「500円玉貯金」のメリットは?

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 世の中には貯金が苦手という人も多いですが、そうした人におすすめとされているのが「500円玉貯金」です。読んで字のごとく、500円玉を地道に貯金していく方法ですが、長い期間にわたって貯金をし続けても思ったほど多額にはならず、効率が悪いことから、「やる意味がないのではないか」という声もあります。「500円玉貯金」は本当に、貯金が苦手な人におすすめなのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの長尾真一さんに聞きました。

ゲーム感覚でお金をためられる

Q.500円玉貯金とは、具体的にどのようなプロセスで貯金をしていくのですか。

長尾さん「500円玉貯金は『財布の中に500円玉があれば、必ず専用の貯金箱に入れる』というルールを決めて貯金していく方法です。とにかく、財布の中に500円玉があれば、使わずに必ず、貯金箱に入れるということが一番大事なポイントで、ゲーム感覚で楽しみながらためることが長続きさせるコツです。

人間の心理は不思議なもので、500円玉貯金を続けていくと、店で買い物をして500円玉のお釣りをもらうと『ラッキー』と思ったり、250円のものを買うときに100円玉3枚ではなく、あえて1000円札で支払って500円玉を受け取ろうとしたりするようになります。すると、どんどん500円玉が増えていくようになり、それがまた楽しくてモチベーションも上がっていくという『貯金スパイラル』になっていきます。

貯金箱は途中で使ってしまわないように、壊さないと取り出せないタイプがいいという人もいれば、たまっていく様子が分かる透明タイプがいいという人もいますが、それは自由です。ちなみに、私も500円玉貯金をしていましたが、貯金箱にお金を使うのがもったいないので、家にあったポーチにためていました。簡単にお金を取り出せてしまいますが、私の場合はたまに取り出して枚数を数えるのも楽しみでした」

Q.なぜ、100円玉や50円玉などではなく、500円玉を貯金するのですか。

長尾さん「100円玉や50円玉が駄目な理由はありませんが、500円玉は一枚の金額が大きいので効率がよく、意外と短い期間で大きな金額になるメリットがあります。500円玉は20枚ためれば1万円になりますが、100円玉で1万円をためるためには100枚ためる必要があり、それだけ、財布から貯金箱に硬貨を移す手間もかかり、枚数を数えるのも大変になります。

もちろん、500円玉より100円玉の方が受け取る機会は多いので、硬貨を貯金箱に入れる作業が手間ではなく、楽しみやモチベーションになるのであれば、100円玉で小まめにためてもいいと思います」

Q.500円玉貯金は貯金が苦手な人におすすめとされていますが、本当でしょうか。メリットとその理由を教えてください。

長尾さん「500円玉貯金はまとまったお金は必要なく、銀行に行って口座を開設する必要もありません。財布の中に500円玉があるときだけためていくので、負担なく始めて、緩く続けられます。また、現金を貯金箱にためるというアナログな方法だからこそ、たまっていく様子が目に見えて、その重みもリアルな体感として感じられます。しばらく続けていくと、それが楽しみになり、気が付くと思った以上に大きな金額がたまっていたということも多いようです。

このように、貯金が苦手な人にとって、『始めやすさ』『続ける楽しみ』があることが500円玉貯金のメリットです」

Q.では、500円玉貯金のデメリットはあるのでしょうか。ある場合、どのようなデメリットですか。

長尾さん「500円玉貯金は貯金箱にためるだけなので、利息は付きません。実質、リスクがない普通預金でも、ごくわずかの利息は付くので、理論上は貯金箱に入れておくだけの500円玉貯金は機会損失といえます(とはいえ、現在は無視してもいいほどの超低金利ですが…)。

また、注意が必要なのが、ためた500円玉を紙幣に両替したり、銀行口座に入金したりするときです。最近は銀行窓口で一定枚数以上の硬貨を両替したり、口座に入金したりすると手数料がかかる場合があります。現金自動預払機(ATM)がすいているときであれば、複数回に分けて、手数料がかからずに入金することもできますが、ためた後のことも考えておく必要があります。

さらに、最近はクレジットカードや電子マネー、二次元バーコード決済といった電子決済が増えているので、現金を使う機会が少なくなっている人も多いと思います。現金を使わなければ、財布に500円玉も増えませんので、電子決済を利用することが多い人はなかなかたまらないかもしれません」

Q.500円玉貯金がどれくらいの金額になれば、あるいは貯金をどれくらいの期間続ければ、銀行の口座に預けた方がよいのでしょうか。めどを教えてください。

長尾さん「最近は、銀行窓口での両替や現金入金は一定枚数を超えると手数料がかかりますので、あまりに枚数が多いと困ることになるかもしれません。大手銀行では、100枚を超える硬貨の現金の入金には手数料がかかる場合があります。

例えば、500円玉が100枚たまったら口座に入金するなど、一定枚数でリセットする仕組みにしておいた方がよいかもしれません。心理的にも遠すぎる目標はモチベーションを維持するのが難しくなりますので、自分がためるペースに合わせて、適度な目標金額を設定するのがよいと思います。

その他にも、貯金をすること自体に目標や楽しみを設定しておくことも大切です。そもそも、500円玉貯金で住宅資金や老後資金を準備するのには現実的ではないので、500円玉貯金は日常のちょっとしたぜいたくのためにためるのが向いているかもしれません。

例えば、洋服が好きな人であれば、冬物の服は1年間ためた500円玉貯金で買うとか、旅行好きな家族であれば、家族旅行は500円玉貯金でためたお金で行くとか、『これには500円玉貯金のお金以外は使わない』というルールを決めると無駄遣いも減りますし、500円玉貯金へのモチベーションにもなると思います」

Q.500円玉貯金を続ければ、確実に貯金が増え、貯金への苦手意識もなくなりますか。

長尾さん「500円玉貯金を続けることができれば、貯金に楽しみを見いだしたり、お金を『ためてから使う』習慣はできたりするかもしれません。貯金が苦手な人は日常の中で小さな無駄遣いをしがちなので、500円玉貯金は貯蓄体質をつくる第一歩になると思います。

ただし、500円玉貯金でためられる金額は限られており、貯金の本丸ともいえる教育資金、住宅資金、老後資金などには、それだけでは足りません。できれば、積立定期預金や個人型確定拠出年金イデコ(iDeCo)などを使って、自動で定期的にためていく仕組みを作ることが大切です。iDeCoなどは税制優遇も受けられるので、より効率的な資産形成が可能です。

貯金をするということは、未来のことを考えて計画的に現在の行動を選択するということです。500円玉貯金でその習慣ができれば、積立定期やiDeCoで本格的な資産形成をすることも難しくなくなると思います。小さなことでも、まずはやってみることが大事です」