『2016年の週刊文春』著◎柳澤健 光文社 2300円

写真拡大

ターニングポイントの2016年、文春に何が起きたか

相次ぐスクープ報道で話題を集め、ネット上では「文春砲」なる言葉まで生まれた人気雑誌の『週刊文春』。だが紙の雑誌はいま長期低落の一途にあり、同誌もその例外ではない。これから雑誌ビジネスをどのようにして立て直したらよいか。そのヒントは「雑誌」というメディアの過去の歴史のなかにある――。本書はそうした視点から、同誌の元編集部員であった著者が、自らの体験をも交えつつ古巣の歴史を綴った長編ノンフィクションである。

先ごろ亡くなったばかりの半藤一利氏をはじめ、歴代『週刊文春』編集長など多くの社員が証言者として登場するが、なかでも二人の編集者を著者は本書の「主役」として描く。一人は現在も保守系月刊誌の編集に携わる1942年生まれの花田紀凱、もう一人が「文春オンライン」の立役者である64年生まれの新谷学だ。

新谷が3ヵ月の休養処分を経て『週刊文春』の編集長に復帰した2016年が、この雑誌にとってのターニングポイントだったと著者は言う。休養中に彼がまっさきに助言を仰いだのが花田だった。二人の共通点はタブーを恐れぬ突破力にあり、その根底には「雑誌」というメディアへの心底の愛情がある。花田はホロコースト否定記事を載せたことによる雑誌『マルコポーロ』休刊時の経緯や、その後に手掛けた雑誌での政治的立場をめぐり毀誉褒貶が激しい人物だが、それでも著者は彼を高く評価し、新谷を花田イズムの継承者として位置づける。

本書の読みどころはこうした編集者評価の是非よりも、週刊誌の黄金期を支えた作り手側の情熱のありかを活写した部分にある。二度と戻ることのない過去の逸話から未来に向けて何を摑み取るかは、読者の手に委ねられている。