【大谷和利のテクノロジーコラム】

2021年1月18日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

AirPods Maxを購入して以来、筆者は音楽のリスニングや深夜の映画鑑賞、オンラインミーティングの際に、そればかりを使い続けている。昨年末からの自粛生活で、自宅を離れて利用する機会はまだないが、出張仕事が復活すれば、外にも持って出かけるだろう。その間にもAirPods Maxに感じる魅力は増しているが、僅かながら欠点もあることがわかった。また、本来の機能とは別に、この製品ならではファッション的な楽しみ方も見えてきた。そのあたりを記していこう。

▷ 音に包み込まれる感覚と自然な外部音取り込み最初にお断りしておくが、音楽に関して、筆者は極めてカジュアルなリスナーである。音楽と対峙するようなことはないものの、曲を聴いたり映画を観ると決めた時間帯は、他のことをせず、なるべくそれに集中したいほうだ。

 

たとえば、図版作成などの際には軽くBGMを流したりもするが、原稿執筆中は、たとえ歌詞のないインストルメンタルな楽曲でも気が散るため、一切の音楽をかけないようにしている。

 

また、道路や建築工事の音などは、騒音レベルでなければノイズとして無視できるものの、移動中の新幹線内などで執筆する際には乗客の声や会話が気になってしまう。そこで、例外的にイヤフォンで音楽を流しておくことはある。

 

要は、1つのことに集中できる環境を選んでいるわけで、自分自身はマルチタスクではないといえるだろう。今回は、そのような筆者が、AirPods Maxに感じた魅力と、僅かに存在する欠点、そして、これから流行りそうな(?)オプション活用法についてまとめてみた。

 

前回も書いたが、AirPods Maxの音質については、すでに多くのレビューが出ており、また当然ながら個人差もある。それなりの価格帯の商品である以上、「百聞は一見にしかず」ならぬ「百読は一聴にしかず」。もし、Apple Storeなどのデモ機を置いているところの近くにお住まいなら、そこで視聴して判断することが一番といえる。

 

個人的にはクセのない自然な音場と、インイヤーでもオンイヤーでもなく、完全に左右の耳を覆うオーバーイヤータイプの構造とコンピューテーショナル・オーディオの組み合わせならではの、音に包み込まれるような感覚に魅了された。

 

また、過去にノイズキャンセル機能を内蔵したイヤフォンをいくつか利用していたが、それらはその機能をオンにしたときに非再生状態でわずかに「サー」というホワイトノイズが聴こえるものだった。一方、AirPods Maxではそれが発生しているとしても気にならないほど低く抑えられている。たとえば、先の新幹線内の例でいえば、音楽を再生することなく遮音のためだけに使えるレベルといってよい。

 

さらに、ボタン1つで瞬時に切り替えられる外部音の取り込みモードとのスイッチングもスムーズで、ノイズキャンセルが効いても耳に圧を感じることなく、それをオフにしたときの外部音が、まるでヘッドフォンを付けていないかのようにクリアに明確な定位をもって聴こえることも気に入っている。

▷ 空間オーディオは純正デバイスのさらなる普及へのトロイの木馬?
AirPods Maxは、同Pro同様に空間オーディオ(5.1ch/7.1chのサラウンドフォーマット、もしくはDolby Atmos規格に対応した音源による立体サラウンド+ダイナミック・ヘッドトラッキング)に対応しているが、やはりオーバーイヤー型であるだけに、没入感はこちらのほうが優れている。

 

対応する映画を観ているときに、特に感じるのは、場面の中心となっている人物などの周囲を取り巻く環境音のリアルさだ。人の気配やドアの軋みなど、画面の中の世界の音だとわかっていながら、実際の部屋の中を見回してしまうこともあり、思わず苦笑することもしばしばである。

 

空間オーディオに対応した動画配信サービスは、当初、Apple TV+のみだったが、その後、Disney+、Hulu、HBO Maxでもサポートされ、Netflixも限定的ながらこの春には対応を発表する見込みという。

 

ただし、顔の向きによらず再生デバイスの位置から音が聴こえてくるダイナミック・ヘッドトラッキングは、現状、どのサービスであっても、iOS/iPadOS 14以降がインストールされた特定のiPhoneまたはiPadのみでしか機能しない。現行のApple TV HD/4Kは対応機種ではないので、せっかく大画面テレビに接続していてもダイナミック・ヘッドトラッキングされない点は残念だ。

 

もちろん、次世代Apple TVでは対応してくるものと思われ、空間オーディオのメリットと純正デバイスの機能を結びつけたエコシステムを一層強化することになるだろう。コンテンツのみならず、その再生環境の革新によってユーザーの囲い込みを行う戦略は、Appleならではといえる。

▷ マイクの音質も魅力! オンラインミーティングでの利用筆者もリモートミーティングの機会が増えているが、その際にAirPods Maxを使うようになって、相手から「聞こえてくる声の音が良い」といわれることがある。これまでも、iPhone 12 Pro Maxから接続することで画質が良いといわれたことはあったが、音質に関しての感想は初めてだ。

 

それなりの独立したマイクを使っても音質は改善されるわけだが、自分では関知しにくい部分なので、この指摘はちょっと嬉しく感じた。

 

ノイズキャンセル機能をオンにしてミーティングに参加することで、より議事に集中でき、相手に対する声の通りもよくなるため、これからもAirPods Maxを利用する機会はますます増えていくことだろう。

▷ イヤークッションで楽しむ(予定の)ツートーンカラー
ちなみに、筆者のAirPods Maxのカラーはスペースグレーで、これはある意図を持って選択した。現時点ではApple Storeアプリでも「まもなく登場」のままなので、注文できない状況なのだが、磁力脱着式の専用イヤークッションが追加購入できるようになったら、たとえばレッドなど、本体色とのコントラストが生まれるカラーを選び、気分やTPOで使い分けることを考えている。そのために、本体色は最も地味な(?)ものに留めておいたのである。

おそらくAppleとしては、このような楽しみ方も想定済みで、本体の需要が落ち着けば、そうしたCMも打ってくるのではないかと密かに思っている。

最後に、些細な欠点に触れておくと、AirPods Maxを自分の頭にアジャストした状態では、イヤーカップをスマートカバーに入るように畳んだときに、カップ同士の金属部分が接触してしまうことが挙げられる。調整用のアームを縮めれば接触しなくなるが、取り出して装着するたびに合わせるのも煩雑で、そのまま収納するようにしているため、長期の利用では接触部分の表面に傷などが付く可能性がある。

また、アームが伸びていると、スマートカバーに設けられた本体充電用の窪みの位置が、Lightningポートと僅かにずれてしまう。筆者は、ケーブル脱着を簡便化するために、サードパーティ製のマグネット接続アダプタを利用しているため、このズレが余計に気になってしまう。



ともあれ、これらは欠点といっても些細なものであり、AirPods Max全体の魅力を損ねるものではない。筆者にとっては、価格分の価値のあるアクセサリとして、長い付き合いになりそうだ。

[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。

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