「ヤバい・エグい」は絶対使わない…頭のいい子の親は語彙力が違う
※本稿は『プレジデントFamily 2021年冬号』の記事の一部を再編集したものです。
■わが子の成績に直結「語彙力」をつけるには親の声かけが重要
どれだけの「語彙(ごい)」をもっているかは、読解力に大きくかかわってきます。たとえば物語文にしても、どういう心情なのか、どういう状況なのかを理解するときに、言葉の力は欠かせないからです。
よく、「語彙を増やすには、本をたくさん読めばいい」といわれます。確かに本をたくさん読めば多くの言葉に出合いますから、語彙は増えるでしょう。
でも、小学生が「子供向け」という基準で書かれた本をいくら読んでも、出合う言葉には限りがあります。
■「悲しい」とは…「切ない」「哀れ」「やるせない」「痛々しい」「心が痛む」
また、言葉には「使ってなんぼ」という面があります。読むだけではなく、実際に使ってみる機会がないと、自分の中の語彙として定着しません。
子供の語彙を大きく増やすには、「大人との会話」が重要だと、私は考えています。教室で子供たちを見ていると、大人との会話の機会が多い子供は語彙が豊富です。会話の中で新しい言葉に出合い、その使い方を体感できるからでしょう。
特に心情を表す言葉では、語彙力の差が顕著に表れます。実は、小学校で習う漢字には、感情に関係するものはあまりありません。そのせいか、作文を書いたり、物語の登場人物の気持ちを考えたりするとき、「楽しかったです」「悲しいのだと思います」といった表現がほとんどです。
「悲しい」にも、「切ない」「やりきれない」「哀れ」「やるせない」「痛々しい」「心が痛む」など、日本語にはたくさんの表現があります。一緒にテレビのニュースを見ながら、「やりきれない事件ね。心が痛むわ」とか、「きっと切ない思いをしているでしょうね」といった表現を親が使えば、子供の中に自然とインプットされていきます。
■リビングでニュースを見ながら、親が子にどんな話をしているか
心情語以外でも、ニュースを題材に、親子で想像してみることでも語彙は増やせます。そのときに、親は意識して、日常ではなかなか使わない慣用句や難しい熟語を入れてみてください。たとえば国際的に活躍しているスポーツ選手の子供時代やその家族のことを想像してみるのです。そして、「親御さんはさぞ鼻が高いでしょうね」「夢に向かって一心不乱にがんばってきたのでしょうね」などと使ってみる。
子供が話す言葉を、大人の言葉に変換するのも手です。「◯◯ちゃんって、恥ずかしがり屋で、声が小さいの」という発言に、「はにかみやさんなのね」と返してみましょう。これは、わが家でも2人の娘によくしていました。
子供は、手に入れた語彙を使ってみたくなるものですが、はじめのうちは使い方を間違ったり、意味を取り違えたりすることがあります。そんなとき、「あら、そんな言葉、よく知っているわね」と、まずは褒めてください。
子供の自尊心をくすぐることで、難しい言葉を使うことへの意欲が高まりますよ。
■【お家で実践! 親の声かけLesson1〜3】
▼Lesson1)親の会話に慣用句を入れよう!
●今日は朝から目が回るような忙しさだった
●◯◯さんは、今日もお隣の家の前まで掃き掃除をしていたよ。頭が下がるね
●あのコメンテーターは歯に衣着せぬ物言いが売りなのだろうけど、反感も買っているでしょうね
●雨後のたけのこみたいにタピオカドリンクのお店ができたけれど、早々に閉店したところも多いみたい
●藤井聡太二冠の勝負強さには、ベテラン棋士もかぶとを脱いだそうだよ
▼Lesson2)子供の話を別の語彙で言い換えよう!
●子:組分けテストで女子がみんな別のクラスに移ったから、私以外、全員男子だよ
↓
親:あら、女子はあなただけなの。紅一点ってわけね
●子:後ろの子がちょっかいを出してきたのに、私が先生に怒られた。ひどくない?
↓
親:それは理不尽だね。そういうときは釈明してもいいんじゃない?
●子:◯◯ちゃんとは気が合うんだよね。くだらないおしゃべりをするのがすごく楽しい
↓
親:気の置けない友達と他愛(たわい)ない話をするのはストレス解消になるね
■「ヤバい」「エグい」は絶対使わないのが頭のいい子の家の掟
【お家で実践! 親の声かけLesson】
▼Lesson3)ニュースの周辺を想像してみよう!
試合中のケガにより、全盛期のサッカー選手が引退を余儀なくされたというニュースについて
●プロになるまで尋常ではない努力をして、他のプレーヤーとしのぎを削ってきたはずだから、無念でならないだろうね
●スポンサーにとってもかなりの痛手じゃないかな
●スポーツ選手には常にケガのリスクがつきまとうから、勝敗もさることながら安全への配慮も欠かせないね
●引退した選手の後釜におさまった人にとってはチャンス到来だけど、事情が事情だけに手放しで喜ぶわけにもいかないよね。「やはり代わりは務まらないね」という評価をされかねないから重圧を感じることでしょう
■【「ヤバい」「エグい」は厳禁、日常で使いたい心情を表す言葉リスト】
▼「嬉しい・喜ぶ・楽しい」に関する言葉
●浮かれる
●喜々とする
●胸がはずむ
●愉快
●上機嫌
●冥利(みょうり)に尽きる
▼「悔しい」に関する言葉
●歯ぎしりする
●泣くに泣けない
●涙をのむ
●無念
●唇をかむ
▼「怒る」に関する言葉
●腹が立つ
●逆上する
●憤る
●気色ばむ
●血相を変える
●息巻く
▼「驚く」に関する言葉
●呆気(あっけ)にとられる
●肝を冷やす
●腰を抜かす
●目を丸くする
●寝耳に水
●肝をつぶす
▼「悲しい」に関する言葉
●胸が痛む
●胸がしめつけられる
●うちひしがれる
●やるせない
●嘆く
●悼む
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南雲 ゆりか(なぐも・ゆりか)
南雲国語教室代表、小学校教諭
大手中学受験塾の国語科専任講師を経て現職。「正確に読む力、伝える表現力」の育成がモットー。
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(南雲国語教室代表、小学校教諭 南雲 ゆりか 構成=金子聡一 撮影=榊 水麗)