長嶋茂雄に対して異常な闘志を燃やす村山実=1970年8月撮影

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 巨人におんぶにだっこのセ5球団の中で一番罪が重いのは阪神タイガースだ。その凋落ぶりは目を覆うばかり。全国区人気では巨人に次いで2位だったのに、今や広島カープの後塵を拝している。

 「社会的現象になった一時期のカープ女子旋風は収まったが、赤ヘルのビジター人気は、巨人や阪神をしのぐ。リーグ3連覇しても、日本一には84年の古葉監督以来、手が届かない。その上、2年連続Bクラス。それでも一度全国区になったカープ人気は侮れない」

 こうセリーグの某球団営業担当者は舌を巻く。

 対照的に、巨人、阪神のかつての全国区人気の凋落ぶりが酷い。阪神の場合は、巨人人気にぶら下がるだけで、自助努力をしないからだ。

 巨人・長嶋終身名誉監督は、未だに「語りつがれてきた巨人対阪神の伝統の一戦は特別だ」と言い切る。「東西対決、巨人と阪神が優勝争いをすることが、プロ野球人気を盛り上げる最善の策だ」

 そして、自らの現役時代の伝統の一戦を熱く語る。が、これは長嶋対村山をはじめ、王対江夏、江川対掛布などの名勝負があったからこそだ。今の巨人対阪神戦にはファンを熱狂させる看板対決はない。

 その最大の責任は本社、球団首脳にある。巨人・王からホームランキングのタイトルを奪ってミスター・タイガースと呼ばれた田淵氏の生々しい告白が蘇る。球団史上18年ぶりの2003年の星野阪神優勝後の久万オーナーの対応だ。

 「仙ちゃんが久万オーナーに対し“もう1年間だけ補強費を惜しまずに出してくれたら、毎年優勝争いをできる常勝チームができます”と確約した。それなのに、耳を貸さなかったから、仙ちゃんは怒って辞めたんだ。久万オーナーにすれば、18年ぶりの優勝に大満足。次もそのくらい後に勝てばいいと思ったんだろう。毎年勝たれたら、選手の年俸が高騰するからね。球団は健康問題を辞任の理由にあげたが、そうじゃない。確かに健康問題はあったが、あと1年くらい監督をやれる体力は十分にあったよ」

 そして、「ブチ、阪神ファンのために後はお前が監督をやれ。“一度は田淵監督の姿を見てみたい”と熱望しているんだから。オレが責任を持って田淵新監督を誕生させるよ」と星野監督は強く迫ったという。

 が、田淵コーチは「仙ちゃんが辞めるんなら、オレも一緒に辞めるよ」と、星野監督と共に辞任したという。これが阪神タイガース球団のトップの実態なのだ。そして、村山対吉田、田淵対江夏など看板選手の対立を繰り返すのは、本社首脳のタニマチ感覚にあるという。

 「本社の阪神電鉄は中小の私鉄にすぎない。が、阪神の主力選手をお座敷などに連れて行くと、相手は大喜びする。だから本社のお偉方はそれぞれひいきの選手を作り、連れて行く。その悪影響で主力選手たちの仲がおかしくなり、対立、衝突したりする」

 事情通の球界関係者からこう聞かされた時は唖然茫然とした。さらに、驚いたのは、阪神本社、球団首脳などは阪急電鉄沿線に住んでいると聞いたときだ。しかも、その理由に仰天。

 「阪神電車は庶民的な路線だし、阪急電車の沿線は高級住宅が多いですからね」ときたからだ。「愛社精神はないのか」と、思わず耳を疑ったものだ。現在は阪急がプロ野球から撤退、本社は阪急・阪神ホールディングスになっている。先見の明があったというべきなのか。

 本社のイニシアチブを握る阪急は「阪神タイガース球団は、これまで通り阪神にすべてお任せします」と高らかに宣言。猛虎ファンを刺激しないように球団とは完全に一線を引いている。

 「阪急は金貸しのオリックスなんかに球団を売るなんて、とんでもない」と、プロ野球ファンからバッシングが起こった過去がある。阪急とすれば、触らぬ神に祟りなしの心境なのだろう。

 現状維持のままでは阪神タイガーズの改革は全く期待できない。巨人・長嶋終身名誉監督が待望する「伝統の一戦復活」など夢のまた夢に終わるだろう。

(江尻 良文)