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現地時間の2021年1月6日、アメリカの連邦議会議事堂をドナルド・トランプ氏の支持者らが襲撃して数時間にわたり占拠し、デモの参加者や警察官を含む5人が死亡する事態が発生しました。この件についてFacebookは「暴動はFacebook外で組織された」と主張していますが、テクノロジー企業の慣行に関する研究機関のTech Transparency Project(TTP)は、「連邦議会議事堂の襲撃は数カ月にわたりFacebookで組織されていた」と指摘しています。

Capitol Attack Was Months in the Making on Facebook | Tech Transparency Project

https://www.techtransparencyproject.org/articles/capitol-attack-was-months-making-facebook

トランプ支持者らによる連邦議会襲撃について、Facebookの最高執行責任者(COO)であるシェリル・サンドバーグ氏は「大部分はFacebookで組織されたものではない」との見解を示しています。サンドバーグCOOはロイター通信のインタビューに対し、「このような出来事は私たちのヘイトを阻止する能力が及ばず、私たちの透明性や標準を持たないプラットフォームで起こっていると考えています」と述べました。

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しかしTTPはサンドバーグCOOの主張に対し、「その主張は誤りであるだけでなく、Facebookが過去1年間にわたり2020年のアメリカ大統領選挙に関する陰謀と極右の民兵活動をプラットフォーム上で増殖させ、議会襲撃を扇動した広範な過激派の基盤を築いたという事実を無視しています」と指摘。2020年の秋以降、Facebook上では過激派のグループがFacebookを利用し、メンバーを扇動するのを数カ月間にわたり確認してきたとTTPは主張しています。

◆選挙前の活動

TTPは2020年11月の大統領選挙以前から、さまざまな「愛国者」が集まるFacebookグループのメンバーたちが有権者の脅迫を計画していたと指摘。たとえば「Ohio Patriot Action Network」というグループに参加するメンバーの1人は、10月27日に「退役軍人らが自分たちの持つ『鉄(武器)』を投票場に持ち込むべきだ」という投稿を行いました。また、この人物はジョー・バイデン氏やその他の議員らを暗殺するという脅迫を個人のFacebookページに投稿し続けたとのこと。



また、「FLORIDA PATRIOTS」というグループでは、10月にあるメンバーが「武装した市民」に向けて緊急事態に対応するように呼びかけたところ、別のメンバーは「訓練し、面会し、準備する」方法についての情報を要求しました。同様の要求は「Oregon Patriots (save Oregon)」というグループでも行われ、別のメンバーから「訓練に関する詳細をFacebook上で公然と共有しないように」と警告される様子も見られたそうです。

海外メディアのThe Guardianは議事堂の襲撃について、一部の参加者らがトランシーバーアプリを使って通信し、訓練された規律のある動きで移動していたと報じています。TTPはFacebookグループ上における会話を監視することで、過激派が訓練や準備に重点を置いていることを事前に把握していたとのこと。なお、TTPは一連の調査において確認された暴力に発展する可能性がある過激な発言を発見した場合、適切な当局へ通知を行っていたと述べています。

Revealed: walkie-talkie app Zello hosted far-right groups who stormed Capitol | US Capitol breach | The Guardian

https://www.theguardian.com/us-news/2021/jan/13/zello-app-us-capitol-attack-far-right



TTPは選挙が近づくにつれ、バイデン氏や他の民主党の政治家に対する脅迫的な発言がFacebook上で増加していることも確認しました。10月初旬には「Pro-Police, Pro-Military, Pro-Trump」というグループで、ソマリア出身の難民として初めてアメリカの下院議員となった民主党のイルハン・オマル議員に対し、「グアンタナモ湾収容キャンプに送られるべきだ」「あのビッチを撃て」「ドローンで攻撃しろ」という発言が見られたとのこと。過激な発言が増えると同時に暴動への言及も増加し、「Stop the Steal」というグループでは、バイデン氏が勝利した場合の「政府転覆」に関する発言が公然と行われていたとTTPは指摘。

「FLORIDA PATRIOTS」というグループでは、「選挙当日に極左グループのANTIFAやBLM運動の支持者らが暴動を計画しているため、武器を取って警察官を支援しよう」と主張するメッセージが画像付きで投稿されました。画像には極右グループのプラウド・ボーイズ(左から2番目)やOath Keepers(左から4番目)、Three Percenters(左から5番目)のロゴが入っています。



◆選挙後の活動

大統領選挙でバイデン氏が勝利したと報じられると、Facebookグループにおけるトランプ支持者や民兵グループの暴力的な発言がさらに増加しました。たとえばフロリダの民兵グループである「Eagle Team 1 LLC」の管理者は政府の解体を頻繁に訴え、「ワシントンD.C.の政治家は私たちの国と民主主義にとって、外国の軍隊よりも大きな脅威です」と投稿。また、「Take America Back」という別のグループでは選挙結果が出た後に、「起こり得る『Severe Controversy(深刻な論争)』の間に命・自由・財産を守る」という名目で民兵の採用活動を強化しました。

「Patriot Riders」というFacebookグループのあるメンバーは、「全ての脅威から身を守るため」として地元でチームを組織するように訴えたほか、「政府修理キット」として絞首台と縄の画像を投稿しました。



また、11月17日に作成された「WE THE PEOPLE」というFacebookグループでは、参加希望者に対し「あなたは私たちの自由・権利・アメリカ合衆国憲法を支持していますか?そして国のために戦い、国のために死ぬかもしれないことをいといませんか?」という誓いの質問を行っていたとのこと。



「Take America Back. California Chapter」というグループでは、ナチス・ドイツに関連付けられることが多いフラクトゥールというフォントを使い、「Operation Occupy The Capitol(議事堂占拠作戦)」と記した画像が投稿されました。これ以外にも議事堂の占拠を呼びかける画像は、Facebookグループ上で複数投稿されていたとTTPは指摘。その後も民兵や過激派のグループは2021年1月6日の議事堂占拠についての会話を行い、「Mouthy Patriots」というグループでは「極右グループのOath Keepersが参加者を守るためにワシントンD.C.に配備される」という内容が投稿されたとのこと。



◆バイデン氏の大統領就任式に関する投稿

TTPはFacebookについて、「2020年1月6日以降も暴動についての議論を許可し続けており、そこから利益を得ています」と指摘。1月13日には「Facebookがプラットフォーム上で民兵や極右グループに従事するユーザーに対し、武器の付属品や軍用装備の広告を表示している」と報じられたことを受け、Facebookは一時的に軍用品の広告表示を停止しました。

Facebook上では依然としてトランプ支持者らによる暴動をアメリカ独立戦争と同一視したり、新たな民兵グループを組織しようとしたりする投稿が行われているとのこと。また、バイデン氏の大統領就任式が行われる1月20日の12時(日本時間の1月21日午前2時)に暴力を呼びかける投稿もあり、中には就任式を六四天安門事件と重ね合わせるものもあったそうです。この問題についてCNNがFacebookに問い合わせたところ、Facebookは問題のあるグループや天安門広場について言及した投稿を削除しました。

TTPは、Facebookグループにおける会話によって連邦議会議事堂の襲撃が組織化されただけでなく、過去1年間にわたってFacebookは選挙に関する陰謀論や過激な発言を抑えることに失敗し、危険な行動に走る人々を増加させたとしてFacebookを強く非難しました。