昨2020年春のキャンプで原監督(右)、阿部二軍監督(左)と話をする桑田コーチ補佐(C)日刊ゲンダイ

写真拡大 (全2枚)

「驚きました」

菅野「巨人残留」は裏目? 元OB投手2人が挙げる多くの懸念

 開口一番、こう言って目を白黒させたのは、元巨人投手コーチで評論家の高橋善正氏である。12日、巨人から発表された桑田真澄(52)の「投手チーフコーチ補佐」への就任を聞き、

「昨年すでに今季の組閣が発表されていた。春季キャンプが始まるまで3週間を切っているという時期が時期だし、退団後15年も経過しての就任もそう。プロ野球での指導者経験がない52歳の登用も、メジャーリーグ経験者の入閣も巨人では初めてのことでしょう。異例ずくめで、仰天しているOBも多いはずです。正直に言えば、桑田が巨人で指導者を務めることはもうないものだと思っていましたから」

 と、言うのだ。

■つきまとっていた負のイメージ

 実際、巨人での現役時代に通算173勝、1980年代後半から斎藤雅樹、槙原寛己と並ぶ3本柱のエースに君臨しながら、2006年に巨人を退団して以降、指導者として声がかかることはなかった。実績、知名度は抜群で、何度か巨人監督候補として名前は挙がったものの、浮かんでは消えるの繰り返し。いつしか「万年候補」とすら言われなくなったのには、もちろん理由があった。

 ひとつは、指揮官として球団内で絶大な力を有するようになった原辰徳監督(62)との関係だ。当時を知る関係者に改めて聞くと、「エースと4番の間柄だった現役時代から関係は希薄だった。若大将として野手、投手の区別なく一大派閥をつくった原に対して、桑田は群れるのが嫌いだったからね。そんな2人の関係に決定的なヒビが入ったと言われたのが、例の桑田の退団騒動だよ」とこう続けた。

「(06年に)巨人を退団する際、桑田は一方的に自らのホームページに『お別れ』と題した記事をアップして、『ジャイアンツのユニホームでマウンドに立つのは、おそらく最後になる』と記した。当時の桑田は堀内監督時代の05年に未勝利に終わり、引退が囁かれていた時期。原監督が復帰した06年の4月に600日ぶりの白星を挙げたものの、5月以降は二軍で調整を続けていた。記事をアップしたのは、それから4カ月後の9月、二軍戦登板が予定されていた前日だった。寝耳に水だった原監督は、『信じられない。順番が違う』とカンカン。登板後、桑田が報道陣に『3カ月も4カ月も(二軍で)スタンバイしていたが、(一軍から)声がかからない。戦力に入っていない、と判断した』とホームページでの退団表明を正当化したものだから、球団も問題視してね。現役時代に多額の借金問題、謹慎や罰金騒動などのトラブルがあっただけに、いよいよ巨人内では負のイメージがつきまとうことになってしまった」

「単なるコーチ補佐ではないとみるのが自然」

 それだけに、今回の入閣は球界内でも「仰天人事」と驚かれているのだが、その驚きに拍車をかけたのが桑田コーチ補佐就任を原監督が要望したことだ。昨年末に自ら「非常に気になる後輩がいます」と桑田入閣を山口寿一オーナーに打診、オーナーの了解を得たうえで新年早々の1月5日に直接、桑田本人に就任を要請しているのだ。

 恩讐を越えた背景には日本シリーズでの惨敗があるという。周知の通り、巨人は昨年の日本シリーズでソフトバンクに2年連続の4連敗という屈辱を味わった。悲願の日本一奪回には、根本からチームを立て直す必要があるというのが指揮官と球団の共通認識だ。盛んに訴えているDH制の導入もそうだが、OBの英知を結集して指導体制を改革しなければ、ソフトバンクとの差は埋まらない――。「それくらいの危機感を抱いている」とチーム関係者は言う。

 この日、桑田コーチ補佐就任のリモート会見に同席した原監督も、こう言っていた。

「野球人として、人間力、生きざまに非常に興味がある。彼のすべてを知らないがために逆に興味がある。目的はチームを強くすること。大いに自分を出してもらいたい」

■堀内、高橋由での失敗を反省

 前出の高橋氏が言う。

「単なる、コーチ補佐ではないとみるのが自然。当然、今季で3年契約が切れる原監督の後任候補という含みがあるでしょう。原監督もこの日の会見で、『ジャイアンツをつなげることがとても重要』と言ったと聞く。つまり、伝統の継承です。巨人監督はその有資格者に『生え抜きのエースか4番』という不文律があるゆえ、長嶋茂雄監督が復帰した93年から28年間で長嶋、原辰徳、堀内恒夫、高橋由伸のたった4人しかその座に就いていない。裏を返せば、人材難でもある。堀内、高橋は突然の就任で結果を残せなかった。球団にはその反省もあるでしょう。桑田監督ならインパクトはある。組織の活性化につながるかもしれない。この1年で桑田の適性を判断していくはずです」

 巨人関係者の多くが、「勝っても負けても今季限りで勇退する可能性が高い」と口を揃える原監督の後任には、阿部慎之助二軍監督(41)が本命視されている。しかし、罰走や懲罰といった前近代的な厳しさを前面に出す阿部二軍監督のやり方は、ダルビッシュが疑問を呈するなど、ファンの間でもなにかと物議をかもしている。時期尚早との声も少なくなく、ほかにも松井秀喜(46)や高橋由伸(45)の再登板を推す関係者が巨人内にはいる。そこへ、桑田コーチ補佐の登場だ。 ポスト原はいよいよ混沌としてきた。