キヤノンの戸倉剛常務執行役員は「『EOS R5』は想定以上の好評を得ている」と語る(撮影:尾形文繁)

デジタルカメラ市場を牽引してきたトップメーカー・キヤノンにも市場縮小の大波が押し寄せている。新型コロナウイルスの影響が如実に出た2020年4〜6月期は、デジカメやオフィス複合機の売り上げが大きく落ち込み、四半期決算として初の最終赤字に転落した。

さらに、コロナ前からソニーがミラーレスカメラの販売を伸ばす一方、一眼レフカメラに重きを置いていたキヤノンはミラーレス対応で後れをとった。2020年7月にミラーレスカメラのプロ向け機種「EOS R5」を出すなど、反転攻勢をかけるが、ソニー追撃は容易ではなさそうだ。

キヤノンでデジカメ戦略を担当するイメージコミュニケーション事業本部長の戸倉剛常務執行役員にインタビューした。

第2世代で飛躍的に性能が向上した

――2020年7月に発売したフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」の販売が好調で、入手まで3カ月以上待ちの顧客が出るほどです。

想定以上の好評で、待っていただいている顧客には申し訳ないと思っている。「EOS R5」はプロ向け製品で、価格も(約50万円と)かなり高額だ。ボディ(カメラ本体)だけでなく、フルサイズミラーレス向けの交換レンズ(の販売)も順調に伸びており、(キヤノンのミラーレスシリーズ)Rシリーズの堅調さを示していると感じている。

――コロナ禍でデジカメ市場が縮小している中、高額なEOSシリーズのR5やR6の売れ行きが好調なのはなぜでしょうか。

理由は3つある。まず高性能で商品力が強いこと。2018年に発売した「EOS R」など、われわれがミラーレスの第1世代といっていたものから、それに続く第2世代のR5やR6は、デジカメの性能を飛躍的に向上させた。

発売のタイミングも大きかった。2020年はコロナという異常な年で、オリンピックも延期になった。春以降にカメラ市場は大きく底を打ち、回復してきたタイミングに新製品を投入できた。市場の戻りを追い風にできた面もある。

3つ目はネーミング。当社の製品で「5」という数字を冠する商品は、ミラーレス時代以前から新しい機能を搭載する役割を与えられた製品だ。「5」のブランド力は高く、もちろん顧客からの期待感も大きい。そのイメージも貢献した。