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アップルが手がけている動画配信サービスApple TV+。同社はその加入ユーザー数を公表していませんが、一説には6割以上が無料試用期間中であり、ほとんどの人が有料で更新するつもりがないとの調査結果もありました

そうした状況のもと、アップルの「最大の戦略的ミス」は何年も前にNetflixを買収しなかったことだ、とするアナリスト分析が伝えられています。

この分析を述べているのは、米証券会社Wedbushのアナリストであるダン・アイブス氏です。アイブス氏はアップル株価の予想につき実績があり、以前もアップルが動画配信サービス市場で遅れを取っており、マーケティングに積極的に取り組む必要があると指摘していました。

ただしアイブス氏は単純に、現在のティム・クックCEOが方針を誤ったと主張しているわけではありません。「過去10年〜12年の間におけるジョブズとクックが犯した最大の戦略的ミスは、数年前にNetflixを買収しなかったこと」として、先代のジョブズCEOに遡って批判しているかっこうです。

しかし、今やNetflixは全世界で加入者数が2億人を突破したと発表しており、大規模な買収を避ける傾向があるアップル(直近で最大の買収は2014年のBeats)が取得する可能性はますます低くなっています。その一方で、Apple TV+とほぼ同時期にサービスを開始したDisney+はすでに9500万人近い加入者を達成しており、アップルと競合他社との差は開くばかりです。

そこでアイブス氏は、アップルが動画ストリーミングのトップに追いつく唯一の方法は、映像制作スタジオを買収することだと主張。Apple TV+の比較的スリム(少なめ)なコンテンツの品ぞろえを大邸宅の中に家具がほとんどないことになぞらえており、MGMやライオンズゲート、A24などを買収してオリジナル番組を充実させる「軍拡競争」に対抗するよう提案しています。

Apple TV+のコンテンツ不足を指摘したのは、アイブス氏だけではありません。Netflix共同創業者で初代CEOのマーク・ランドルフ氏も、アップルは十分なリソースを持っているがゆえ、競合他社に遅れを取っていることは「言い訳はできない」と批判しつつ、Apple TV+が有料加入者を確保するために多額の投資をすべきだと述べていました。

「Netflixが世界の覇者になる前に買収しておけば」とは後知恵の感はありますが、一方で、アップルが映像制作や他社制作コンテンツの獲得に十分な資金を注ぎこんでいない、との指摘は的を射ているようにも思えます。

しかし、クックCEOはApple TV+の番組に関して「テクノロジーに対して否定的なテーマは物議を醸すため却下した」や「下品なものにしないで」と干渉したとの噂もありました。もしもNetflixがアップル傘下に入っていれば、結果的に『全裸監督』のような自由奔放な映像作りは難しい状態になっていたのかもしれません。