@AUTOCAR

写真拡大 (全2枚)

ホットハッチ界の911GT3

ホンダ・シビック・タイプRはわれわれがホットハッチ界のリーダー的存在と考えるクルマだ。しかもこれは普通の2020年式タイプRではなく、英国では100台のみの限定車だ。ラジオもエアコンもなく、遮音材の削減や20インチの軽量ホイールによる軽量化が図られている。

標準のシビックは5ドア5シーターのハッチバックだが、ホンダはこれに300ps超の2Lターボを搭載し、機械式LSDと6速MT、アダプティブダンパーや大径ブレーキを奢った。さらに随所に用いられる赤パーツと素晴らしいシートにより、現代において最速かつ最も楽しめるホットハッチの1台を生み出した。

良い点を挙げればキリがないが、乗り心地は引き締まりつつも不快さはなく、ステアリングは驚くほどダイレクトかつ正確で、フィードバックも豊かだ。飛ばしていても流していても素晴らしく、公道でもサーキットでも楽しめる。ホットハッチ界で最もGT系ポルシェに近い存在だ。

しかし今年はシビックの独壇場とは言えないかもしれない。それはもう一台のわたしのお気に入り、トヨタGRヤリスがいるからだ。こちらはシビックよりさらに小さく、前輪駆動でもない。ホットハッチというよりラリー・レプリカと呼ぶのが適切だろうか。

ラリーレプリカのような楽しさ

通常のヤリスには5ドアモデルは設定されていないが、WRCのレギュレーションではロードカーと同様のボディが必要であり、ラリーチームが3ドアを望んだようだ。結果としてさらにワイド化および引き締めが行われただけでなく、超小型車としては珍しくリアにトーションビーム式ではなくダブルウィッシュボーン式サスが与えられている。

さらに駆動系までWRCに準じたものが与えられ、非常に高過給な1.6Lの3気筒ターボは260psを発生、6速MTを介して四輪を駆動する。駆動配分は調整可能で、スポーツでは大半をリアに分配するが、トラックモードではおよそ50:50になっている。

トヨタGRヤリス

まさに古典的なラリーレプリカといえるクルマで、ホモロゲーションモデルではないものの昔のインプレッサ・ターボやランチア・デルタ・インテグラーレを想起させる。まさに暴れ馬で、本当に楽しいクルマだ。シビックはより焦点を絞った仕上がりなのに対し、こちらはそれよりも懐が深い印象を受けた。

ボディコントロールも素晴らしく、多少のロールはあるものの落ち着かせてパワーを与えれば絶大なトラクションとグリップが得られる。ワインディングロードに持ち込めば、ボディの小ささも相まってより走りに集中できるだろう。公道に限って言えば、600psや700psを誇るどんなスーパーカーよりも楽しめる。

シビック・タイプRとGRヤリス、どちらも常に特別感を感じられる素晴らしいクルマだ。この世界にこんなクルマはそうそう存在しない。詳細は動画にてお楽しみいただける。