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不倫相手に子どもを認知してもらいたいーー。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられています。

相談者はW不倫をしており、不倫相手の子を妊娠・出産しました。子どもは現在8カ月。戸籍上の父親は「夫」となっています。しかし、相談者夫婦は以前から仲が悪く、出産後は別居しています。離婚に向けた話し合いは、これから進めるとのことです。

ところが、不倫相手の男性は認知を拒否しているそうです。相談者が知っているのは、相手男性が以前働いていた会社と卒業した大学名のみ。相手男性とは電話とメールはしていますが、現在勤務している会社や住所は教えてもらえていません。

相談者は「苦悩する日々が続きましたが、子どもと前向きに生きていくために、すべてのことをきちっとさせたい」といいます。

不倫相手に認知を求めることはできるのでしょうか。増田勝洋弁護士の解説をお届けします。

● 「嫡出否認」か「親子関係不存在確認」

ーー不倫相手に認知を求めるには、どうすればよいのでしょうか。

どのような事情があれ、婚姻中に生まれた子どもは法律上、「現在の夫の子」と推定されます。これを「嫡出推定」といいます。子どもの戸籍の父親欄は「夫」と記載され、この状態では、不倫相手が認知することはできません。

そこでまず、夫と子どもの「父子関係」を否定する手続きをとる必要があります。

その手続きは(1)出生後1年以内に夫から「嫡出否認」の調停または裁判をしてもらう方法、(2)妻や子から「親子関係不存在確認」の調停または訴訟を提起する方法、の2通りあります。親子関係不存在確認は、嫡出否認(出生後1年以内)とは異なり、いつでも提訴できます。

嫡出否認が確定すると、子どもの戸籍が訂正されて、父親欄が空欄となります。その後、実父(不倫相手)から認知してもらうことになります。

実父が任意に認知しなければ、「認知請求」の調停を申し立てる必要があります。調停で合意しなければ、家庭裁判所に提訴することになります。

●相手の住所あるいは居所が分からない場合は?

ーー相談者は、不倫相手の現在の住所が分からないようです。このような場合、どうすればよいのでしょうか。

認知請求の調停を申し立てるためには、手続の呼出状等が相手に届く必要があります。そのため、不倫相手の住所あるいは居所を特定しないといけません。

不倫相手とは携帯電話での通話とメールができるということなので、認知請求事件を弁護士に依頼し、その弁護士を通じ、携帯電話会社に弁護士会照会をかけて契約者の住所・氏名を問い合わせてみたらいかがでしょうか。

弁護士会照会とは、弁護士法第23条の2で定められた制度です。弁護士が受任した事件について、資料の収集や事実の調査のために、行政機関のほか、固定電話や携帯電話の通信会社などに対し、弁護士会を通じて照会することができます。

弁護士ドットコムライフ)

【取材協力弁護士
増田 勝洋(ますだ・かつひろ)弁護士
大阪弁護士会、司法委員会。著書:『事例にみる遺言の効力』(共著、執筆担当)
事務所名:増田法律事務所
事務所URL:http://www.masuda-law.net/