戦後初めて無観客で行われた昨年の日本ダービー。コントレイル(左)が無敗で勝利を収めるかに注目が集まり、馬券はネット・電話投票のみながら230億円以上の売り上げを確保した=2020年5月31日、東京競馬場(代表撮影)

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 コロナ禍で影響を受けた各界の現状や今後の展望を探る連載の第5回は「中央競馬」を取り上げる。昨年は2月末から約7カ月半の無観客開催を余儀なくされるなど厳しい環境ながら、売り上げは前年比プラスを記録した。その好況だった背景を探る。(取材構成・漆山貴禎)

◆徹底した感染対策行い7カ月半無観客開催

 コロナの逆風にも負けず、馬券は売れている。昨年のJRA総売り上げは2兆9834億5587万2000円で、対前年比103・5%と9年連続でのプラスを記録。無観客開催となった期間が約7カ月半もあったことを思えば驚異的だ。JRAお客様部・事業統括室の河合政幸専門役(44)も驚いたような口ぶりで振り返る。

 「無観客開催は初めての経験。まさかと言ったら変になるのですが、年間の売り上げが(対前年比)100%を上回るということは全く想定していませんでした」

 当然ながら開催が中止されれば収益はない。そうならないためにも、JRAは徹底したコロナ対策を行ってきた。まずは感染拡大防止のため、昨年は2月29日〜10月4日の競馬を無観客で開催。その後も入場を事前の指定席券当選者に限定するなどの措置を行った。密になりがちなスタンドのゴール前はファンの立ち入り禁止。馬主は来場を自粛、生産者は来場の制限対象となり、現在もGI競走を除いて表彰式は行われていない。さらに、7日の1都3県への緊急事態宣言の発令を受け、9日から中山競馬は再び無観客となり、関東圏のウインズ等場外発売所も馬券発売を休止している。

 もちろん、競馬関係者の感染予防対策も徹底した。昨春は競走馬、騎手の東西間での移動を一部制限し、夏のローカル開催では厩舎地区からの外出に対して門限を設けた。この結果、現在まで騎手、調教師から新型コロナウイルス感染者は出ていない。

◆ステイホームで需要「即PAT」新規加入者90万人

 こうした努力を踏まえて、好調な売り上げを支えた大きな要因はインターネット投票にある。一昨年の全売り上げは電話・ネット投票が約7割で、残りの約3割は現金投票。当初、「この3割をネットでどこまでカバーできるか」(河合氏)が焦点になると思われた。ところが、指定銀行の口座があれば即日で馬券購入が可能な「即PAT」の新規加入者が昨年だけで約90万人にもおよび、ネット投票での売り上げは前年比136・6%と大幅に伸びた。

 また、ステイホームで、娯楽として競馬の需要が増えていることも要因のひとつだ。東京五輪の延期、プロ野球の開幕が6月までずれ込むなど昨年のスポーツ界はコロナ禍の影響を大きく受けた。一方、中央競馬は調教師、騎手などから感染者を出すことなく開催を継続。「競馬は在宅でも気軽にお楽しみいただけるレジャーとしてご認識いただけたと思います」と河合氏は分析する。

◆ファン引き寄せたスターホース3頭の存在

 また、スターホースが多数登場したことも、ファンを引き寄せている。「買っていただける環境があっても、競馬自体に魅力がなければ参加しようとは思っていただけません」と河合氏。アーモンドアイが史上初の芝GI9勝をマークし、3歳戦ではコントレイルとデアリングタクトが牡牝同時に無敗3冠制覇を達成。3頭が対決した11月末のジャパンCは対前年比147・5%と大幅な売り上げ増を記録した。

 中央競馬の売り上げは、コロナ禍と長い戦いを続ける社会を陰から支えている。宝塚記念当日の売り上げから55億円を拠出するなど、JRAは昨年だけで100億円を超える規模のコロナ対策への支援も行ってきた。

◆「競馬続けるため一丸となって努力」JRA河合氏

 年頭、緊急事態宣言の発令を受けて、中山競馬は9日から再び無観客開催に戻った。「競馬を続けていくためにサークル一丸となって努力しています。インターネット投票を中心にという形になるかもしれませんが、競馬を引き続きお楽しみいただきたいと思います」と河合氏は話す。

 たとえ競馬場のスタンドが無人でも、テレビ画面越しに多くのファンが熱い視線を送っている。美しく、力強く駆け抜けるサラブレッドの姿は、コロナ禍の日本に明るい希望をもたらし続ける。

★充実したレース中継

 グリーンチャンネルの実況中継が無料で放映されていることも、売り上げ増に大きく関わっている。前2年のレース番号別の売り上げを比較すると1〜4R、つまり午前中のレースが高い伸び率を示した。後押ししたのは、中央競馬の全レース中継を行うグリーンチャンネルの無料放送。「午前中に関しては無料の競馬中継がない状態でした。今まで購入していなかった午前中のレースにご参加いただいたと考えています」と河合氏。これまで午後のメインレースを中心に馬券を購入していたファン層を取り込むことに成功したといえる。

★ボートレースも売り上げ活況

 他の公営競技では、ボートレースの売り上げも活況を示した。2020年の年間総売り上げは史上5位の1兆9014億8760万2100円で、前年比123・9%。JRAと同じく9年連続のプラスとなった。

 その要因としては、全国に24場が分散し、ナイター開催も多く、コロナ禍以前からインターネット投票が普及していたこと、効果的なCM戦略などが挙げられる。さらにSNSを活用した選手の露出などさまざまなキャンペーンが奏功したともみられる。