「どんな時も笑顔で」という西岡壱誠さん=東京都千代田区

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 年が明け、いよいよ受験シーズンを迎えました。

 16日には大学入学共通テストが始まります。各界で活躍する受験経験者や、さまざまな分野で学びを深めている現役大学生・大学院生たちからの、受験生へのメッセージを随時お届けします。

■東大生作家&社長の西岡壱誠さん

 緊急事態宣言が出たって、前を向いて進むしかない。やるしかない。悩んでも何も変わらない。受験は自分との戦いだから。

 小中学校時代は人間関係を構築するのが苦手で、いじめやいじりを受けていました。学校も楽しくなく、中学では1日6時間ぐらいゲームしてましたね。自分の人生と向き合うことも含めて、すべてから現実逃避していたんだと思います。

 私立の中高一貫校に算数1科目の入試で入ったんですが、中2の三者面談で「今のままでは高校には上げられない」と、数時間にわたり説教されました。僕には勉強が「作業」になっていたんです。授業中も先生が黒板に書いたものを丸写しするだけ。提出物も答えをそのまま写して出す。「机に向かっているし、言われたことはやっています」と言い続けましたが、気持ちは入っていませんでした。

 中3の担任が音楽の先生で向き合ってくれて、高校1年でペットボトルホルダーをグルグル回して友達にケガをさせた時に、「お前このままでいいのか。変わろうと思わないの?」と言ってくれました。

 幼稚園の時はまだ、なりたい自分、やりたい自分がいた。でも、小中学校になったら、「どうせなれません」という1本の線が僕の回りを囲んで、それがどんどん近づいてきた。でも、先生は「その線を超えたら見えてくる世界は変わる。勉強は頑張っただけついてくる。お前、東大へ行け!」って言ったんです。「えっ、俺、学年ビリに近いんですよ」って。

 その先生に半分だまされたように、高2からガーッと勉強して、生徒会長も立候補が1人だったからなっちゃったんです。ところが、何かしようとしてもうまく行かなくて……。何かを変えるって難しいと痛感しました。高3の最初の模試は偏差値35。英語の偏差値は27でした。現役でも1浪でも東大は落ちて、崖っぷちの状況で考えた「思考法」で、偏差値70に。東大模試で4位になり、2浪で合格を果たしました。

 もちろん、1浪の時、東大1本で挑んで不合格だった時は、かなり参りましたよ。でも、東大をあきらめた周囲の友達から「西岡は私の分まで頑張って」と、たすきを渡された。かつての自分のように「俺にはできない。無理」という線の中には、もういたくなかった。線を壊して、自分を変えて、夢に向かって走り出すのが目標でした。

 僕は、受験ってスポーツだと思うんです。中島みゆきの歌「ファイト」が好きなんですけど、土俵に立ってちゃんと戦うのが受験。途中でラケットを置くのも失礼だし、きちんと最後まで戦って、負ける時もきちんと負ける。本気で挑んだ人は勝とうが負けようが、得られるものはある。

 僕の場合も、前を向いて、目標に向かって本気で戦う時期があったから、今の自分がある。「前はゲームに負けてもヘラヘラしてたけど、今は悔しそうにしているよね」と友達に言われます。やっと自分の人生の物語の主人公になれた。

 2浪して入学した東大はそれほどバラ色の世界ではなかったけれど、僕が得たかったのは「東大合格」ではなく、自分を変えることだったから、絶望や空虚は感じなかった。

 あと、応援してくれる家族の存在をないがしろにしちゃいけない。僕も2浪の時の合格発表前日にやっと、父のありがたみがわかった。「ありがとう」を知っている受験生は強い。ちゃんと戦って、自分の線を乗り越えて、前に進みましょう。(聞き手・宮坂麻子)

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 にしおか・いっせい 1996年生まれ。都内の私立小・中・高校を卒業し、2浪して東大文科二類に合格。経済学部に在籍しつつ、「『考える技術』と『地頭力』がいっきに身につく東大思考」など多数出版。2020年に学習ノウハウを伝える「株式会社カルペ・ディエム」を設立し、代表に。YouTubeチャンネルで「スマホ学園」も運営する。