丁寧に焼き上げられたサバは必食

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 都営新宿線の篠崎駅から歩いて徒歩10分。京葉道路沿いに火事と見間違うほどの大量の煙と食欲を刺激する香りで、通行人の注目を集める弁当屋が存在する。公園の一角にポツンと佇む、炭火焼きにこだわった「鯖の助」だ。

◆炭火は食材を最もおいしく仕上げる道具

 店を切り盛りする店主の川和秀動さんは根っからの魚好き。食べ物が溢れる世の中で「最後に辿り着くのは、焼き魚に白米、味噌汁ではないか」という思いのもと、“飽食尽きて魚に還る”との考えに至り、住み慣れた町の江戸川区篠崎町で鯖の助をオープンした。

「炭火にこだわっているのは、炭火が食材を最もおいしく仕上げる道具であり、方法であると考えるから。炭の遠赤外線の効果で、内側はふっくら、外側はパリッとした仕上がりになります。ご家庭でなかなか再現するのが難しい炭火ならではの香ばしさや旨みを多くの方に楽しんでもらいたいですね」

◆「炭はやめたほうがいい」と言われた過去

 ガスで調理するよりも炭火で焼いたほうが魚は俄然、うまくなる。だが、炭火で調理する店は多くない。その理由を川和さんは「とにかく大変だから」と明かす。

「もともと東京湾で釣り船をやっていたので、築地とのつながりがありました。7〜8年前、炭火焼きの弁当屋をやろうと思って築地の知り合いに相談したら、口を揃えて『炭は(慣れるまで)5年はかかる。やめたほうがいい』と言うんです。いやいや、そんなにかかるわけがないだろうと思っていざ始めたら、5年どころじゃなかった。今も日々勉強しながら魚を焼いています」

◆60℃に達することもある焼き場で炭と向き合う

 川和さん曰く、「同じ種類の魚でも、季節やその日の環境によって焼け方がぜんぜん違う」とのこと。

「炭も毎回違うので、安定して同じ味を出すのがとにかく大変です。ちょっとでも油断すると、焼けすぎちゃってえらい目に合いますよ」

 夏は温度との戦いも悩みのタネ。炭火の近くは50〜60℃にもなるといい、大量の煙も体力を削っていく。「お客さんに『よく燻製にならないね』って言われます」と冗談めかす川和さんだが、美味しい焼き魚を届けるために炭火焼きのスタイルを貫いている。

◆心意気ひとつで肉料理にも注力

 川和さんは炭を使った調理方法だけではなく、食材にも強いこだわりがある。

「サンマは秋の人気メニューでしたが、不漁だった去年から出していません。焼いて食べてみたけど、サイズが小さいし、アブラが乗ってなくておいしくなかった。サンマが食べたいというお客さんは多いんだけど、自分が納得できないものは出したくないからね」

 お店のウリはサバやホッケ、シャケ、アジなどの焼き魚だが、実は肉メニューも充実。若どり照り焼き、豚みそ、うし焼、ハンバーグと肉を使った絶品料理が揃っている。

「会社の同僚や友だちと来てくれた人の中に、魚が苦手な人がいたらお弁当が買えなくてかわいそうでしょ。それで肉のメニューは魚と比べて手間がかかるし、煙の出る量もすごい。本当は魚一本で勝負したいんだけどね(笑)」

◆東京都外からも頻繁に訪れる常連客

 そうは言いながらも、自分が納得できないものは出したくないという哲学は肉料理も同じ。豚を漬け込む味噌は5種類の味噌を独自に配合したこだわり。若どり照り焼きも独自のタレをしっかり絡ませて焼いてあり、ハンバーグも牛と豚の合いびき肉を手ごねしたもので、一切手を抜いていない。炭の香ばしい匂いが食欲をそそる逸品で非常にジューシー。肉でも炭火で焼いた素材の旨みを再体験できる。

「ただ、手間をかけている分、肉料理は大量に作れなくて。特にお客さんの多い土曜日はすぐに売り切れちゃうこともあるから、食べたい方はぜひ電話予約をしてください」

 その味に惚れ込み、地元住民はもちろん、千葉や神奈川、栃木、茨城など、近隣の県からわざわざ弁当を買いにくる常連客も少なくない。多い日は単品の商品を含めて500食が売れることもあるという。

◆メニューの刷新は今後も継続

「今度、ハンバーグをリニューアルするんですよ。今の味でも十分売れているんだけど、同じ味だと食べるほうも飽きちゃうだろうし、作るほうも飽きちゃうからね(笑)。発売時期は未定ですが、味には自信がありますよ」

 店名にもなっている香ばしいサバはもちろんのこと、炭火で焼いた肉料理にも一切の妥協なし。看板メニューの焼き魚にまずは舌鼓を。そして、こだわりの肉料理のチェックも忘れてはいけない。<撮影/岡戸雅樹>