事故のリスク増大! 冬が終わってもスタッドレスを履き続けてはいけないワケ
ウェットではとくに運動性能の差が広がる
3月になり、そろそろ桜の開花が気になる頃。冬の間履いていたスタッドレスタイヤもそろそろ夏タイヤへの履き替えの季節。
気象庁のホームページから、「過去の気象データ検索」→「都府県・地方を選択」→「霜・雪・結氷の初終日と初冠雪日の平年値を表示」をクリックし、ここで自分の生活圏の「霜・雪・結氷の終日」の平年値を確認して、タイヤ交換の予定を組むといいだろう。
しかし、なかにはズボラな人もいて、春になっても夏タイヤに履き替えず、スタッドレスタイヤを通年使用する人が少なからずいる。これははっきり言ってやめて欲しい。
理由は、ドライのアスファルト路面では、夏タイヤに比べ、走る・止まる・曲がるという運動性能が著しく劣るため。
JAFが行なったユーザーテストを見てみよう。夏タイヤ(5部山)とスタッドレスタイヤ(5部山=プラットホーム出現)の直線ブレーキテスト。
・ドライ 時速60kmからの平均制動距離
夏タイヤ 16.3m スタッドレスタイヤ 18.8m(その差 1.15倍)・ドライ 時速100kmからの平均制動距離
夏タイヤ 44.1m スタッドレスタイヤ 51.1m(その差 1.16倍)・ウエット 時速60kmからの平均制動距離
夏タイヤ 16.7m スタッドレスタイヤ 20.3m(その差 1.26倍)・ウエット 時速100kmからの平均制動距離
夏タイヤ 50.8m スタッドレスタイヤ 72.2m(その差 1.42倍!!!)
これを見ればわかるとおり、スタッドレスタイヤはドライ、ウエットどちらの路面において制動距離が伸びていて、とくにウエットになると大きく差が広がってくる。
スタッドレスタイヤは、アイスバーンや雪道に強いので、「濡れた路面でも滑らない」というイメージがあるかもしれないが、それは寒い冬場の話。
氷点下の氷雪路を想定して設計された柔らかいトレッドゴムは、路面の水膜を押しのける力が弱く、夏タイヤに比べてウエットグリップが低くて苦手だということを知っておいて欲しい。
人身事故の89%は時速40キロ以下の低速域に集中
「OKわかった。だったら雨の日は、速度を抑えて安全運転に気をつけるから、スタッドレスタイヤを通年使用し、履きつぶしてもいいよね」というのは自己中心的な発想だ。
警察庁交通局の「交通事故の発生状況」という資料を見ると、人身事故の61%は時速20キロ以下で発生し、なんと全体の89%が時速40キロ以下の低速域に集中している。つまり速度を抑えているから安全というのは大きな間違い。低速域だとしても、10cmでも手前で止まれるタイヤのほうが安全なのは間違いない。
また、周囲の流れに合わせず、自分だけゆっくり走るのはまわりの迷惑にもなるし、周囲のクルマの平均速度よりも時速8〜10km遅いドライバーは、周囲より時速8〜10km速く走るドライバーよりも、交通事故を起こす可能性が高いというデータもある。
「四季を通してスタッドレスのほうが燃費はよかった」という人もいるようだが、燃費がいいということは、タイヤの転がり抵抗が小さい=グリップ力が低いことを意味していて、やはり犠牲にしているのは安全ということになる。
そして制動性能だけでなく、トラクションもコーナリングフォースも、ウインターシーズン以外では夏タイヤのほうが優れているし、スタッドレスタイヤはブロック剛性が低い分、ハンドルから伝わってくるフィーリングも、ぐにゃぐにゃして手応えが弱い。
法律面では、降雪時に夏タイヤで走るのは違法だが、夏にスタッドレスタイヤで走っても違反にはならない。
しかし、ドライ・ウェットに関わらず、氷雪路以外は明らかに性能の劣るスタッドレスタイヤを雪の季節が終わっても履き続けるのは、事故のリスクを増やすだけ。
できれば、F1のタイヤのように、夏タイヤとスタッドレスタイヤのサイドウオールを色分けし、どちらのタイヤを履いているか、一目瞭然にしてもらえれば一番いいと思うのだが……。
とにかく、自分と周囲の安全のために、雪が降らなくなったらできるだけ早い時期にスタッドレスタイヤから夏タイヤに交換しておこう。
参考
磨耗タイヤの検証(JAFユーザーテスト)
(https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/tire/wear-test)