雪に強く造られている北陸新幹線で、雪のため「かがやき」「はくたか」が運休するという事態が初めて発生しました。新幹線は在来線より雪に強いことが特長で、北陸新幹線も対策が行われていましたが、今回は何が起こったのでしょうか。

初めて雪で運休

 北陸新幹線「かがやき」「はくたか」が大雪の影響で運休するという出来事が、2021年1月9日(土)と10日(日)に発生しました。2015年3月に長野〜金沢間が延伸開業して以来、初めてのことです。

 新幹線は、在来線と比べて「雪に強い」というのも特徴のひとつ。簡単にいえば降雪地帯の新幹線は、線路などが大雪が降っても安全・安定運行できるような構造に、そもそもなっているからです(詳細は後述)。

 それでも、富山県と新潟県で積雪の基準値を超える見込みになり、運休せざるを得なくなった今回の大雪。「雪に強い新幹線」でも想定以上の異常事態だったことが推測されます。


降雪の中を走る北陸新幹線E7系のイメージ(画像:pixta)。

 なお、東海道新幹線の運行が関ヶ原付近で雪の影響を受けやすいのは、東海道新幹線は最初の新幹線路線であり、当初想定していた以上に1964(昭和39)年10月の開業後、雪の影響が現れるなどしたためです。

 これを受けて、東北や上越といった以降の新幹線は先述のように、線路自体がそもそも雪に強い構造にされるなどしました。また東海道新幹線でもその後、散水して雪の舞い上がりを減らすスプリンクラーの改良や新型除雪車の投入といった、その影響を減らす工夫が続けられています。

 また山形新幹線の福島〜新庄間、秋田新幹線の盛岡〜秋田間は、「新幹線」と呼びますが実際は在来線であるため、この記事でいう「新幹線」に含みません。

雪対策で「凸」形になっている北陸新幹線の線路

 今回、北陸新幹線では新潟・富山県境区間にあたる糸魚川〜黒部宇奈月温泉間で大雪に見舞われ、除雪作業を行うため運休になりました。

 北陸新幹線の糸魚川〜黒部宇奈月温泉間にある高架橋は、多くの区間でレール部分だけ高くされており、多くの積雪があっても、レール部分は雪に埋もれにくい構造になっています。「凸」の上にレールがあるイメージでしょうか。レール部分に雪が積もっても、列車の走行で“左右のくぼみ”に押しのけられるため、運転に支障が出にくいというわけです。

 ただそれでも、特に雪が多い場所では“左右のくぼみ”が雪でいっぱいになってしまうため、それを列車の運行が終了した深夜に除雪作業車で高架橋の下へ排除する、高架橋に設置した融雪パネルで溶かすといった仕組みになっています。


北陸新幹線の除雪作業車(画像:JR西日本)。

 このように、高架橋上に雪が積もってもレール部分は影響を受けにくい構造、そして高架橋上の雪がいっぱいになっても排除する仕組みを持つことによって、北陸新幹線の同区間は雪に強くされています。

 しかし、この「高架橋から雪を排除するサイクル」が想定する以上の積雪があるなどした場合、列車を運休して深夜以外に除雪作業を行うといったことが必要になってくるわけです。

 新幹線の雪対策はこのほかにもあり、たとえば、上越新幹線に代表されるスプリンクラーの散水で雪を溶かす仕組みは高い効果がありますが、北陸新幹線のこの区間では水源の確保に課題があったこと、費用などから採用は一部になっています。