企業のリクルーターや面接官の印象が就活生の志望度を左右する(写真:metamorworks/PIXTA)

実質的な就活は3年生の夏期休暇に実施されるインターンシップから始まるが、本格的な採用・就職のハイシーズンが翌年3月以降であることは間違いない。企業セミナーへの参加、リクルーターとの接触、そして面接はここから始まる。

この就活実践の段階で会うのが社員(リクルーター)と面接官だ。その影響は大きい。そこで社員と面接官による志望企業の絞り込みへの影響を検証してみたい。

使用するデータはHR総研が「楽天みん就」と共同で実施した「2021年卒学生の就職活動動向調査」(2020年6月8〜23日)だ。

学生の志望に影響大

社員との接触や面接によって学生はどれくらい影響を受けるのか? 結論から言えば大いに影響を受ける。影響の度合いは文系のほうが大きい。

「社員・リクルーターの印象によってどれくらい志望企業の絞り込みに影響するか」を検証しよう。文系では37%が「非常に影響した」、42%が「影響した」と答えている。理系では「非常に影響した」は34%と微減するが、「影響した」は45%。文理ともに79%が影響を受けており、「影響しなかった」という回答は21%にとどまっている。


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次は面接官の影響だ。「面接官の印象によってどれくらい志望企業の絞り込みに影響するか」を検証する。面接官の影響は社員・リクルーターより10ポイント近く大きい。

文系では46%が「非常に影響した」、42%が「影響した」と答え、計88%に達している。約9割が影響を受けているわけだ。理系では少し少ない。「非常に影響した」は39%と減り、「影響した」は43%、計82%と8割強が影響を受けている。「影響しなかった」との回答は文系12%、理系18%にとどまっている。

物理の世界でも情報の世界でも、他の物体やデータに接すると、何らかの変容が起こる。人も出会いによってとても大きな影響を受ける。

どんな企業の社員・リクルーターや面接官の評判がいいのか? 両ランキングはその上位を掲載しているが、いずれも同率8位が2社あるので9社ずつになっている。

社員・リクルーターと面接官のいずれにも登場する企業が5社ある。東京海上日動火災保険アクセンチュア東海旅客鉄道(JR東海)第一生命保険、そして楽天である。この5社を中心に学生の感想を見ていきたい。

学生に企業の印象を語らせると「明るい」「笑顔」「はきはき」「優しい」「親身」などの言葉で終わるショートメッセージが多い。しかし、短文で終わらず、複数の文で印象を語る学生もいる。

“大人企業”の代表格

学生の言語能力が高いとも言えるが、「信頼できる人たち」が多い企業に対して、多くの言葉を使っているようにも見える。そんな大人企業の代表格が東京海上日動火災保険(リクルーター・面接官のいずれも1位)だ。社員・リクルーターは「親身」「誠実」であり、学生は信頼感を抱いている。面接官はリクルーターよりもさらに大人だ。コメントに「父母のような」という言葉があるが、目上に対する敬愛感を持つ学生が多いようだ。

「話す内容に論理性があり、仕事に熱意を持って取り組んでいる印象を持った」(早慶大クラス・文系)

「こちらの話を引き出そうとしてくれた。父母のような眼差しが安心感をくれた」(その他私立大・文系)

「自分を見てくれている雰囲気を感じた。とても話しやすい雰囲気も作ってくれた」(早慶大クラス・文系)

学生コメントが短い企業もある。その代表格がアクセンチュア(リクルーター・面接官のいずれも3位)だ。

「話し方がテキパキしていた」(上位国公立大・文系)

「自分1人の話に真摯に向き合ってくれた」(旧帝大クラス・文系)

面接官に対するコメントも、「賢かった」(上位私立大・文系)、「頭がよさそう」(上位私立大・理系)といった具合である。

リクルーターも面接官も「頭がいい」「賢い」のだ。学生は憧れているが、共感しているわけではなさそうに見える。クレバーさに圧倒され、気持ちを説明すべき言葉が見つからないのでショートメッセージになっているのではないかと思う。

東海旅客鉄道(JR東海、リクルーター・面接官のいずれも4位)に対するコメントで感じるのは「人間くささ」だ。学生に明るく接し、親身になっている。学生を採点するのではなく、理解しようとする姿勢が学生の好感度を上げているように見える。

社員・リクルーターに対するコメントは「逆質問に対し、丁寧に回答してくれた」(その他国公立大・理系)、「話しやすい人が多かった」(その他国公立大・理系)、「明るく接してくださったから」(中堅私立大・文系)など。

