排卵は妊娠のためには必要なものだけれど、妊娠を希望していないときにはからだに大きな負担を課すものだったのです。

◆増えすぎた排卵を“休憩”するメリット

 現在、子宮筋腫は4人に1人、子宮内膜症は10人に1人、月経前症候群は2人に1人と、婦人科系の病気に悩む人は少なくありません。なかでも、子宮内膜症はこの40年で30倍に増加。

「これらの病気は女性ホルモンが関与しており、排卵回数が多ければ多いほどリスクが高くなります。ピルは排卵が休憩できるので、もちろん避妊効果もありますが、増えすぎた排卵を休憩することで生理痛や過多月経、子宮内膜症、PMS(月経前症候群)、月経不順を改善したり、卵巣癌や子宮体癌などの悪性腫瘍のリスクを低下させたり、ニキビや肌荒れの改善にも効果がある、など様々な報告がされています」と深沢先生は指摘します。

◆ピルの服用と体重増加に因果関係はない

 避妊だけでなく、将来の婦人科系の病気や不妊症への予防になるとは、いいことだらけ。でも、副作用が気になります……。

「服用をはじめてすぐ、不正出血や吐き気を覚える人が10人に1人位います。しかし、内服時間を調整したり、吐き気止めの薬と併用するなど対策はありますし、服用継続と共に次第にこれらの症状はなくなります。

 ピルの服用で体重増加を心配される方もいますが、ピル服用者とプラセボまたはピルを服用していない人を比べた研究でもピルの服用と体重増加に因果関係はないというエビデンスがあります。

 また、ピルの特に有名な副作用が静脈血栓塞栓症VTEですが、発症頻度は1万人に3〜9人(*2)。仮にVTEが発症しても適切な治療を行えばほとんどの血栓は消失しますので、血栓によって重篤な肺塞栓症などを引き起こすまでに至るのは10万人に1人以下です。

 あまり過剰に副作用だけに注目するのではなく、服用しないことによって得られないメリットも天秤にかけて考えるべき。ただし副作用ゼロの薬はありませんから、まずは服用できる状態かどうか婦人科で診察し、定期的なチェックをお勧めします。また、ピルにはたくさん種類があり、それぞれ少しずつ効果効能が違います。症状や服用目的によって、自分にあった最適なピルを婦人科で選んでもらうといいでしょう」

◆ピルは自分でコントロールできる確実な避妊方法

 では、服用するときに注意すべきことはあるのでしょうか。

「飲み忘れを心配する方が多いのですが、2日以上忘れてしまうと避妊効果は落ちます。そのときはちゃんとコンドームをする。妊娠が怖いようであれば、服用を再開して1週間過ぎるまでセックスはしないことですね
 生理痛や子宮内膜症の治療のために服用している場合、多少飲み忘れたところでその効果がなくなることはありません。ただし飲み忘れは不正出血の原因になるので注意してください」

 ピルの普及率は、アメリカで20〜30%あり、ヨーロッパではなんと40%の国もあるそう!(*3)一方、日本はというと現在5%前後。先進国の中では圧倒的に低い数値。10数年前はたった2%だったことを考えると、徐々にだけれど広がってはいるよう。

「若い女性の間では避妊のためだけではなく生理痛やPMS、ニキビの治療に飲み始める人が増えています。情報が何もなく知らなくて服用しない、服用できなかったというのと、情報はあるけど選択しなかったというのは違います。女性自身がコントロールできる確実な避妊方法としてのピル、だけでなく、婦人科系の病気の治療薬としてのピルもある、ということを知ってほしいと思います」

 避妊だけでなくさまざまな病気の予防も、自分が主体的に選べるのがピル。自分のからだと将来のことを考えて、選んでいきたいですよね。

(*1)Hatcher RA et al.:Contraceptive Technology:Twentieth Revised Edition. New York:Ardent Media,779-861(2011)
(*2)低用量ピルの副作用について心配しておられる女性へ(平成25年12月 日本産婦人科学会)
(*3)避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)

<深沢瞳子 取材・文/鈴木靖子>【深沢 瞳子】
産婦人科医。赤羽駅前女性クリニック院長。女性のためのトータルケアホスピタルとして気軽に相談できる存在を目指しており、特に生理痛やPMSや月経不順といった生理に関連する諸症状の解決に力を入れている。