飼い主さんにとって6代目のシベリアン・ハスキーとなるサリちゃん

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 京都の割烹宿とシベリアン・ハスキー。ミスマッチにも思えますが、そんなことはありません。京都市北区にある臨済宗大徳寺派の大本山・大徳寺に程近い割烹宿『大徳寺 鮨長』で暮らす推定9歳のサリちゃんは、築100年の京町家にしっとり馴染んでいます。

【写真】割烹宿『大徳寺 鮨長』の看板犬をつとめます

「看板犬というわけではないんですよ。お店のほうにはあまり出てこないので。お客様にはかわいがっていただいていますけどね」

 そう言ってサリちゃんに優しい視線を送ったのは女将の佐々木久子さん。鮨長はランチ営業もしており、宿泊ありでもなしでも犬と一緒に美味しい江戸前鮨や京料理を堪能できるとあって、愛犬家のお客様も多いのです。近年は「ペット同伴OK」の宿泊施設も増えつつありますが、ホテルやペンションといった洋風スタイルのところが多く、割烹宿はあまり聞いたことがありません。

「もともと川奈(静岡県)で割烹旅館をしていたんです。そのときも1部屋だけワンちゃんと一緒に泊まっていただけるようにしていたのですが、それが好評で。京都に移ろうと思ったとき犬と泊まれるところ、特に大型犬と泊まれるところがほとんどないと分かって、それならうちでと。ただ泊まるだけじゃなくて、美味しいものも食べていただきたいですしね」(久子さん)

 ご主人の佐利さんと久子さん夫妻にとって、サリちゃんは6代目のハスキー犬です。初代のラリーちゃんを飼い始めたのは30年以上前。2代目はラリーちゃんの娘のサリーちゃん、3代目はブリーダーさんから迎えたエリちゃん、4代目からは『一般社団法人ケンの家』で里親募集中の保護犬を引き取るようになり、バティーくん、マリちゃん、そしてサリちゃんと続いています。

「ムツゴロウさん(畑正憲)の番組でそりを引いているのが印象的でした。ペットショップでラリーに会ったのはハスキーがブームになる少し前だったと思います。『鉄砲玉のラリー』と呼ばれるような子で、放したら戻ってこないし大変だったけど、ハスキーは一度飼ったらやめられないと代々、飼う方が多いですよね。基本的におとなしくて無駄吠えしないし、やさしいけれどベタベタしない。いい距離感でいてくれます」(久子さん)

 サリちゃんを迎えたのは2017年5月。先代のマリちゃんを亡くして2カ月の時でした。「犬を亡くした喪失感は犬じゃないと埋められないので」と久子さん。サリちゃんは“悪徳”と付くブリーダーからレスキューされた2頭のうちの1頭で、乳腺腫瘍があり「余命3カ月」と聞かされていました。

「看取り覚悟?そうですね。でもできるなら手術してあげたいと思っていて、結果的に避妊手術と右の乳腺腫瘍の手術をまずして、その1カ月後に左の乳腺腫瘍も…それは幸い良性だったんですけど、大きな手術を乗り越えてくれました」(久子さん)

 一緒にレスキューされたケリーくんはガンですでに他界。佐々木夫妻は「2頭はカップルだったかもしれないし、ケリーくんが命を分けてくれたんじゃないか」と話しているそうです。

 出会った頃のサリちゃんは怯えがひどく、なでようとすると逃げてしまう、お散歩も難しい子でした。でも今は、筆者の手からオヤツを食べてくれるほどに。「今までの中で一番いい子です」と久子さんは言いますが、それは夫妻からたっぷりの愛情を注いでもらったからに違いありません

 佐々木家には静岡時代に山の中で保護した猫のあいちゃんもいます。スコティッシュフォールドとマンチカンのミックス。先天性疾患を防ぐため本来は交配が認められていない猫種だと言います。

「8割は疾患を持って生まれてくると聞きました。そういう子は捨てられる。あいちゃんも前脚が短くて後ろ脚が長いですし、体中にコブがありました。一番やっかいだったのはノドにあった軟骨のコブ。気道を半分塞いで呼吸がうまくできないし、ごはんもうまく食べられませんでした。でも、イチかバチかで手術をしたら元気になったんです。拾ったときはガリガリに痩せていましたけど、いまじゃ丸々(笑)。サッちゃんと仲良しなんですよ」(久子さん)

 繁殖業者からレスキューされた犬と、不適切な交配によって生まれ山で拾われた猫のいる割烹宿。いただいたお鮨は美味しく、そしてやさしい味がしました。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)