田代和義さん(仮名・40歳)

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 コロナ失業や収入減により、ローンの支払いに困窮する人がかつてないほど増えている。新型コロナによって顕在化した「ローン破綻の落とし穴」はどこか? 今回は妻が雇い止め、ボーナス8割カットで返済計画が完全に狂ってしまった2つの事例を元に専門家が解説。

◆金融機関が無理なローンを組ませすぎてきた

 ローン破綻の問題は「コロナを契機に顕在化しただけで、以前から問題視されていた」と指摘するのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。

「背景には、これまで金融機関が無理なローンを組ませすぎてきたことが挙げられます。平成初期に3%台だった住宅ローンの変動金利は10年近くでジリジリと下がり、今では限りなく0%に近い状態。それだけ金利が下がると、金融機関は目先の貸し付けを優先させ、返済能力に合わない金額でも融資し続けてしまう」

 榊氏の言葉を裏づけるように、都内の銀行員は「本来、年収の5倍がローンの審査基準とされるところ、近年は年収の8倍でも審査が通るのが実情だった」と話す。

 さらに現在、ローン破綻者を増やしているのがペアローンの存在だ。高額な住宅を購入するため、共働きの夫婦を対象に収入を合算して組めるローンだが、コロナのような想定外のでき事が起きると、途端に破綻リスクが高まる。

「世帯収入で審査するので多額のローンが組めますが、失職や病気、育児、介護といったリスクも2人分。何もなく数十年間どちらの収入も維持し続けるというのは、どう考えてもハードです」(榊氏)

◆妻が雇い止めに遭いペアローン返済が頓挫

 5年前に3LDKの新築マンションを6300万円で東京23区内に購入した田代和義さん(仮名・40歳)は、まさにペアローンの落とし穴に嵌ったひとり。月16万円を妻と返済してきたが、契約社員だった妻が雇い止めに。返済計画が完全に狂ってしまった。

「僕が年収550万円、妻は350万円。住宅ローン無料相談会に行ったら『ペアローンなら6500万円まで組める』と言われ、背伸びをして予算よりも高い新築マンションを買ってしまいました」

 現在は妻の失業保険で返済できているが当然、家計は火の車だ。

「好転する材料がひとつもないので、任意売却せざるを得ないと思います。まだ3年しか住んでないのに、コロナが憎いですよ……」

 妻が無職になるなんて、考えもしなかったという。

「広いリビングに大きなテレビを置くのが夢だった」と話す田代さん。わずか3年足らずで、どちらも手放さざるを得ない事態になるとは……。

▼田代和義さん(仮名・40歳 重機メーカー/既婚)
年収550万円
ローン残債 5300万円
月の返済 16万円

◆ボーナス8割カットでリフォームのローンが…

 また、アパレルメーカーに勤める林泰明さん(仮名・48歳)も「ボーナス8割カット」され、ローン破綻の恐怖に怯える日々を送る。

「2020年1月、脳梗塞で足にまひが残る母のために2世帯で住む自宅をバリアフリー化したんです。その際に間取りや内壁もリフォームし、かかった費用は1600万円。15年ローンで月々の返済は8万円ですが、年2回のボーナス支給月は返済額を35万円に設定していたんです。

 ボーナスが8割もカットされれば到底支払える額ではない。母が倒れてからの治療費も負担していたので、貯金は微々たるもの。ボーナスが減ることは、まだ家族には告げられていません」

 移動に苦労する母の部屋に手すり付きの専用トイレを設置。「喜んでくれた母の顔を思い出すと胸が苦しい……」と林さんはいう。

「ここまでしたのに、母を連れて家を出ることになるかもしれない」

▼林 泰明さん(仮名・48歳 アパレルメーカー/既婚)
年収750万円
ローン残債 1500万円
ボーナス払い 35万円

◆ローン返済猶予措置の期限切れ

 ボーナス払いをしている人は約4割ともいわれ、林さんのように多くの人が返済に苦慮することが予想される。さらに、榊氏はコロナ禍で多くの人が頼りにした「ローン返済猶予措置の期限切れ」が冬にくることも顕在化の理由に挙げる。

「金融機関に相談して返済期間の延長や猶予に応じてもらえても、その期間は概ね6か月。そこまでに再就職や家計の財政状況が立て直せなければ、回収不能とみなされ自宅は任意売却するか競売にかけられます。返済猶予の承認件数が急増したのは5〜6月。まさに11〜12月に期限を迎える第一陣がいて、家を失い路頭に迷う人が続出し始めるでしょう」

 マイホームという人生最大の買い物に不可欠な住宅ローン。しかし、それによって人生を大きく狂わせられる人が続出する時代が、もうそこまできている。

【住宅ジャーナリスト 榊 淳司氏】
’80年代後半から、30年以上マンション分譲を中心に不動産業界に関する分析や情報を発信。近著に『コロナパニック最前線 不動産大暴落がはじまった』(宝島社)

<取材・文/週刊SPA!編集部> ―[[ローン破綻]の現実]―