米ニューヨークで、道路を封鎖して債務免除を訴える抗議活動を行うイエローキャブの運転手ら(2021年2月10日撮影)。(c)Angela Weiss / AFP

写真拡大

【AFP=時事】米ニューヨークで昼夜を問わず、あらゆる路上で見かける「イエローキャブ」。黄色いタクシーは、エンパイアステートビル(Empire State Building)やニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)の野球帽と並ぶこの街の象徴だ。しかし、新型コロナウイルスの影響で市内を走っている台数も減り、先行きが案じられている。

 2月のいてつく朝、ラガーディア(La Guardia)空港近くの駐車場では数十台のイエローキャブがターミナルに降り立つ乗客をつかまえようと待ち受けていた。

「前は何百台ものタクシーであふれ、外にも並んでいたもんだ」と、この道30年のジョーイ・オリボ(Joey Olivo)さん(65)がコロナ禍以前を振り返った。

「今じゃわずか50台ぐらいで、客を乗せるまで2時間待ちだ。以前なら20分待つだけだったが」とAFPに語った。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって在宅勤務や学校閉鎖が増え、観光客もいなくなったニューヨークのタクシー利用客は激減した。

「週に1000ドル(約10万7000円)ぐらい稼いでいたが、今は200〜300ドル(約2万1000〜3万2000円)だ」と8割の収入減を嘆くブルックリン(Brooklyn)在住のオリボさん。看護師の妻の収入が多くて助かったと話し、そうでなければ「首に縄をかけていたところだった」と冗談交じりに語った。

■タクシー営業許可証の価格高騰に苦しむ運転手ら

 ニューヨークのタクシー運転手のほとんどが移民1世で、かつては週7日続けて長時間働けば毎月7000ドル(約75万円)は稼げた。

 ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)など配車サービスの人気に押され、収入は大幅に落ち込んでいたが、コロナ禍で「突然がくっと落ちた」と、ミャンマー出身のタクシー運転手、リチャード・チョウ(Richard Chow)さん(62)は言う。

 それでも、多くの同業者ほどは切迫していない。ニューヨークのタクシー営業許可証「メダリオン(medallion)」を2006年に41万ドル(約4400万円)で購入していたからだ。その数年後、銀行の融資や投資にあおられてメダリオン価格は高騰。2009年、チョウさんの弟ケニー・チョウ(Kenny Chow)さんも75万ドル(約8000万円)でメダリオンを取得。2014年には価格は100万ドル(約1億700万円)に達した。

 ところが、ウーバーなどの配車サービスに何千人もの運転手が参入し、メダリオンの価格バブルが崩壊。その結果、メダリオンを高値で掛け買いしていた何千人ものタクシー運転手が負債を抱えるか破産した。

 ケニーさんは2018年に命を絶った。この年に自殺したタクシー運転手は、リムジン(limousine)などの運転手も含め、他に少なくとも7人はいる。

■「ニューヨークの文化の象徴」

 コロナ禍以前に乗客数は50%減っていたが、コロナ禍で状況はさらに悪化し、90%近く落ち込んでいるとニューヨークタクシー労働者同盟(New York Taxi Workers Alliance)の代表、バイラビ・デサイ(Bhairavi Desai)氏はAFPに語った。

「市内で最も人けが消えたのは、運転手の稼ぎ場所であるマンハッタン(Manhattan)の各地区や各空港です」

 同盟によると、現在、認可されたイエローキャブ約1万3000台のうち常時稼働しているのは5000台前後。残りの約7000台は車庫から出ることもない。

 ハイチ出身の運転手ウイリアム・ピエール(William Pierre)さんは、もはや、もうけにならないと言う。一日の売り上げはせいぜい100〜150ドル(約1万700〜1万6000円)。それを、タクシーをリースしている会社と折半する。それでも、「家にじっとしていられない。家族を養うために外に出なければ」と語る。

 タクシー労働者同盟のデサイ氏は、市が運転手の債務を帳消しにしなければ、イエローキャブは「徐々に減っていく」と主張する。2月上旬、同団体の組合員数十人がブルックリン橋(Brooklyn Bridge)を一時的に封鎖して抗議活動を行った。

 ニューヨークのビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長(民主党)は、連邦政府が新型コロナウイルスで経済的に疲弊した同市を支援してくれるのなら、「困窮しているタクシー運転手を援助する」と約束している。

「あの黄色を見ると、ニューヨークに来たんだなと実感するでしょう」とデサイ氏。イエローキャブは「文化の象徴なんです」と話した。「24時間休むことなく、この素晴らしい街の経済と社会と文化を支えているんです」

【翻訳編集】AFPBB News■関連記事
クオモNY州知事、人気に陰り 介護施設の死者数隠ぺい疑惑浮上
コロナからの経済回復、貧困層は10年以上 オックスファム
家賃月17万円、「NY市史上最悪のアパート」?! TikTokで話題に