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はじめに ポルトフィーノがマイナーチェンジ

text&photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)

フェラーリのGTレンジで、フロントに8気筒エンジンを積みリトラクタブル・ハードトップを備える4座オープンモデルが、ポルトフィーノである。

【画像】ポルトフィーノM 従来モデルと比較【ルーフ開閉写真も】 全150枚

デビューから2年を経た2020年9月に進化型となる「ポルトフィーノM」が世界発表され、とうとう日本へ上陸を果たした。


日本上陸したフェラーリ・ポルトフィーノM。フロントバンパー両わきのインテーク形状が変わり、ホイールアーチ前にスリットが入る。    上野和秀

車名に追加された「M」は「Modificata」(モディファイのイタリア語)を意味する。その起源は1971年に登場したレーシングマシンの512Mに始まり、ロードカーでは1994年に送り出されたF512Mや、456M GT、575Mマラネッロに与えられている。

ポルトフィーノMの注目点は、前モデルに比べ20psアップした620psを発揮するエンジン、新開発の8速トランスミッションを採用したこと。

一方でエクステリア・デザインの変更はわずかにとどまるが、子細に見るとかなり手が加えられている。

また、ローマに続き、ポルトフィーノMでも先進運転支援システム(ADAS)が選べるようになったのはニュースといえる。

それでは待望の新型フェラーリの詳細を見ていくことにしよう。

フェラーリ・ポルトフィーノM 外観

デビューから2年目のマイナーチェンジにあたる今回の変更だが、実車を細部まで撮影することができたので、写真とともに確認してみよう。

最も目につくのが、アグレッシブなデザインになったフロントバンパー左右のインテークだ。


ポルトフィーノMのルーフオープン時のリアセクション。ルーフ開閉の様子も撮影することができた。    上野和秀

細かな点では、ホイールアーチ前に設けられたスリットが、優れた空力性能とボディサイドの統一感を高めている。このほかヘッドランプ横のプレスラインが、ノーズまで延ばされた。

ボディサイドのデザインに変更はなく、フロントフェンダー側面のアウトレットや、ドア後部で大きく絞り込まれた躍動的なラインは引き継がれた。ホイールは新デザインを履く。

リアエンドは上半分こそ従来型を受け継ぐが、テールパイプまわりのデザインをフロントと同じモチーフに変更。これは、新型エグゾーストの採用により、サイレンサー(タイコ部分)がなくなったことから、引き締まった凝縮感のあるデザインが実現できたもの。

またリア・アンダーディフューザーは新デザインでスカートと独立した構造とされ、カーボン製に変えることも可能だ。

ボディサイズは、全長×全幅×全高が4594×1938×1318mm。従来型から全長が10mm弱長くなったが、それ以外は変更ない。

フェラーリ・ポルトフィーノM 内装

ポルトフィーノMのインテリアは、従来型のデザインと構成がそのまま受け継がれている。

ダッシュボードは3層で構成され、上のエリア(層)にはインストゥルメント・パネル、空調エアベント、パッセンジャー用ディスプレイを配置し、レザーのトリムが施される。


ポルトフィーノMの前席内装    上野和秀

2層目は水平に伸びるアルミニウムのブレードが標準となる。中央には10.25インチのタッチスクリーン・ディスプレイが配された。

空調の操作部やシートヒーターなどの操作機能はその下のエリアにまとめ、フロアコンソールにはドライブモードのスイッチが配置されることも旧モデルと変わらない。

ステアリングホイールも同じデザインを踏襲するが、シルバーだったスポーク部分がカーボン仕上げに。

また、マネッティーノが5ポジションに増えた点が異なる。

フェラーリ・ポルトフィーノM シャシー

ポルトフィーノMのスペースフレームは、従来型と同様に、要所にアルミニウム鋳造で製作されたコンポーネントとアルミ引抜き材で構成されるものがキャリーオーバーされた。

ポルトフィーノになった段階で、複数の部材を組み合わせて構成されていた部分の一体化を進め、極めて高いシャシー剛性を実現している。


ポルトフィーノMの前・後席内装    上野和秀

サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン、リアはマルチリンク式が引き継がれた。

ここにいつものマグネライド・ダンパーが組み合わされ、走行モードやダイナミック・コントロールシステムに対応し、瞬時に減衰力が最適化される。

ブレーキはフェラーリの定番となったカーボン・セラミック製のベンチレーテッド・ローターが備わる。フロントは390mm径34mm厚、リアは360mm径32mm厚。

このほかブレーキ・ペダルの踏み代を約10%減少させ、ブレーキング時のインプットに対して正確に素早く反応できるようになり、コントロールし易くされたことも見逃せない。

