新型ヴェゼル「e:HEV PLaY」ボディカラーはサンドカーキ・パール&ブラック(写真:本田技研工業)

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ホンダは2021年2月18日、フルモデルチェンジした新型コンパクトSUV「ヴェゼル」を世界初公開。4⽉に発売予定だと発表した。2013年に初代モデルがデビューしたヴェゼルは、8年ぶりとなる今回のフルモデルチェンジで2代目となる。

満を持してのフルモデルチェンジだが、ワールドプレミア直後から、ネット上ではデザインについて議論が巻き起こり、「CX-ハリアー」なる言葉がTwitterトレンド入りしていたほど、波乱の船出だ。簡単に言えば、マツダのSUV「CXシリーズ」とトヨタ「ハリアー」のデザインを足したようなデザインだという話題で盛り上がったのである。

まずは、モデルチェンジの中身を一つひとつ見ていこう。


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初代ヴェゼルは登場後、2014年から2016年、そして2019年のSUVカテゴリーで新車販売台数ランキング1位となり、都合4度のトップを獲得。

上質感のあるデザインや広々とした室内空間、使い勝手のよさで、幅広いユーザーから支持を得てきた。

オンラインで実施されたワールドプレミアイベントでは、全面刷新されたエクステリアやインテリアに加え、新装備や安全運転⽀援システム、コネクテッド機能などの進化が公開された。

アンプリファイ(=増幅)」がコンセプト

新型ヴェゼルは、⽇常⽣活の質の向上を重視し、アクティブで新しいものにオープンな今の時代を⽣きる⼈たちに向けて、実⽤性だけでなくプラスアルファの体験価値を提供することで、⽣活の楽しさを増幅(AMP UP)させるようなモデルを⽬指したという。

開発のグランドコンセプトは、あなたの生活をアンプリファイ(=増幅)するという意味をもつ「AMP UP YOUR LIFE」。そこに、「信頼/Confidence」、「美しさ/In-Style」、「気軽な愉しさ/Enjoyable」の3つのキーワードが加えられた。

このキーワードが意味するのは、それぞれ「信頼:誰もが⾃信と安⼼感を持って運転できること」、「美しさ:デザインの美しさを追求するだけでなく、使う⼈の所作までも美しく⾒せること」、「気軽な愉しさ:五感に訴えかける爽快な運転体験で、楽しく活⼒に満ちた毎⽇を送れること」である。

この3つの価値を満たしながら、単なる生活の道具にとどまらず、さまざまな体験を提供することで、日常の生活がもっと豊かになるようなクルマとして開発が進められた。

パッケージデザインは、ホンダ独⾃のクルマづくりの基本的な考え⽅である「M・M思想」に基づくものだ。

「M・M」は、「マン・マキシマム/メカ・ミニマム」の略で、⼈間のためのスペースは最⼤に、機械のためのスペースは最⼩限にして、クルマのスペース効率を⾼めようとする、ホンダの伝統的な考え方だ。

この思想に則り、燃料タンクを前席の床下に配置する「センタータンクレイアウト」を先代から踏襲。取り回しのしやすいコンパクトなボディサイズはそのままに、現代的なSUVのプロポーションへと進化させている。


水平基調へとデザインを変更(写真:本田技研工業)

ホンダによると、新たな時代のヴェゼルをゼロから考え直し、SUVの⼒強さとクリーンさに、活⼒に満ちた印象を加えることで、気分を増幅(AMP UP)させるパートナーにふさわしいデザインとして、前述した3つのキーワードをベースに、新しいSUVクーペのかたちを再考したのだという。

具体的には、クーペライクなプロポーションを強調させ、全席で爽快な視界を実現するために「スリーク&ロングキャビン」を採⽤。丸っこい印象だった先代とは打って変わって、⽔平基調のデザインとなっている。

フロントまわりでは、ボディとの⼀体感を⾼めるボディ同⾊のフロントグリルが、サイドビューではヘッドライト上端からリアコンビネーションランプに向かって走る水平のラインが新しい。そのラインは、そのままリアコンビネーションランプを左右につなぐ役割を果たす。ピラー内蔵のリヤドアノブは、先代から継承されるヴェゼルのアイコンだ。

「美しい所作」につなげるインテリア

インテリアは、しっかりと芯の通った「かたまり感」のあるソリッドなフォルムが重視され、SUVらしい⼒強さが表現された⼀⽅で、⾝体に触れる部位には、柔らかな触感と形状のパッドをあしらうことで、「強さと優しさを兼ね備えた空間」とされた。


インストルメントパネルも水平基調となる(写真:本田技研工業)

フレームレスデザインの大型ディスプレイが中央に配置されるのは、現代のクルマのお約束。

さらに、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)の考え⽅に基づき、視線移動の軽減や動線に沿って操作スイッチ類を配置することで、 ドライバーや同乗者の「美しい所作」につなげる⾻格を構築したという。頭上いっぱいに広がるパノラマルーフや、ユニークなダイヤルスイッチを持つエアコンの吹き出し⼝も、新型ヴェゼルの新たな価値として加えられている。

