延命草のエキスから、発毛の司令塔である毛乳頭細胞を活性化する効果を発見した研究の概要。(画像: 近畿大学の発表資料より)

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 ロングセラーの育毛剤に配合されている延命草のエキスが、発毛をコントロールする毛乳頭細胞を活性化することがわかった。毛乳頭細胞の増殖促進、増殖司令の活性化、髪の成長促進という3つの効果を持つという。この研究結果をもとにした、男女問わずさまざまな原因で起こる薄毛に効果を持つ育毛剤の開発が期待される。

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 この研究を行ったのは、近畿大学の森川敏生教授と、加美乃素本舗の研究グループだ。研究結果は、6日発行のJournal of Natural Medicinesに掲載された。

 加美乃素から55年に渡るロングセラー商品として販売されている育毛剤に有効成分として含まれているのが、延命草というシソ科植物のエキスである。

 延命草は古くから生薬として用いられてきた。ヒキオコシという別名を持つこの植物は、弘法太子が腹痛で苦しむ人に、道端に生えていたこの草を与えて回復させたという故事から名付けられたと言われている。開花時期の地上部を煎じて飲むと、腹痛や消化不良に効果があることが知られている。

 研究チームは今回、20種類の生薬のエキスを毛乳頭細胞に加えて培養し、その増殖率を測定したところ、延命草のエキスが細胞増殖を促進することが判明した。そこで延命草のエキスから、毛乳頭細胞の増殖を促進する成分を単離、精製。その結果、エンメイン、イソドカルピン、ノドシン、オリドニンという4つの化合物を得た。

 これらの化合物のうち、延命草の主要成分であるエンメインについて、毛乳頭細胞の増殖を促進するメカニズムを調べた。すると細胞の増殖をコントロールするスイッチの1つである、Akt/GSK-3β/β-cateninシグナル伝達経路を活性化していることが判明。つまりエンメインには、発毛をコントロールする毛乳頭細胞を増やす働きがあることがわかった。

 さらにエンメインの働きについて調べたところ、毛乳頭細胞から分泌される成長因子の1つである、VEGF4の分泌を促すことがわかった。毛乳頭細胞は、髪の成長を促す合図と、脱毛を促す合図を出すバランスにより、毛の生え変わりサイクルを制御している。成長因子はそのうち、毛髪の成長する期間を長くするものであり、育毛に効果を表すと考えられる。

 脱毛症は男女関わらず、我々の生活の質に大きな影響を与える。今回の研究では、育毛に関与する化合物を同定し、そのメカニズムを明らかにした。これらの結果をもとに、今後、性別に関わらず効果が見られる育毛剤の開発につながることが期待できるだろう。