「京都」の範囲に関し、市民の様々な思惑が交差する京都市街

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 「伏見区出身の人を『京都人』とは言わへんなあ」。え、どういうことですか、デスク? 京都市伏見区は行政区上、どう考えても「京都」ですよ。「いや『京都』ではないなあ」。じゃあ、山科区は? 「それも…、ちゃうんちゃう?」。そうなんですか? 私、滋賀県出身ですし、京都新聞社に入社してまだ日が浅いので分かりません。こうなれば、先輩記者に聞くしかない。京都新聞社のみなさん、「京都」はどこですか?

【写真】御土居や旧平安京の範囲って…?

■文化部長に聞いてみた

 まずは文化の薫り高い「文化部長」に聞いてみよう。花街や歌舞伎などを取材する部署だし、よく分かるかも。

 文化部長(京都市左京区大原出身)「私、中学と高校は京都市中心部に通ってたんです。でも同級生に『大原はチベット』『大原は滋賀』とか言われ、扱いは京都じゃなかったですね」

 なんと。外国扱いなんですね。ていうか、滋賀をへき地の代名詞に使わないでください! 琵琶湖の水、止めますよ!

 「でも、私も中心部に行くとき『京都に行く』って言ってたから、自分でも『京都』じゃないと思ってたかも」

 なるほど、大原は「京都」ではないという意識なんですね。もう少し中心部に近いところの出身の人はいないかな。

■山科は京都なんですか?真ん中ほど偉いんですか?

 滋賀県警担当記者(京都市山科区出身)「山科区は『京都』だと思いますし、声を大にして『京都市民です』と言います」

 「でも『山科区出身です』と言ったときに『山科市な』と冗談めかして言われたこともありますね」

 事件担当デスク(京都市上京区出身)「出身は上京区の端っこの方で、御土居の中やけど『洛外』に近い。せやから、上京区の中心部とか中京区の『田の字地区』とかに引け目がある」

■御土居が運命の分かれ目?

 京都市なのに「京都」ではないという扱いを受け「中心部に引け目がある」という謎。「御土居」が一つのポイントなのかな。でも、御土居って何だろう? 文化財担当の人に教えてもらおう。

 文化財担当記者(愛知県出身)「時代によって違うけど、今、よく言われるのは『京都の中心部』イコール『洛中』かな。豊臣秀吉が作った御土居の内側で、大まかに言うと北が鷹峯、南が東寺、東が寺町、西が西大路の範囲」

■いやいや、かつての平安京の中ですよ

 なるほど、勉強になりました! そうだ、京都検定1級を持つ先輩に聞かないと。

 経済担当デスク(新潟県出身)「かつての平安京の範囲内に住んでいる人が『京都人』かな。大極殿があった平安宮の辺りだとなおいいんじゃないでしょうか。長い歴史がある京都は平安京から始まったと言ってもいいので、その範囲は本当の『京都』。でも、鳥羽離宮があった伏見なども平安京ゆかりのいいところですよ」

 平安京…!? 歴史上の話を日常に引きついでいるなんて「京都」っていったい何なんだろう。

■社内組織「THE KYOTO」の人にも聞いてみた

 そういえば、うちの会社に「グローバルなアート・文化のコミュニティーを生み出すプラットフォーム『THE KYOTO』」というものがあったな。

 THE KYOTO編集長(京都府亀岡市出身)「編集長としては『京都は文化のシンボルワード』と答えています。歴史や伝統を培い、文化を凝縮しているのが『京都』です」

 土地の意識にとらわれない高尚なお答えだなあと思いきや…。

 「取材先で『どこの出身ですか』と尋ねられると『京都府内出身です』と答えます。『京都』とは言いません。明確に差別化されています。亀岡の人たちは京都市内の人たちに対して屈折した思いがあると思う」

 やっぱり「京都」には大きな壁が存在するのでしょうか。え、違う?

 THE KYOTO担当役員(京都市伏見区出身)「『京都』は全世界やと思う。エリアとして捉えていない。『京都』は土地ではなく価値観やと思う」

 ふむふむ。ちょっと難しいですが「京都」は価値観なんですね!

■やっぱり真ん中の人に聞いてみた

 たくさんの人に聞いてみたけど、謎は深まるばかり…。最後は京都市中心部の「田の字地区」付近に住んでいる人に尋ねてみよう。

 滋賀本社代表(京都市中京区在住)「そりゃ、上・中・下(上京区、中京区、下京区)やろ。まあ、哲学の道や京大、清水寺、竜安寺とかがある左京区、東山区、右京区は加えてもいいかもな」

 世界遺産でさえも「真の『京都』」と言えないということでしょうか…。「京都」ってなかなか複雑だなあ。

では、編集局長の見解は…!
 でも、社会正義を掲げて差別を許さないはずの新聞社がこんなことでいいんでしょうか、編集局長!

 編集局長(滋賀県守山市出身)「僕も滋賀県人なので『京都』の中に線引きがあったんやと驚きました。『京都の中心部だけが京都』だの『山科は大津にくれてやる』だの、ばかげているというか。京都新聞社としては『京都』のプライドやブランドは大事にしつつ、京都市中心部だけでなく滋賀も含めた各地の魅力に光を当てて報道していきたいです」

(まいどなニュース/京都新聞)