JR「羽田空港アクセス線」の事業許可が下り、いよいよ実現に向けてスタートします。一方、東急線から羽田空港へのアクセスを目的とした新線構想「蒲蒲線」も議論されてきましたが、こちらはどうなっているのでしょうか。

近くて遠い、2つの蒲田駅

 2021年1月20日(水)、JR東日本は東京貨物ターミナルから羽田空港新駅へ向かう「羽田空港アクセス線」の事業許可を得たと発表しました。これにより、貨物線と上野東京ラインを通じて、宇都宮・高崎・常磐方面と羽田空港が直接結ばれることになります。

 一方その陰では、もう一つの「羽田アクセス線」となる構想が進められています。それが、東急の蒲田駅と京急の京急蒲田駅をつなぐ新線、通称「蒲蒲線」です。


多摩川駅と蒲田駅を結ぶ東急多摩川線。蒲蒲線が実現すれば重要なアクセス線の一部になる(2014年8月、草町義和撮影)。

 蒲蒲線は、東急多摩川線の矢口渡〜蒲田間で地下線に入り、東急蒲田駅、京急蒲田駅を経て、京急空港線に大鳥居駅手前で合流する計画の路線です。

 東急・JRの蒲田駅と京急蒲田駅は約800m離れており、キャリーバッグを引いての繁華街の徒歩移動はラクとは言えません。蒲蒲線が開業すれば、東急利用者にとって羽田空港へのアクセスは一気に現実的となってくるのです。

 さらに、東急多摩川線が東横線および空港線とそれぞれ直通運転を行えば、東京メトロ副都心線を経由した「秩父・所沢・川越〜羽田空港」という壮大な空港アクセス線が実現します。

 しかし、この構想の実現には大きな壁が立ちはだかっています。それは、東急と京急で線路幅が違うこと。東急は1067mm、京急は1435mmです。また、大鳥居駅までのトンネル工事や、多摩川駅の直通運転対応工事も大規模なものとなります。

 特に線路幅の違いは大きな障壁となるため、平成28年4月の国の交通政策審議会答申では、まずは東急と京急空港線との接続を最優先とし、矢口渡〜京急蒲田までの区間を第1段階として、関係する地方公共団体と鉄道事業者で費用負担などの合意形成を進めるべきとされました。

事業着手までの道のりは

 2016(平成28)年の調査結果では、第1段階(矢口渡〜京急蒲田)の概算事業費は1280億円。これを、整備主体となる第3セクター、国、都および大田区の3者で等分するとされています。

 2017年には、蒲蒲線の早期実現に向け、東京都豊島区長や埼玉県和光市長を含む18市区長が連名で、小池東京都知事に要望書を提出。知事は「皆様方のご意見をしっかり受け止めて、課題を解決するように検討を進めていきたい」と述べました。

 2020年9月には、事業負担の割合の調整について東京都と大田区が協議。また大田区は12月の議会答弁で、引き続き整備主体である第3セクターの速やかな設立に向けて、都と協議を行っていくという意思をあらためて発表しました。

 蒲蒲線計画の進展、まずはこの第3セクターの設立がカギになってくると言えるでしょう。ただし、先述の都と区の協議では、事業費の圧縮など検討すべき事項があるとの意見も上がったとのこと。新型コロナウイルスの影響もふまえ、まだ不透明な状況は続きそうです。

 ちなみに、東急のある役員は、東急蒲田駅と京急蒲田駅のあいだを「魔の800m」と表現しました。というのも、たとえば羽田空港から東急多摩川線沿線にある世界的企業を訪問する外国のビジネス客にとって、京急と東急の乗り換えは大きなハードルになるのだとか。近くて遠い「2つの蒲田駅」の隔たりは、いつ解消されるのでしょうか。