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マクラーレンの3座ハイパーGT

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)photo:Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

マクラーレンのラインナップで頂点に位置するのがアルティメット・シリーズ。

【画像】じっくり見たい、マクラーレン・スピードテール【隅々まで撮影】 全157枚

これまで、P1、P1 GTR、セナ、エルバが送り出されているが、シリーズ内で新たなカテゴリーとなるハイパーGTレンジに投入されたのが「スピードテール」である。


RMサザビーズのアリゾナ・オーションに出品された、2020年製のスピードテール(シリアルナンバー036)。    Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

ミドに積まれるV8 3994ccエンジンは、ツイン・ターボチャージャーで武装し757psを発揮。そこに電動モーターの313psが上乗せされ、マクラーレンのロードカー最大となる1070psの最高出力を叩き出す。

パフォーマンスは圧倒的で、最高速度はマクラーレンF1が記録した391km/hを上回る403km/hに達する。

生産台数はF1にちなんで限定106台とされ、価格は175万ポンド(約2億5000万円)とアナウンスされた。しかし公式発表前に完売となってしまった幻のモデルでもある。

RMサザビーズ・オークションに

そんなスピードテールが、アメリカで開かれたRMサザビーズのアリゾナ・オーションに姿を現した。

新車として買えなかった購入希望者が一定数存在し、コンディションも“新車”といえることから大きな注目を集めた。


往年のマクラーレンF1にならい、セントラル・レイアウトの運転席を与えられた。    Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

シリアルナンバー036が与えられた2020年製のスピードテールは、走行30マイル(約48km)。2020年秋にマクラーレン・フィラデルフィアからファーストオーナーにデリバリーされたもの。

エクステリア・カラーはMSOに用意されるヘリテージ・アトランティック・ブルーにストライプを追加。

軽量アロイホイール、ブラックのキャリパー、ステルス・チタニウム仕上げのディフューザーなどで、オプション額は17万ドル(約1768万円)に及ぶ。

どう評価する? 注目の落札額

RMサザビーズにとって2021年の幕開けとなるアリゾナ・オーションは、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、限られたビッダーのみが会場入りすることができた。

あわせて今やスタンダードとなったオンライン入札を併用して行われた。


3シーターとなるマクラーレン・スピードテールの内装。ドアは上方に開くディへドラル・タイプだ。    Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

主催者によるスピードテールの予想落札額は、350〜450万ドル(約3億6400〜4億6800万円)。

オークションを終えてみれば最終的に327万7500ドル(約3億4086万円)で決着。新たなオーナーのガレージに収まることになった。

予想落札額には及ばなかったが、コロナ禍の不透明な経済状況を考えれば上出来の額といえよう。

ここでオークションのシビアな真の姿について説明しておこう。

知っておきたいオークションの真実

高額で落札されれば売り手はほとんどの額を手にできると思えるが、世の中はそんなに甘くないのである。

スピードテールの327万7500ドルという落札額だが、ここには10〜12%の重乗した落札手数料が含まれている。会場でのハンマープライス(落札額)は297万5000ドルなのである。


落札額だけを見ると売主は大儲けしたように思えるが、実際には購入額と大差ないうえ、出品したことで失うものも。    Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

出品されたスピードテールのオーナーには、ハンマープライスから出品手数料の10%が引かれるため、手許に入るのは267万7500ドル(約2億7846万円)に過ぎない。

発表された落札額だけを見ると売主は大儲けしたように思えるが、実際には購入額と大差なかったのである。

それよりも納車直後に転売したことが公になり、ディーラーやマクラーレン社からの信頼を失い、ブラックリスト入りしたはずだ。これで次のアルティメット・モデルを売ってもらえないデメリットを考えると、今回の出品は正解ではなかったといえる。

結局のところ、売り手と落札者から手数料を得るオークションハウスが、しっかりと稼いでいたのである。