西武バスが、通常の手動運転の路線バスと同じルートと営業形態で、自動運転の大型バスを走らせます。実証実験の場として選ばれた埼玉県飯能市のルートは、自動運転をテストするのに適した条件が揃っていました。

自動運転レベルは「部分自動化」の2

 西武バスが2021年2月23日(火・祝)から、路線バス用の大型車両で自動運転の実証実験を始めます。営業運行している大型バス車両と同じ形態で運行する大型バス車両による自動運転は、国内では初の試みとのこと。実験の舞台は埼玉県西部の飯能市ですが、なぜこの街が選ばれたのでしょうか。


自動運転に必要な機器を取り付けた西武バスの新塗装車「s-tory」(画像:西武バス)。

 今回の自動運転は、西武バスと群馬大学の共同研究の一環であり、日本モビリティ、あいおいニッセイ同和損害保険、MS&ADインターリスク総研も参画しています。

 西武バスは埼玉県西部や東京都多摩地域を主な営業エリアとし、456系統の路線バスを展開しています。そのなかで自動運転バスが走る系統に選ばれたのが、飯能駅南口〜美杉台ニュータウン間の約2.5kmを結ぶ「飯20」です。この区間は美杉台ニュータウンより先へ足をのばす「飯21」「飯22」と合わせて、昼間は1時間あたり片道5本(土曜4本、休日3本)が走っています。

 自動運転バスは、通常のバスの合間を縫って、GNSS(全地球航法衛星システム)と、車両に搭載したセンサーなどで周囲を検知しながら既定のルートを走ります。自動運転の講習を受けた運転士が運転席に座りますが、加減速や操舵は自動です。交差点の信号は「青」以外はすべて赤信号として認識し止まります。一時停止箇所や横断歩道などでも必ず一時停止し、運転士による許可で自動運転を再開します。自動運転レベルは「部分自動化」の2です。

自動運転の場に飯能の住宅街路線を選んだ理由

 自動運転の実証実験の場に「飯20」系統を選んだ理由について西武バスは、沿道に(電波障害の原因などになり得る)高い建物がないこと、営業所が近くにあり車両の取り回しや緊急時対応が容易であること、行政や警察、地元自治会の理解や協力があったことなどを挙げています。

 また、ルートが全区間にわたり道路が2車線(片側1車線)であることも条件だったといいます。同社は保有するバス車両の8割近くが大型であることから、今回の実験車両も将来を見据えて大型を選んだとのことですが、都内の系統を中心に道幅の狭い区間も多く、自動運転にはまだハードルが高い一方で、「飯20」は大型バス車両の自動運転走行に適したルートとして判断したそうです。

 バス運行時は遠隔で監視されますが、前述の通り運転士も運転席に座り、運賃収受やドア開閉操作などを行います。また、不測の事態が起きた際も、運転士が運転操作を行います。飯能駅南口〜美杉台ニュータウン間は、従来の手動運転だと8分で走りますが、自動運転だと20〜30km/hの低速走行で全停留所に停車しながら30分ほどかけて走ります。

 運賃は通常の手動運転と同じく180円(IC178円)です。2月23日(火・祝)、25日(木)、28日(日)、3月1日(月)、3日(水)、5日(金)、7日(日)の計7日間に、1日あたり4往復が走ります。運行は安全面を考慮し、全員座れる座席定員制で実施。乗車は整理券を持っている人が優先です。整理券はウェブサイトで申し込めます。なお、整理券は無料ですが、乗車時は運賃が必要です。

 西武バスは今後の展開として、自動運転レベルはシステムがすべて行う「条件付運転自動化」の3や、最終的には「高度運転自動化」の4を目指すとしており、あわせて路線バスのオペレーションも自動化を検討していくとしています。