ヘンリー王子が訴えていたのはイギリスの新聞社「アソシエイテッド・ニュースペーパーズ(AN)」。王子はこの新聞社のタブロイド紙「メール・オン・サンデー」とニュースサイト「メールオンライン」が2020年3月に掲載した記事は虚偽だと主張していた。書かれていたのは王子と海兵隊の関係。昨年4月に王室を離脱するのに伴い、王子は3月をもって軍隊での職も辞任した。同紙は「軍の最高司令官たちはヘンリー王子イギリス海兵隊に背を向けたと非難している」と報道、ウェブサイトでも同様の記事を掲載した。

今週初めにこの訴訟の審理が行われた。同紙と同サイトはこの報道が虚偽だったことを認めて王子に謝罪、王子もこれを受け入れた。ANは王子に賠償金を支払うことも明らかになっている。金額は明らかにされていないが報道によると「多額」。王子はこれを自身が立ち上げた負傷した兵士のためのスペシャルオリンピックインヴィクタスの基金に寄付する。王子の弁護士は謝罪を受け入れたことを発表すると同時に「軍隊のコミュニティに対する王子の忠誠心に疑うべきところはない」とコメント、王子と軍隊の関係は報じられているような険悪なものではないとアピールした。

ちなみにこの寄付を巡っても王子とANの間に一悶着あったよう。ANはこの審理よりも前にこの記事が虚偽だったことを認め、同紙に訂正文を発表すると王子と取り決めていた。ANは謝罪の一貫としてチャリティ組織に寄付をすると王子に約束、昨年12月に紙面に掲載した訂正文にもそう書いていた。でも王子の弁護士は「訂正文の中で寄付をすると言っていたがANは実行していない。寄付は王子が法的な解決から得た賠償金を使って個人的にするものだ」。「同紙はまたしても読者を誤解させた」と怒りを露わにしている。

軍隊で10年以上のキャリアを築いてきたヘンリー王子。王室を離脱する中で一番打撃を受けたのは軍の名誉職を辞めなくてはならなかったことだという証言も浮上していた。今回の謝罪で軍との関係に関する誤解も解け、きっとひと安心しているはず。