元日本代表FW前田遼一

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【取材のウラ側 現場ノート】サッカー元日本代表FW前田遼一(39)が現役を引退するというニュースを聞き、時の流れの速さを感じずにはいられなかった。2000年に磐田入りしてからは、黄金期を支えた中山雅史、藤田俊哉、名波浩、福西崇史らそうそうたる面々に囲まれてタイトル獲得に貢献し、15年にはFC東京、19年からは岐阜でプレー。しなやかな動きから華麗なゴールを決めたかと思ったら、強引なミドルシュートや激しい当たりの空中戦からのヘディングシュートなど、多彩な得点パターンを持つストライカーだった。

 ただ、前田は記者泣かせの選手でもあった。「人見知りなんです」と公言していたように、取材エリアではなかなか口を開いてくれない。磐田の担当記者ならまだしも、そうでない記者はコメントを取ることさえ困難だった。

 そんな前田の態度が変わった瞬間に出くわしたことがあった。10年に就任したザッケローニ監督から1トップとして厚い信頼を受け、そんな中で迎えた11年6月のキリン杯。エースという立場でありながら、相変わらず口数は少ない選手あった。だが取材の輪が広がらなかったこともあって、私は幸運にも単独で話を聞くチャンスができた。

 当時は初戦のペルー戦が終わり、最終戦のチェコ戦の前。何を聞こうか迷っていたが、チェコに世界的GKペトル・チェフがいたこともあって「相手にはすごい守護神がいるんだけど…」と切り出すと、前田は目の色を変えて話し始めた。

「チェフですよ。あんなすごいGKと試合ができるなんて、こんなチャンスないですよね。よくテレビでも見る選手なので、どんなGKなのか試合で感じてみたいですよ」

 後で知ったが、前田は意外にも海外サッカー通。こうした話を普段聞かれることがなかったためなのか、待ってましたといわんばかりに、2人で当時チェルシーに所属していたチェフのプレミアリーグの話題で盛り上がった。最後には「チェフがすごいGKなのはわかっているけど、ゴールまでの道筋は見えているんです。それを証明したい」と控えめな前田にしては狡橋気瓩離灰瓮鵐箸把めた。

 結局、チェコ戦で前田の出番はなかったが、結果が全てと言われるストライカーの神髄、そして世界で自分の力がどのくらいなのか試してみたいという気概は見えた。今後は指導者の道に進むというが、世界で通用するストライカーを育ててほしい。

(サッカー担当・瀬谷 宏)