就活に関するアドバイスも丁寧だ。

「選考の前日などに突破のポイントや聞かれることなどのアドバイスをし、応援してくれた」(その他国公立大・文系)

「面接への対策等、さまざまなことに真摯に対応してくれた」(旧帝大クラス・理系)

「説明会が中止になったが、わざわざ電話をかけて質問等ないか聞いてくれた」(上位私立大・文系)

親切な第一生命、気さくな楽天

第一生命保険(リクルーター・面接官のいずれも5位)も丁寧に学生に向かい合う点がJR東海と似ている。社員・リクルーターはとても親切だ。不安な気持ちを理解し、優しく応接しようとしている。

「本当に真摯に対応してくれる方が多かった」(その他私立大・文系)

「親身になって話を聞いてくれた」(中堅私立大・文系)

「不安な想いや就活の悩みを聞いてくれた」(その他私立大・文系)

面接官の人間力も優れているようだ。「人柄」という言葉が目立つ。

「社員の人柄と懇切丁寧な対応」(早慶大クラス・文系)

学生に向かい合う姿勢が同じでも学生に与える印象は異なる。JR東海や第一生命は、学生に優しく接して気持ちをほぐしているが、学生からは兄貴というより大人に映っているように思える。

楽天(リクルーター5位、面接官8位)の場合は会話のテンポが速く、学生はリクルーターを「兄貴分」「先輩」のように感じている。

「質疑応答のスピード、丁寧さ、明るくハキハキとチアーアップをしてくれる優しさ」(上位私立大・文系)

「学生目線で話してくれた」(上位私立大・文系)

現在の楽天の事業規模は大きいが、創業からまだ20数年と若い企業だ。成長の原動力はIT。そんな社風が面接にも反映され、フランクな会話が特色のように見える。

「気さくで自分のよさを引き出してくれようとした」(早慶大クラス・文系)

「とてもフランクな雰囲気で、自分らしさを出しながら話せた」(上位私立大・文系)

次に「印象の良かった社員・リクルーター」と「印象の良かった面接官」のいずれかに登場する企業へのコメントから印象深いものを紹介しよう。

ニトリ(リクルーター2位)で目を引くのは、先輩が後輩の面倒を見るようなフォローぶりだ。キャリアセンター顔負けのサポートがとても目立つ。

「他社の選考についてや就活全般のアドバイスを親身になってしてくれた」(早慶大クラス・文系)

「就職活動を本気で応援してくれていると感じた。自社に入社させたいというより、納得のいく就職活動をしてほしいという姿勢が好印象だった」(上位国公立大・理系)

「元気でハキハキしていた、このような社会人になりたいと思った」(上位国公立大・文系)

親身な富士通、明るいカゴメ

富士通(面接官2位)のコメントで目立つのは、「親身」「優しい」「穏やか」「和やか」。圧迫面接とは真逆。学生を理解しようとする姿勢が評価されている。

「すごく親身に話を聞いてくれた」(早慶大クラス・文系)

「優しい雰囲気を出してくれた」(早慶大クラス・文系)

「穏やかに話してくれる方が多く、素を出すことのできる雰囲気があった」(早慶大クラス・文系)

「とても和やかで、こちらの意図を汲み取ろうとしてくれた」(旧帝大クラス・理系)

カゴメ(面接官5位)の面接官に対するコメントで目立つ言葉は、「にこやか」「生き生き」「楽しい」「明るい」。さわやかな笑顔で話を聞く面接官の評判がいい。

「とても生き生きして元気な社員の方だったのでこちらもその雰囲気に負けないように面接しました」(上位私立大・理系)

「私の話を笑って聞いてくれた。話を広げてくれてとても楽しかった」(その他私立大・理系)

今回は2021年卒採用での学生調査データを検証し、社員(リクルーター)と面接官の学生に与える影響を紹介した。この種の調査は毎年実施しているが、年によって大きな変化はない。


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もちろん多少の変化はある。少しずつ学生の気質は変わっていき、面接手法のはやりすたれもある。例えば、2010年代前半まで圧迫面接が流行したが、最近ははやらない。圧迫面接に対する学生の評判が悪く、ネットを通じてさまざまな情報が拡散される恐れがあるからだ。

好印象の企業の共通点

しかし、学生が評価する社員(リクルーター)と面接官の特徴は、どの年度でもほとんど変わらない。学生が自分を引き出してくれると感じることが評価につながる。そして、毎年好印象を与える企業の顔ぶれは大きくは変わらない。たぶん学生に接するときのツボを心得ているのだろう。ほかの企業も好印象企業の応接から学ぶことがあるはずだ。