福田正博 フットボール原論

■昨シーズンのJリーグで目立った、大卒ルーキーたちの活躍。なかでも三笘薫(川崎フロンターレ)は好結果を収め、多くのサッカーファン、関係者の注目となった。三笘のプレー、特長を詳細に分析した福田正博氏は、彼のプレーをぜひ日本代表で見てみたいという。

 昨シーズンのJ1で印象的だったのは、大卒ルーキーが躍動したことだ。これほど多くのルーキーが、1年目からJ1の舞台で試合に出場したのは、ほとんど記憶にない。


昨季、大卒ルーキーながら、センセーショナルな活躍をした三笘薫

 優勝した川崎フロンターレでは、順天堂大から加入したFW旗手怜央が出場31試合(先発14試合)で1480分プレーして5得点。筑波大から川崎に入ったMF三笘薫は30試合(先発11試合)、プレー時間1603分で13得点と大ブレイクした。

 三笘と同じ筑波大から、北海道コンサドーレ札幌に進んだMF高嶺朋樹は30試合(先発18試合)で1638分プレーし、ボランチとして評価を高めた。日本大から入団したMF金子拓郎も、31試合(先発15試合)で4得点。大阪体育大出身のDF田中駿汰も31試合(先発26試合)2得点と、大卒ルーキー3選手がペトロヴィッチ監督の期待に応えた。

 FC東京では、明治大出身のMF安部柊斗が27試合(先発22試合)で2得点、DF中村帆高が28試合(先発19試合)1得点。法政大出身のMF紺野和也も9試合(先発1試合)に出場した。

 ほかにもG大阪では、関西学院大出身のMF山本悠樹が27試合(先発20試合)2得点。横浜FCでは、明治大出身のMF瀬古樹が33試合(先発24試合)2得点、仙台大出身のMF松尾佑介は20試合(先発17試合)7得点。

 サガン鳥栖では、明治大出身のDF森下龍矢が33試合(先発25試合)3得点でレギュラー格となり、攻撃陣では大阪体育大出身のFW林大地が31試合(先発10試合)9得点と強烈なインパクトを残した。湘南ベルマーレでは、日本大出身のDF舘幸希がシーズン後半で17試合(先発15試合)に出場と来シーズンに向けて頭角を現している。

 名前を挙げればキリがないほど、ルーキーの当たり年だったが、その要因のひとつには新型コロナ禍でリーグが変則開催になったことがあるだろう。過密日程でメンバーを固めて試合に臨むのが難しく、若い選手も出場機会を得やすかった。また、交代枠が5人に拡がったことも若手起用への後押しになった。

 彼らは、与えられたチャンスで結果を出したからこそ出場機会を増やしたのだが、その大卒ルーキーたちのなかでもっとも輝いた選手と言えば三笘薫だ。

 新人最多ゴール記録に並ぶ13得点をマークした得点力と、相手ディフェンスを切り裂くドリブル。この攻撃力は、いま日本代表でいちばん見たいものでもある。

 三笘は、J1で輝きを放ったとはいえ、国際レベルの試合では海のものとも山のものともつかない。守備面に目を向ければ、課題があるのも事実だ。しかし、彼の攻撃力には魅力が詰まっているし、まだまだ伸びしろもある。それだけに、さらなる覚醒のキッカケになればという意味も込めて、日本代表でのプレーを見たいと思う。

 三笘の武器は、ボールを受けてからのドリブル突破だが、彼がサイドで輝いている理由はそれだけではない。ボールをもらう前の動きが秀逸なのだ。

 ドリブルが得意な選手というのは、足元でボールをもらうことが多いが、この場合相手DFは足元に入るプレーだけ意識すればいいので、間合いを詰めて対応しやすい。

 しかし、三笘の場合は足元でボールを受けるだけでなく、DFの裏のスペースへ走って、そこに味方からのパスを引き出すこともできる。これがあるために、DFからすると三笘の足元にボールが入った時に簡単に飛び込めないので、非常に厄介になる。足元に入るボールを狙うと裏を取られ、裏をケアして間合いを開ければ、足元でパスを受けてから仕掛けられてしまう。

 しかも、三笘のドリブルはタテにも突破できるし、中央に切れ込んでいくパターンもある。また、右足アウトサイドを使ってのパスを常に匂わせながらドリブルするため、これもまたDF泣かせだ。そして、シュートへの意識が高いのも、彼の魅力を高めている理由である。

◆三笘薫の「止められなかった」少年時代。相手監督もその才能に脱帽だった>>

 こうした武器を持つ選手が、国際試合でどこまで通用するのか。三笘は昨シーズン、途中交代で起用された時のインパクトはJリーグで最大級だったが、スタメン起用されるとまだ力を存分に発揮できないケースが目についた。そのため日本代表でも、まずは相手DFに疲労の色が見え始めた頃に投入して、どこまでやれるのかを見極めればいいだろう。

 もし通じなかった場合は、そこを超えるために彼がどう取り組んでいくかにも興味がある。三笘は川崎のユース時代、1学年上に三好康児(アントワープ)や板倉滉(フローニンゲン)というズバ抜けた存在がいたこともあってトップチームへの昇格を断り、筑波大に進んだという。大学で試合にコンスタントに出ながら成長を遂げて、川崎に戻ってきた。その彼なら、国際試合での試練をもっとスケールの大きな選手になるためのステップに変えていけるのではないか。

 来シーズン、三笘への注目度はさらに高まっていくだろう。ただ、ほかの大卒ルーキーたちも彼の後塵を拝してばかりではないはずだ。各選手が昨シーズンの経験から見つけた課題と向き合い、さらに成長した姿を見せてくれると楽しみにしている。そして、そこからひとりでも多くの選手が、日本代表のレギュラーメンバーを突き上げる存在になることを期待している。