フェラーリ・ポルトフィーノM パワートレイン

「M」に進化して、最大のニュースといえるのがパワーアップと8速ギアボックスの採用だ。

V型8気筒3855ccツインターボは、新しいカムプロファイルとされ、バルブリフト量を増やすことにより最高出力は20psアップ。620psを発揮する。


20psのパワーアップを果たしたV8ツインターボは、ボンネット下に低くマウントされている。    上野和秀

ターボチャージャーには回転数を検知するセンサーが追加され、これによりタービンの最高回転数が5000rpm向上し充填効率が高まっている。

また、ポルトフィーノMでも「ゼロ・ターボラグ」コンセプトを継承し、全回転域で瞬時のスロットル・レスポンスを誇る。

新採用のバリアブル・ブースト・マネジメントにより、ギアに合わせてトルクが調整され、回転が上昇するにつれピックアップを鋭くするという。

新採用の8速ギアボックスはSF90ストラダーレに端を発する新系列で、後輪のデフと一体となったトランスアクスル・レイアウトとなる。

バリアブル・ブースト・マネジメントの採用により1速から7速まではショートレシオで力強い加速感を、8速はハイギアードとされ燃料消費量と排出ガスの抑制を実現した。

また、新たに採用されたクラッチ・ユニットは、20%も小型化されながらトルク伝達量は35%増大している。

フェラーリ・ポルトフィーノM 装備

これまでのフェラーリの運転支援デバイスといえば、パフォーマンスをフルに楽しむためのものだけだった。

しかし世界的に先進運転支援システム(ADAS)は不可欠の装備になり、先のローマに続き、ポルトフィーノMでもオプションで装着が可能となった。


今回の改良で、新たなオプションとして、先進運転支援システム(ADAS)が装着できるように。    上野和秀

ADASはアダプティブ・クルーズ・コントロール、自動緊急ブレーキシステム、レーン逸脱警告、ブラインドスポット・ディレクション、自動ハイビーム、トラフィックサイン・レコグニション、サラウンドビューで構成される。

また、これまで「コンフォート」「スポーツ」「ESC OFF」という3モードだったマネッティーノは、スーパースポーツモデルと同様の「ウェット」と「レース」モードを加えた5ポジションに。

より“フェラーリらしい走り”を楽しめる仕立てとされたことに注目したい。

もちろんE-Diff、F1-Trac、SCM-E Frs、FDEを統括するサイドスリップ・コントロールなどのパフォーマンスを発揮できる高度なデバイスを備えるのは言うまでもない。

フェラーリ・ポルトフィーノM 価格/納車時期

ポルトフィーノMの日本向け標準車両本体価格は、2737万円(税込み)と発表された。

従来型のポルトフィーノに比べ106万円の値上がりとなったが、20psのパワーアップや8速ギアボックスの採用を考えれば妥当といえよう。


ポルトフィーノM ルーフクローズ時のサイドビュー。    上野和秀

気になる納期だが、現時点で1年ほどになるという。

もちろんオーダーが殺到するとその限りではなく、特別なボディカラー、特別装備、あるいはテーラーメイドでオーダーした場合は、製作に時間が必要となるためさらに待つ必要がある。

フェラーリ・ポルトフィーノM スペック

標準車両本体価格:2737万円
全長×全幅×全高:4594×1938(ミラー含め2020mm)×1318mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1545kg(乾燥)
エンジン種類:3855cc V8ツインターボ
最高出力:620ps/5750-7500rpm
最大トルク:77.5kg-m/3000-5750rpm
トランスミッション:8速デュアルクラッチ
0-100km/h加速:3.45秒
0-200km/h加速:9.8秒
最高速度:320km/h
駆動方式:FR
ステアリング:左/右
燃料タンク容量:80L


ポルトフィーノMを紹介するフェラーリ日本法人のフェデリコ・パストレッリ代表取締役社長。    上野和秀