トヨタの未来都市「ウーブンシティ」ついに2月着工! 巨大自動車会社の大きな転換期に

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2021年2月23日に未来都市「ウーブンシティ」の鍬入れ式を実施へ

 ウーブン・プラネット・グループが2021年1月29日、オンラインでオープニングイベント「THE GENESIS」を開き、さまざまな事業の取り組みを公表しました。

 この会社は、これまでのTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート-アドバンスド・デベロップメント)が持ち株会社体制に移行したものです。トヨタの未来戦略が、大きく動き出した形になりますが、今後はどのような戦略を描いているのでしょうか。

未来都市「ウーブンシティ」の想像図

【画像】豊田章男社長の息子、どんな人? 発言とあわせて見る(15枚)

 発表によると、ウーブン・プラネット・グループのなかで長期的な事業戦略を立てるのは、ウーブン・プラネット・ホールディングス。

 その傘下に、ソフトウェア開発を中心に実際の技術開発をおこなうウーブン・アルファ、自動運転を主体とした技術開発をおこなうウーブン・コア、そしてベンチャー企業への投資などをおこなうウーブン・キャピタルという構成です。

 ウーブンという言葉には「織り込む」という意味があり、人、モノ、技術、文化などがまるで織物のように合わさる様子を指します。

 ウーブン・プラネット・グループを総指揮するのは、トヨタ本社取締役で、次期トヨタ社長の最有力候補との噂もある、アメリカ人のジェームス・カフナー氏です。

 これまでも、彼が率いてきたTRI-ADでは、ソフトウェア、自動運転、投資という分野がありましたが、「例えば(グーグルの持ち株会社)アルファベットなど、IT大手では、専門分野を分社化することで開発のスピード感や機敏性を持たせています。

(ウーブン・プラネットでも)ウーブン・アルファ、ウーブン・コア、ウーブン・キャピタルがシナジー効果を生み出します」と、ジェームス・カフナー氏は新体制の移行に期待を込めました。

 ウーブンと聞くと、トヨタが造るリアルな未来都市「ウーブンシティ」のことを思い出すかもしれません。

 2020年1月に、米ラスベガスで開催された家電・ITの世界最大級見本市「CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)」で豊田章男社長が世界初公開した、トヨタが造るリアルな近未来型実験都市のことです。

 場所は、富士山麓の静岡県裾野市で、2020年まで「ジャパンタクシー」などを製造していたトヨタ自動車東日本の東富士工場が閉鎖された跡地に建設されます。鍬入れ式を、2021年2月23日(語呂合わせで、フ・ジ・サン)におこなう予定です。

 ウーブンシティには、150m四方の区間に整備され、車両や歩行者など地上交通と地下交通が効率良く運用されます。

 そこでは、自動運転サービスカーの「e-Palette」や、トヨタがチームメイトテクノロジーと呼ぶ高度運転支援技術を備えた乗用車、また電動くるまいすや立ち乗り式移動体の歩行領域EVなどが、ウーブンシティ内とその周辺の移動手段として活躍します。

 そこで暮らす住民は、エンジニア、高齢者、また発明家などさまざまなジャンルから募集される予定です。

トヨタの歴史上、ウーブン・プラット・グループの発足は大きな転換期となる

 このウーブンシティ事業を取りまとめているのが、ウーブン・プラネット・ホールディングスのシニアバイスプレジデント、豊田大輔氏です。名前から分かるように、豊田章男社長のご子息です。

 大輔氏は2020年1月の東京オートサロンで、豊田社長と共にモータースポーツ関連でのトークショーに登壇したことがありますが、これまではメディアに登場することはほとんどありませんでした。

 今回のウーブン・プラネット・グループでの発表では「幸せがあふれる街を、思いを共にする仲間と一緒に作っていこうと思います」とやさしく語りかけました。

 グループ全体としての目指す方向である「Mobility to LOVE, Safety to LOVE」のなかで、人中心の町の在り方、そこに自動車メーカーが新しい価値をどのように創造していくのかを、関係者がひとりひとりの私事として捉え、ウーブンシティとして見える化といいます。

ウーブンシティ事業を取りまとめている豊田章男社長の息子の豊田大輔氏

 また、今回の発表で注目されたのが、ソフトウェア開発のプラットフォーム「アリーン」です。

 アリーンは、アップルのiOSや、グーグルのアンドロイドのようなオペレーティングシステムとしての要素や、ソフトウェア開発でのツール機能を持っており、自動車のソフトウェア開発で新しいエコシステムを築くものだといいます。早期の実用化に向けて現在開発中です。

 この分野には、競合企業が多くいますが、アリーンはトヨタ向けのみならず、柔軟な活用を提供するもので、自動車産業界だけでなくIT産業を含めて幅広く普及させることが、ウーブン・プラネット・グループの戦略です。

 当然、アリーンはウーブンシティのような、いわゆるスマートシティでの都市OS(オペレーティングシステム)とも密接に関係することになるでしょう。

 今回の発表と発表後の質疑応答を通じて、筆者(桃田健史)が改めて強く感じたのは、これからの自動車メーカーは、ソフトウェアを総括的に管理するシステムの開発を事業全体のなかでどう捉えるかで、自動車メーカーとして勝ち組と負け組が明確に分かれてしまうことです。

 自動車メーカーとしては、ハードウェア製造者という現実を踏まえたうえで、IT大手の米GAFAM(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト)や、中国BAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)などと、真っ向勝負ではなく、友好関係を維持しながら、自動車メーカーとしての生き残るための緻密な戦略が必要だと感じます。

 その意味で、ウーブン・プラット・グループの発足は、トヨタの歴史上、大きな転換期を意味するのではないでしょうか。