パワートレインは、1.5リッターDOHC 「i-VTEC」にCVTを搭載するガソリンモデルのほか、2モーターハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」を搭載するハイブリッドモデルをラインナップ。

e:HEVは、「リニアで⼼地よい加速感」がうたわれ、NORMAL/SPORT/ECONと3つの⾛⾏モードを設定。さらに、Dレンジ、Bレンジ、減速セレクターにより、アクセルオフ時の異なる減速度合いを選択できる。

4WDモデルは、「リアルタイム AWD」を搭載。e:HEVにも4WDモデルは設定される。モータードライブの特徴である素早くリニアなトルク特性を活かして、「安定感ある愉しい⾛りを実現する」という。

グレードは、2モーターハイブリッドシステムの「e:HEV」を主軸とした「e:HEV X(2WD/4WD)」、「e:HEV Z(2WD/4WD)」、「e:HEV PLaY(2WD)」の3タイプを設定。


来たるべき電動化の時代に向けハイブリッドを主力とする(写真:本田技研工業)

標準グレードとなるXとZでは、インテリアにオーセンティックで⻑く使える上質感にこだわったというファブリックにシルバー加飾がコーディネートされる。

また、ハイブリッドモデルに新たに設定されたPLaYグレードは、冒険⼼と遊び⼼にあふれたアクティブに⾃分らしさを表現できるコーディネートとしており、2トーンのエクステリアカラーやトリコロールの加飾で個性を演出する。

なお、ガソリンモデルとして「G(2WD/4WD)」も用意されているが、「先代ヴェゼルから進化したe:HEVを体感してほしい」との意向から、1グレードのみの設定となっている。価格重視のユーザーやレンタカーなどのフリートユーザーが主なターゲットになるのだろう。

ホンダ量販車初の機能も多数搭載

ホンダの主力モデルのひとつであるだけに、初採用の機能も多い。

ハンズフリーアクセスパワーテールゲート(予約クローズ機能付き)や、パノラマルーフ(Low-E ガラス採⽤)、新設計のエアコン吹き出し⼝「そよ⾵アウトレット」、静電タッチ式LEDルームランプのほか、ヒルディセントコントロールもホンダ車として初採用。独⾃開発のプレミアムオーディオも設定される。

⾞載通信モジュール「Honda CONNECT(ホンダコネクト)」は、全車に標準装備。より安⼼・快適なカーライフが楽しめるというコネクテッドサービス「Honda Total Care プレミアム(ホンダ トータルケア プレミアム)」が利用できる。通信モジュールを備えたことで、ナビゲーションシステムの「⾃動地図更新サービス」も可能となった。

そのほかにも、スマートフォンがキーの代わりになる「Hondaデジタルキー」や、⾞内でさまざまなアプリを利用できる「Hondaアプリセンター」、⾞内でデータ通信容量を購⼊することでインターネット接続を楽しめる「⾞内Wi-Fi」など、ホンダの量販⾞として初となる機能が多数搭載される。

安全運転⽀援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」は、もちろん全車に標準装備。


運転支援システムの充実もポイントの1つとなる(写真:本田技研工業)

フロントワイドビューカメラと⾼速画像処理チップが採⽤されたことで機能が進化・充実した。

たとえば、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)は、渋滞追従機能付きへと進化。衝突軽減ブレーキ(CMBS)や、路外逸脱抑制機能、標識認識機能、⾞線維持⽀援システム(LKAS)などの各機能もアップデートされている。

このほか、後⽅誤発進抑制機能や近距離衝突軽減ブレーキ、オートハイビームなど、3 つの機能を新たに追加。マルチビューカメラシステムやブラインドスポットインフォメーションも新たに採用された。

SUVナンバーワン奪還なるか?

今回のワールドプレミアでは、正確なボディサイズや価格などの詳細は公開されなかったが、「サイズは従来型とほぼ同等」とのことで、トヨタ「ヤリスクロス」やマツダ「CX-3」、日産「キックス」あたりがライバルとなる。

中でも1番の強敵となるのが、ヤリスクロスだろう。ヤリスクロスは、発売から1か月で3万9000台を超える受注を受けたと発表されている。

ただし、ボディサイズは初代ヴェゼルが全長4330mm×全幅1770mm×全高1605mmなのに対し、ヤリスクロスは全長4180 mm×全幅1765 mm×全高1590 mmと全体的に少し小ぶりだ。

新型ヴェゼルが先代と同等のサイズだとすれば、ヤリスクロスより一回り大きなボディは、ファミリー層などに訴えかけるアドバンテージとなるはず。

そうなると、この戦いのカギを握るのは、デザインとなるのかもしれない。「CX-ハリアー」と揶揄されているデザインの印象が、実車を見てどう変わるのか。4月の発売を待ちたい。