出社していない働き方であってもちゃんと時間外手当は払われなければなりません(写真:Ushico/PIXTA)

長時間労働やハラスメント、雇い止めなど、働く人たちが直面しているさまざまな問題。これらを解決するために役に立つのが、法律だ。

『無理筋な業務命令に悩む人はこの常識を知ろう』(2021年2月2日配信)、『有休取得をためらう人は労働法をわかってない』(2月9日配信)に続いて、職場におけるトラブルを解決する糸口を法律の観点からまとめた『働く人を守る! 職場六法』の一部を抜粋、再構成してお届けします。

テレワークでも時間外手当は払われる

Q)会社からテレワークを命じられ、1日10時間働いても「事業場(会社)外みなしだから」と8時間分の賃金しか支払われません。

A)会社には10時間分の賃金を求めましょう。「みなし労働時間制」は、「事業場(会社)外での労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」となっています(注1)。「労働時間を算定し難いとき」という条件は、厳格に解されています。

しかし、情報通信技術が発達した現代では、携帯電話やインターネットを通して、会社の外にいる働く人の勤務状態を把握することは容易になっています。

テレワークをするときでも、情報通信機器が常に通信可能な状態であり、会社が業務内容、作業時期や方法まで具体的に指示している場合には「労働時間を算定し難いとき」とはいえません。また、テレワークにも労働基準法は適用されます。会社は労働時間を適正に把握する義務があり、適切に労働時間を管理しなければなりません(注2)。

(注1)労働基準法第38条の2
(注2)「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」平成29年1月20日策定、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」平成30年2月22日策定

「テレワーク期間の残業代はきちんと払ってもらえますか?」という質問に答えると、会社に出勤しているときと同じように、時間外労働分の賃金は請求することができます。


(イラスト:仲島 綾乃)

自宅勤務(テレワーク)では、職場に出勤しているときと同様に、労働基準法が適用されます。原則的には1日8時間以内、週に40時間以内の労働時間、それを超えて業務を求めるのなら、会社は働く人と36協定を締結し、時間外手当を支払わなければ、労働基準法違反になります。会社が労働時間を正確に把握できず「みなし労働時間制」が適用されている場合も同様です。

◎あなたを守ってくれる法律 

労働基準法第38条1項 時間計算 
労働時間は、仕事をする場所が異なる場合であっても通算して労働時間の定めに従って計算するようにします。

労働基準法第38条の2 時間計算 
働く人が会社の外で仕事をしたために労働時間を算定しにくい場合は、所定の労働時間分勤務したものとみなします。

★ポイント

「みなし労働時間制」とは?

働く人が会社の具体的な指揮監督のもとになく、労働時間を正確に把握できない場合に、所定の労働時間勤務したとみなして規定の賃金を支払うのが「みなし労働時間制」です。

会社の具体的な指揮監督のもとにない状態とは、モバイルなど通信機器を通じた会社からの指示に即応する義務のない状態です。メールや電話に即応しなくてもよく、通信機器により常に勤務実態を監視されていない場合には、「みなし労働時間制」と認定されます。

「テレワーク」で時間外手当を請求するには?

テレワークでは、日報などによって働く人が就業時間を報告し、会社はそれに基づいて労働状況を適切に把握することになります。とはいえ、実働時間を正確に把握することが難しいため「みなし労働時間制」を採用する会社が多いようです。

「みなし労働時間制」には大きく分けて2つあります。1つ目は、労働基準法に定められた会社の外での労働や、裁量労働の場合で「法定みなし制」と呼ばれます。2つ目は営業職や年棒制社員が利用する「法定外みなし制」です。

管理職以外の平社員が、法定時間外労働や法定休日労働をする場合には、「36協定」に従って一定の基準外賃金に相当する(法定外)「みなし手当」が支払われます。ただし、残業や休日出勤にあたる分を働いたという証明が必要になります。

テレワークをすることで、働く人が正しく評価されないまま不当な扱いを受けないよう、会社は事前に業務内容、賃金制度などについて働く人と話し合い、通常の賃金制度と異なる場合には、就業規則を作成・変更して届け出なければならないと定められています(労働基準法第89条2号)。まずは、会社に就業規則等を確認し、改善のために話し合う必要があります。

民法改正によって変わる残業代請求権の消滅時効期間

◎弁護士からひと言

新しい働き方、雇用形態の変化など、時代の流れに合わせて労働関連の法律も改正されています。ここでは、賃金請求権の消滅時効期間について紹介します。


賃金請求権の消滅時効期間について、労働基準法ではこれまで過去2年としてきましたが、2020年3月の法改正で、「消滅時効期間は5年とするが、当分の間は経過措置として3年とする」という内容に改正されました。働く人は今後、過去3年分の残業代を請求できるようになります。ただし、消滅時効期間が3年間になるのは、改正法の施行後、つまり2020年4月1日以降に発生した賃金請求権ですので、それ以前に発生した賃金請求権の消滅時効期間は、従前どおり2年間となります。

ちなみに、残業代の裁判では未払残業代と同額の付加金の支払いを裁判所が使用者に命じることがありますが(労働基準法第114条)、この付加金を請求できる期間も、従前の2年間から3年間に伸長されています。なお、退職金だけは、従来通り請求権の消滅時効期間が5年間とされています。