セブン-イレブン飯田橋升本ビル店に設置されているテレキューブ(テレキューブサービス株式会社提供)

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コンビニ店内に増える「ハコ」

 昨年末、セブン-イレブンの店内の一角に巨大な“ボックス”が出現した(写真)。ハコの正体は、テレワークを行うための個室である。このように、近年、従来なかったような「スペースの利用」を、コンビニの店内で見かけないだろうか。流通アナリストの渡辺広明氏が、コンビニのスペース事情を解説する。

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“コンビニを使わない客”向けの戦術で大盛況 【多様化するコンビニ戦術】

 12月30日よりセブンの飯田橋升本ビル店で、個室型スマートワークブース「テレキューブ」設置の実証実験が始まりました。運営元のテレキューブサービス株式会社は2019年から、駅や商業施設でテレキューブを展開してきましたが、コンビニに進出するのは初の試みだそうです。利用者は事前に会員登録したうえで、使用時間に応じた料金を支払います(個人は250円/15分、ほか法人向サービスあり)。

セブン-イレブン飯田橋升本ビル店に設置されているテレキューブ(テレキューブサービス株式会社提供)

 コロナによってテレワークで働く人は増えましたが、作業場所の確保に苦労している方は多いのではないでしょうか。自宅でできればいいのですが、私のように自分の部屋が無い場合は、家族がいるとそうもいきません。電話やWEB会議をする際に、カフェやファミレスでは周りの方に迷惑をかけてしまうし、かといって公園のベンチでは雨に降られたり……。だから、コンビニでこうしたプライベート空間を確保できるというのは、頼もしいです。

 最近、コンビニの店内に、こうした見慣れぬ「箱」を見かける機会が増えました。例えばセブンで増えているのはPackcity Japan社が運営するPUDOステーションというロッカーです。これは、宅配便の送り先にしておけば、荷物をロッカーで受け取れるというサービスで、受け取りだけでなくメルカリやヤフオクなどの一部のサービスでは、発送も行えます。

 ファミリーマートでは「Amazon Hubロッカー」も見かけます。こちらはAmazonの受取先に指定することで、やはりロッカーで荷物が受け取れるというもの。どちらも「コンビニ受け取り」にして、レジで受け取ればいいのでは……と思う方もいるかもしれませんが、店からすれば、荷物の受け渡し作業は結構な手間なんです。利用者としても、受け取りをお願いしたあとにレジが混んでしまい、気まずい思いをしたという方も少なくないのでは。ロッカーであれば、こうした問題を解消できるわけです。

 このほかローソンでは、「クックパッドマート」の生鮮食品を受け取れる「マートステーション」の設置を始めました。ローソンではほかにも「SMARI(スマリ)」のボックスを見かけます。これはネットショッピングでの返品やレンタルの返却などを行えるというサービスです。

窓際に「ギフト券」が置かれているワケ

 なぜ最近、こうしたボックスの設置が増えてきたのか。近年のコンビニ店内のスペースをめぐる状況から、考察してみましょう。

 まず、近年の大きなトピックスとして「雑誌ラック」の縮小があります。一昨年、大手コンビニ各社が「成人雑誌」の取り扱いをやめたことは大きなニュースになりました。最近は店頭で本や雑誌が売れません。コンビニ店内の雑誌ラックの規模は、縮小傾向にあります。

 ところが、雑誌ラックの跡地というのはなかなか活用が難しい。なぜなら従来の店内レイアウトでは、ラックは「窓側」に置かれているからです。これはもともと、立ち読みをしてもらうことによって、窓の外から見たときの“店内の活気”を演出する効果を狙ってのものでした。しかし、窓際ということは、外から陽があたります。食品はもちろん置けませんし、日用品なども、パッケージが焼けてしまう恐れがあるわけです。

 そこで置かれるようになったのが、Amazonギフト券やiTunesカードなどのギフトカード類でした。ギフトカードであれば仮に陽が当たったとしても、商品の性質上、問題はありません。ちなみに大きい額のギフト券を窓際、つまり出入り口に置くと万引きのリスクがあると思われるかもしれませんが、ギフト券はレジを介さないと使用できない仕組みになっているのです。

 ギフトカードと共に“コンビニの窓際”に取って代わった存在が、イートインスペースです。こちらも陽の心配はないですし、むしろ雑誌ラックのような活気の演出ができます。ただしお店にしてみると、イートインスペースは必ずしも歓迎できる活用の仕方ではない。清掃に手間や時間がかかるからです。私の知っているコンビニでは、昨年4月の緊急事態宣言以降、現在にいたるまでイートインスペースを封鎖しています。感染予防の目的とは別に、本音では、開放することによってかかる手間を嫌っているのでは、と思っています。

 先の「テレキューブ」は、店内の窓際、イートインスペースの一角に設置されていました。日差しを気にせず、店側の負担も少ない「ボックス」もまた、コンビニの窓際に置くのに適したサービスであるといえるでしょうか。それ自体に存在感があり、また店内レイアウトや電源供給の面から、置ける場所は限られてくるとは思いますが……。駐車場があるお店なら、昔の電話ボックスのように設置する手もあるでしょうか。

ならば商品を増やせばいいのでは?

 ボックスを置くくらいなら、そのぶん棚を増やし、商品のバリエーションを増やせばいいのでは?と思うかもしれません。しかし、そう簡単な話ではないのです。

 現在、コンビニに置かれている商品の数は、1店舗あたり3000〜3500品といわれています。これは、来店者数や売れ筋商品の傾向を絞りに絞って選ばれた、商品のラインナップ数なのです。仮に40種類のカップラーメンを扱う店舗で、50〜60種類のカップ麺を置いたとしても、売り上げは40種類の時とそう変わらないはず。むしろスペース効率が悪化する場合がほとんどでしょう。となれば、既存の商品を増やす方向よりも、まったく別のサービスを導入する方が効果的であるわけです。

 そうした傾向に「ボックス」とは別のアプローチをしているのが、日用品の拡充です。昨年末、セブンは100円ショップ「ダイソー」の商品を置く実証実験を始めました。同様にローソンは、無印良品の取り扱いも始めました。それも、かつてファミマが無印を扱っていた頃にはなかった「ハンガー」など、普通のコンビニでは扱わないような商品です。ファミマはファミマで、オリジナルの衣料品PBブランドを立ち上げています。“商品を増やす”のであれば、このように、まったく新しい商品を店頭に置く方が、効果が期待できるわけです。

 そのほかにも、新しい「サービス」にスペースを割くコンビニも見受けられます。たとえばローソンは、介護相談窓口を設置した「ケアローソン」という店舗を全国に展開しています。こうした店舗では介護食や大人用のおむつなども置けますから、やはり新たなスペースの活用のかたちといえるでしょう。

 いまや、無人化コンビニの実証実験も始まっています。ゆくゆくはレジすらない店内レイアウトが当たり前になっていくかもしれません。そうして空いたスペースを、コンビニはどのように活用してくのでしょうか。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月28日 掲載