エントリーグレードを安価にするために安全装備レスも存在する

 ここ何年かで急速に進化し、装着車が激増、というか、ほぼ全車に装着が完了している、自動ブレーキとも呼ばれるAEB=衝突被害軽減ブレーキだ。ご存じのように、ついに今年の2021年11月から、新型車に装着が義務付けられ、これからはシートベルト、前席エアバッグのように、新車の必須装備となる。

 では、もう間もなく、新型車に義務付けられるAEBは、このタイミングだから現時点ですべての国産の新車に付いているはず……と思ってしまいそうだが、じつはそうでもない。ほとんどすべてのクルマに付いているものの、一方、価格重視でレスとなっているクルマもあったりするのである。一般的なドライバーはもちろん、あまりクルマの機能に詳しくない、運転技量に乏しい運転初心者や、判断能力や筋力が落ちた高齢ドライバーこそ、そんなクルマを選んではいけない。新春のTV番組「格付けチェック」に出てくる、選んでは「絶対にアカン」クルマ(グレード)とも言えるのだ。

1)トヨタ・ライズ Xグレード

 たとえば、トヨタ・ライズのXグレードがそうで、兄弟車のダイハツ・ロッキーには全グレードにAEBを含むスマートアシストが付いているにもかかわらず、付いていない。もちろん、トヨタとしても売りたいグレードではなく、あくまでスタート価格表示のための大人の事情的グレードと言って良く、価格が安いからと言って、手を出すべきでないと言っていい。

 もっとも、商談の時点で、セールスマンから適切なアドバイス(絶対的にX”S”グレード以上を薦めるはず)が得られるだろうから、間違って買ってしまうような心配はいらないかも知れないが……。

2)スズキのスズキ・セーフティサポート非装着グレード

 また、スズキの軽自動車は、基本的にAEBを含むスズキ・セーフティサポートが付いているのだが、どういうわけか、今もそれのレスグレードが存在する。

 たとえば、最新のソリオのHYBRID MZグレード、ガソリンのGグレードがそうで「スズキ・セーフティサポート非装着車」として価格表に載っている。価格差は税込みで8万2500円だが、そこをケチってはいけない。

安全性が高まっている軽自動車や商用車にも非搭載車がある

3)ダイハツのスマアシIII非装着グレード

 同様に、ダイハツの軽自動車でも、たとえばムーヴのX、Lグレードのように、AEBが付いていないグレードもあるので注意したい(比較的新しいタントなどにも非装着グレードあり)。うっかりして、価格の安さに飛びついてはいけないということだ。

4)軽商用車の一部AEB非装着グレード

 とはいえ、最新の軽自動車では、AEBどころか、多彩な先進運転支援機能がてんこ盛りである。ただし、メーカーを問わず、軽商用車となると、下位グレードにAEBなどが省かれているグレードがあるので要注意。高齢の両親が、たとえば畑仕事に使うための軽トラを選ぶような場合でも、そこはしっかりと押さえておきたいところ。けっこうオシャレで一般ユーザーの遊びグルマとしても重宝されている軽商用車のオープンデッキ版、ダイハツ・ハイゼット デッキバンもそうである。

 また、先進運転支援機能のなかには、高齢者や初心者に有用な、踏み間違い抑制機能がある。これはひとくくりにできず、抑制だけ(エンジンの出力を落とす)のものと、ブレーキ機能まで付くものがあり、より安心なのは後者。このあたりは、その項目に、「ブレーキ制御」とあるかを確認していただきたい。

5)AEB非装着の中古車

 もちろん、中古車を購入する場合は、さらに注意が必要。充実した先進運転支援機能までは望めなくても、最低限、AEBが付いているクルマをしっかり選ぶようにしたい。新車においても、AEBを含む先進運転支援機能が付いているクルマと、そうでないクルマとの価格差は(一例/ライズのX”S”とXの価格差6万6000円)、たった1回のAEBなしによって発生したであろう事故で被った損害、被害額により、大きく上まわってしまう可能性がある。というより本人と他人(他車)の命の問題でもある。

 ちなみに、ホンダの新型フィットでは、大きく進化したホンダ・センシングの機能として単眼カメラ+フロント4個、リヤ4個の合計8個のソナーを備え、なんとコンビニのガラスをも検知可能だというから「コンビニに高齢者のクルマが突っ込んだ」というような事故も、低減できる可能性が高くなりそうだ。