ソフトバンクからの不正持ち出し情報、楽天モバイルの業務に利用した事実確認できず

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 ソフトバンクは、2019年末に同社を退職して楽天モバイルに転職した元社員が、警視庁に不正競争防止法違反の疑いで逮捕されたと発表した。秘密保持契約を結んでいたにも関わらず、ソフトバンクの営業秘密を不正に持ち出していたことが20年2月に判明し、捜査を続けていた。

 元社員はソフトバンクに在籍中、ネットワークの構築に関わる業務に従事していた。不正に持ち出された営業秘密は、4Gと5Gネットワーク用の基地局設備や、基地局同士や基地局と交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報だという。ただ、元社員は顧客の個人情報や通信のヒミツに関わる情報、同社通信サービスの提供先である法人顧客に関する情報へのアクセス権限は保持しておらず、持ち出された営業秘密の中にこれらの情報が一切含まれていないという。

 ソフトバンクの見解では、営業秘密が元社員の楽天モバイルの業務用PC内に保管されており、楽天モバイルが何らかの形で利用している可能性が高いと指摘。今後、事業に利用されることがないよう、営業秘密の利用停止と廃棄などを目的とした民事訴訟を提起する予定だ。また、引き続き捜査当局に全面的に協力し、当該社員への損害賠償請求を含めた措置を視野に入れて、今後の対応を検討していくとしている。

 再発防止に向けては、20年3月から「情報資産管理の再強化(管理ポリシーの厳格化、棚卸しとアクセス権限の再度見直し)」「退職予定者の業務用情報端末によるアクセス権限の停止や利用の制限の強化」「全役員と全社員向けのセキュリティー研修(未受講者は重要情報資産へのアクセス不可)」「業務用OA端末の利用ログ全般を監視するシステムの導入」を順次実施した。

 一方、従業員から逮捕者が出た楽天モバイルは、「従業員の逮捕について」というプレスリリースを1月12日に発表。同社は、社内調査を徹底しており、現時点までに当該従業員が前職で得た営業情報を業務に利用していたという事実が確認されていないと主張した。また、5Gに関する情報もソフトバンクからの発表や各社の報道とは異なり、含まれていないという。引き続き、事態の解明に向け、警察の捜査に全面的に協力していくとともに、厳粛に対処していくとしている。

 楽天モバイルは、17年末に携帯キャリア事業への参入を発表し、準備を進めてきた。逮捕された従業員が入社した20年は、本格的にサービスを開始した年。急ピッチで基地局の整備を進めている段階だ。そんな時期に入社したソフトバンクでネットワークの構築に関わる業務に従事していた元社員が、不正に持ち込んだ情報をどのように扱ったのか、今後の焦点になりそうだ。