人気の最大の理由はGT500クラスの激しいバトルだ

 日本のレースシーンにおいてもっとも成功しているカテゴリーがスーパーGTにほかならない。1994年から2004年にかけて争われていた全日本GT選手権(JGTC)を前身に持ち、2005年に日本発の国際シリーズとしてスタートしたスーパーGTは国内最大級の人気カテゴリーに成長。事実、1ラウンドあたりの観客動員数は3万人前後から多いときには10万人に迫るほどの人気ぶりで、F1に匹敵するほどの人気を誇る。

 残念ながら2020年は新型コロナウイルス の影響により、富士、鈴鹿、もてぎの3コースだけの開催となったほか、前半戦は無観客で開催。さらに観客を動員した後半戦も人数制限がおこなわれたことからファンにとっては残念なシーズンとなったが、さまざまなメディアで取り扱われるなど、抜群のカバレッジは健在だった。

 まさにスーパーGTは日本を代表するレースカテゴリーとして定着しているが、その最大の理由はGT500クラスの激しいバトルだといえるだろう。

 GT500クラスではJGTC時代からトヨタ(2006年から2019年はレクサス)、ホンダ、日産の“御三家”がフラッグシップスポーツを投入。2020年にはトヨタGRスープラ、ホンダNSX、日産GT-Rが参戦し、激しい三つ巴のバトルを展開したことは記憶に新しい。

 近年はドイツの人気ツーリングカーレース、DTMと同一の車両規定を採用していることから共通パーツも増えてきているが、2000ccの直列4気筒ターボエンジンやエアロダイナミックスを筆頭に開発競争は健在で、F1やWRC、WECなどの世界選手権に匹敵するほど過酷なバトルが展開されている。

 加えてタイヤに関しても国内外の多くのシリーズでワンメイクコントロールが採用されるなか、スーパーGTのGT500クラスではブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランの4メーカーが激しいバトルを展開。その結果、スーパーGTのGT500クラスは“世界最速のGTカーレース”と呼ばれるほどのパフォーマンスを発揮している。

 事実、富士スピードウェイにおけるコースレコードを比較してもスーパーフォーミュラライツの1分31秒370(2020年/宮田莉朋@トムスTAZ31)に対して、スーパーGTは1分26秒386(2020年/山下健太@トヨタGRスープラ)とGT500クラスは、ミドルフォーミュラをはるかに凌駕している。まさに市販モデルのシルエットを踏襲しつつも、GT500クラスはプロトタイプスポーツカーに迫るポテンシャルで、この異次元のスピードもスーパーGTの魅力となっているのである。

車種バリエーションの豊富さも特徴のひとつ!

 一方、GT300クラスもスーパーGTを語るときに欠かせない存在といえる。なかでも、特徴的なのが、多彩な車種バリエーションだといえるだろう。

 GT300クラスは国際規定のFIA-GT3と日本独の独自規定であるJAF-GTおよびマザーシャーシを採用していることからさまざまなマシンが参戦。具体的にはメルセデスAMG GT3、BMW M6 GT3、アストンマーチン・ヴァンテージGT3、アウディR8 LMS、ランボルギーニ・ウラカンGT3、ポルシェ911 GT3 R、ホンダNSX GT3、ニッサンGT-R NISMO GT3、レクサスRC F GT3といった市販のFIA-GT3モデルから、トヨタ86やロータス・エヴォーラ、スバルBRZやトヨタGRスープラ、トヨタGRスポーツ・プリウスPHVなど日本独自のJAF-GTモデルおよびマザーシャーシ車両が参戦している。

 それゆえにGT300クラスは“世界一の激戦区”といわれるほど、豊富な車種をラインアップ。そのため、レースファンのみならず、多くのクルマ好きが楽しめるカテゴリーとなっていることも人気の理由だ。

 しかも、GT500クラス、GT300クラスともにウエイトハンディや吸気および燃料流量リストリクターの採用など、リザルトに応じて独自の性能調整が実施されていることから、スーパーGTではつねに激しいバトルが展開されている。ひとつのモデル、ひとつのチームによるワンサイドゲームは少なく、各ラウンドで新たなウイナーが誕生することもスーパーGTならではの特徴で、ときとして語り継がれる名勝負が展開。このエンターテイメント性の高さも同カテゴリーの特徴といえる。

 もちろん、ドライバーの顔ぶれもスーパーフォーミュラで活躍する若手ドライバーのほか、F1を含めてさまざまなカテゴリーで活躍してきたベテランまで国内外から強豪が勢ぞろい。2021年も全8戦のスケジュールで開催される予定となっているだけに、今年もスーパーGTの“名勝負”に注目したい。