1月8日、新型コロナウイルスの感染者が新たに2392人報告されたと東京都は発表。2度目の緊急事態宣言も発令された。

実際にかかっている人はいるだろうが、新型コロナが発症したことがわかると、多方向に迷惑がかかると、内緒にしていると語る人は多い。また「周囲の反応が怖い」とPCR検査を拒否する人がいることも報道されている。

ここでは新型コロナウィルスに感染し、発症した島田百々子さん(仮名・40歳・フリーランスPR)に、お話を伺った。

【前回の内容はこちら】

前回は、都内の総合病院に入院しているときに、電話の通話が認められている個室で「新型コロナにかかったらどうなるか」を伺った。現在は退院し、仕事復帰を果たした。今回は「病院では話せなかったこと」と、退院までに何をしていたかを中心にお話を伺ってみた。

悪化した原因は、長期の喫煙歴と潜在的な糖尿病

百々子さんは、2020年12月26日に発熱。39℃の熱が出て、28日には40℃になり、30日に自ら119番をして大病院に救急搬送される。31日にレムデシビル(抗ウイルス薬)とデカドロン(ステロイド製剤)の併用治療を行ったという。

「容体が落ち着いたら病院からホテル療養になると思っていましたが違いました。実際は厚生労働省の定める退院基準を3日間満たしたら、治癒証明が出されて退院になるんです。基準とは酸素量、排便、36度台の熱が3日間続くことなどでした。退院時にPCR検査はありませんでした」

百々子さんは、結局15日の入院期間を経て退院した。

「今回は、病院では話せなかったことを話します。というのも、個室とはいえ看護師さんが近くにいるし、私自身もものすごくつらかったので、話せなかったことがあったので」

最もつらかったのは、「サイトカインストーム」といわれる現象だという。

「これはあくまで医学の知識が全くない私の体験談ですが、ざっくり話しますね。レムデシビルとデカドロンの併用治療をしてから、4日目にサイトカインストームが起こりました。これは、自分の細胞が、自分の体を傷つけていくような現象で、過剰な炎症が起こり、最悪、多臓器不全に陥ってしまうこともあります。

これを止める薬があるのですが、コロナは未知のウィルスすぎて、タイミングや量を見極めるのは難しいようなんです。

私は、自分の状態がどんどん悪くなっていくのを自覚し、自分でネットで検索して、海外の論文を読んでサイトカインストームのことを知りました。“もしかしたら、これが起こっているから? もう死ぬかも”と何度も思ってしまい……。そして、担当医の方に“別の治療法はありませんか? 苦しいです”と伝えて、サイトカインストームを止める薬を処方してもらい、そこから2日くらいで楽になりました」

百々子さんは40歳とまだ若く、新型コロナの重症化リスクが低いとされる女性。なぜ、そこまで悪化してしまったのだろうか?

「私は両親が糖尿病で、潜在的にリスクがあったんです。今は細身ですが、中学生の時は、身長160cmで体重が80キロ近くあった肥満体型だったんです。ワインをはじめとするアルコールを毎晩のように摂取しており、健康診断では高血圧(上178/下118)を指摘されていました。あと、隠れヘビースモーカーだったんです。家では紙巻きたばこを吸っていて、外では電子タバコを吸っていました」

銘柄を聞くと、かなり“重い”とされているタバコを、20歳のときから20年間吸い続けていたという。

自分の状況を医師と看護師に伝えることが大切だった

熱で目の焦点が合わなくても、検索を続ける

見た目ではわからないが、百々子さんは、実は高いリスクがあったのだ。

「ただ、そういうことは最初から聞かれないし、他にも多くの患者さんがいるので、“察してほしい”という姿勢のままでいると、解熱剤をもらって経過観察になってしまうと感じたんです。

私は絶対に生きてこの病院を出たかった。治療は想像の100倍くらい苦しかったですが、絶対に死にたくないと思ったんです。

熱で目の焦点が合わなくなっても“死んでたまるか”という一心で、有益な情報を検索していました。でも、ネットの情報は玉石混交なんですよ。日本人で、女性で、私のような体験をしている人の情報が表に出ていなくて、自分で調べながら、お医者さんに相談していました」

でも、絶対に誤解してほしくないことがあるという。

「医師も看護師の方も、マスクや防護服を着ていてもわかるくらい、いつも笑顔で、全力で救命してくれます。これはホントにそうなんです。涙が出るくらい尊いです。でも、あまりに未知のウィルスすぎて、治療法が確立されていない。みんなが手探りだということがわかりました。だから、患者自らが自分の状況を伝えて、“ここがこう苦しいから、対応策はありませんか”と伝えることが大切なのではと思いました」

特に看護師さんはいつも笑顔で接してくれたという。「生きたい」と思っても、肺の状況は悪くなる。

「入院で驚いたのはレントゲン機器が超コンパクトになっていることでした。可動式で、B4サイズくらいの電子パネルみたいなものを抱いて、写真を撮る。3日に1回程度でしたけれど、撮影するたびに自分も肺の状態が悪くなっていて、“これはヤバイ”と思いました」

新型コロナ患者は隔離病棟で入院生活を送る。1日のスケジュールが壁に貼られており、このような1日を送るという。(本人提供)

※本原稿はプライバシーに配慮し、一部内容を変えています。また、本稿は、あくまで個人の体験内容を取材したものです。

15日間の入院、どんな入院生活だったのか〜その2〜に続きます。