻のような状況下では、販売不振を受けた新築マンションや一戸建ての事業者が手持ちの物件を数千万単位で大幅に価格を下げて投げ売る、といった事態が相次ぎました。しかしそれでも持ちこたえることはできず、多数の事業者が破綻に追い込まれたのです。それに釣られるように中古市場も取引数の減少を伴いながら成約価格も大幅に下落しました。

コロナ渦でも、超低金利の住宅ローンのおかげで順調な住宅市場

コロナ禍を受けて、日本においては他国のようにロックダウンといった厳しい措置は講じられず、緊急事態宣言による比較的緩やかな政策がとられ、その期間も1カ月強と比較的短期間に終わったことで、閉鎖していたモデルルームも中古住宅販売も程なく再開。そこに積極的な財政出動や金融緩和、そして何より住宅ローンが超低金利であることなどが奏功し、大きな歪を生み出すことはなく市場はすっかりもとに戻ったどころか「駅前」「駅近」「大規模」「タワー」といったワードに代表されるマンションなどはむしろ順調です。

2021年2月時点の住宅ローン金利は35年固定で1.03%(ARUHI【フラット35】旧団信)、変動で0.38%(住信SBIネット銀行)、3年固定に至っては0.58%(auじぶん銀行)などと、目を疑うような金利水準。

毎月の住宅ローン支払額が15万円の場合、上述のARUHI【フラット35】の10年前の金利2.55%(借入期間35年・元利均等返済)では約4164万円、2021年2月の1.03%なら借入可能額は約5287万円と、なんと1100万円も多く借りられるのです。この低金利効果が現在の住宅市場にもたらす影響は計り知れないものがあります。さらには住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を使えば、ローン残高の1%が10年間(現在は特例で13年)還元される仕組みもあります。

またコロナ後は都市郊外の新築・中古一戸建ての取引が堅調。これは、主に現在2DKや3DKといった賃貸住宅に住んでいる方が、4LDKの住宅を求めるといった一次取得層の動きが顕著ですが、都市郊外では2000万〜3000万円台で一戸建て購入が可能です。仮に3000万円を変動金利(期間35年)で借りた場合、月々の支払いは約7.6万円。住宅ローン控除を組み合わせれば実質的な支払額は5万円台に低下するため、近隣で賃貸住宅を借りているより買ったほうがお得ということになるケースが多いためです。もちろん購入には初期的な諸経費や毎年の固定資産税、経年による修繕費などがかかるものの、低金利が住宅への向き合い方を大きくシフトさせていることは明らかです。

東京都心ではもう一段の価格上昇もあり得る?

ところでこうした動きは全国的なものではなく、上述した都市部や都市郊外、地方の一部といった限定的なものといえます。国土交通省が発表した2020年の新設住宅着工戸数は、前年比9.9%減の81万5340戸と4年連続の減少。人口減少・世帯数減少といったファンダメンタルズ(基礎的要因)には変化はなく、住宅市場全体のパイは年々小さくなっているのです。この傾向は今後30年程度、2050年くらいまで続く見込みです。

東京都心3区(千代田・中央・港区)・5区(3区に加え目黒・品川区)などの中古マンション成約平米単価が日経平均株価と見事に連動していることはこれまでに何度か指摘してきましたが、3万円を超える現行の株価水準を前提とすると、もう一弾の価格上昇もあり得る情勢です。

(資料:東日本不動産流通機構 / 東京証券取引所)

ただしこのように見事に連動するのは、都心部や都市郊外の利便性が高いところに限定され、その波及効果は駅から離れるごとに、あるいは都心から離れるごとに薄れていきます。都心3区の中古マンション成約平米単価は、民主党から自民党への政権交代以降およそ1.9倍になりましたが、埼玉県は1.4倍程度、神奈川・千葉県は1.3倍程度にとどまります。

今後の趨勢は結局、株価動向と、前述した金利動向次第ということになりますが、日銀の姿勢に大きな変更がない限り、当面の株価は上昇基調。金利は低位安定が継続すると見込まれることから、2021年を通じた住宅市場は全体として取引は減少するものの、都心部や都市部を中心に堅調が見込まれるといったところでしょう。

(資料:東日本不動産流通機構)

壊滅的な打撃は受けなかったものの、このところ各地で地震が頻発しています。また春になると海面温度が上昇し、台風や線状降水帯などによる大雨の可能性もあります。こうした災害リスクも踏まえながら、慎重な住宅選びを行ってください。

※2021年3月10日 読者の方からのご指摘を受け、一部修正いたしました
(長嶋修)