「奴隷ではない」離職という介護職員の反乱…老人ホームの実態

写真拡大 (全2枚)

もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

介護職員が辞める本当の理由を知ろう

現在、事業者をはじめとする多くの関係者が、介護保険事業は「サービス業」であると言っていますが、本当に今の状態で、商売というくくりで区分してしまっていいのでしょうか? 私が理解をしているサービス業とは、相手のためによかれと考え努力を惜しまない行動、そしてそのような努力の結果が必ず成果をもたらし、最終的には売上や利益をもたらしてくれるというものです。

つまり、相手のことを真剣に考え、愚直に行動すれば企業の売上は増えていく可能性が高いし、それがわかっているから努力もするし、考えることもしなければならないということです。

しかし、今の介護保険制度では、このような努力をすると売上が下がってしまうという事実にぶち当たります。つまり、現行の介護保険制度の中で売上を増やすには、入居者の状態を少しでも悪くした上で、悪い状態を長く維持していくことになります。

介護保険事業はボランティアでも社会貢献でもなく、収益事業である。(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの事業者は、そのような行動をとってはいません。経営者自ら、入居者の介護度を改善させなさいと言っている企業も少なくありません。その結果待っているものは老人ホームの売上の低下なのです。

私も、老人ホーム事業者に対するセミナーでは、老人ホームの場合は入居者の要介護度バランスが重要だと話をしています。つまり、全入居者の中に占める要介護5の入居者は何%がいいのか?という話です。そして、一番収益状態がよい入居者バランスをゴールデンバランスと称して、そのゴールデンバランスを目指してホーム入居者の要介護度を揃えていく努力をしなければならない、と論じています。

なぜなら、実態から考えた場合、介護保険事業はボランティアでも社会貢献でもなく、単なる収益事業だからです。

そろそろ、介護保険事業の在り方について再検討をしなければならないタイミングにきているのではないでしょうか。このことを詳しく論じることは、本書の目的から逸脱しますので、多くを語ることはできませんが、私は、今の介護保険事業をビジネスとして健全に発展させていくのであれば、介護保険報酬を大幅に引き下げて、その代わり介護に対する料金を事業者が自由に設定できるようにするべきだと思います。

当然、これを断行すれば、今のような比較的低料金で老人ホームに入居することが不可能になり、多くの介護難民が出現すると考えます。だとすれば、介護保険事業をビジネスとして発展させること自体に無理があるのではないかと思っています。

理想に燃えて介護職員になったが…

話を職員の問題に戻します。今の介護職員がいないという現状は、“我々は奴隷ではない”という介護職員の反乱だと思っています。

小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)

理想に燃えて介護職員になった者も存在していますが、彼らの理想は、現実にいきなり身を置くことで、いとも簡単に崩れてしまい、その結果、退職となっていきます。老人ホームの運営事業者が、理想だけではなく現実についても入職時にしっかりと教育をしておけば、介護職員の心構えに少しは余裕ができ、思考を止めずに仕事を継続していくことができるはずです。

介護保険事業で介護職員が辞める本当の理由。それは、介護職員がやりたい介護ができない環境で強制労働をさせられているからにほかなりません。ちなみに、やりたい介護とは、自身が学び、よかれと考えている介護です。

私は、それを「流派」と呼んでいるのです。そして、その「流派」は、ホームの運営に生かすべきものなのに、実際はホームとの対立軸になってしまっています。ここが問題だと、私は考えています。人は誰しも、自分のやりたいことや自分が考えている正しいことと自分の仕事が合致していれば、仕事に対するストレスはなくなるはずです。

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役