寺島しのぶ コロナ禍で異変「謎の頭痛、1カ月ベッドで横に」

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2020年は、みんな我慢してつらい一年でした。誰一人、快適な人はいなかったと思います。私も、本当に大変な一年でした。年明け早々トランポリンの柱に指をぶつけて骨折したんです。これは“来る”なと覚悟したんですね。

もう48歳になるから更年期になる時期ですよね。怒りっぽくてふだんから異様にテンションが上がってしまって。これを芝居で使いたいと思うくらい、沸点に到達するのが早かった。それから謎の頭痛に襲われるようになって……。

――そう振り返るのは、女優・寺島しのぶ(48)。出演映画『ヤクザと家族 The Family』が1月29日、『キネマの神様』が今春に公開されるなど、出演作が相次ぐなか、昨年は“人生初”の心身の異変に悩んでいたという。

昨年1月に長らく看病していたフレンチブルドッグが旅立ちました。飼っていた2頭の犬がいなくなったのが今から思えば私の中でダメ押しだったような気がします。

2〜3月ぐらいからひどい頭痛が続いて、更年期の自律神経の乱れかな、とごまかしながら仕事をしていましたが、我慢できなくなり、歯医者へ行きました。今までの頑張りで奥歯がほぼすり減っていて1本抜きました。

頭痛は一旦なくなりましたが、そこからコロナが始まりました。今まで一日3食作ることがまずなかったんです。体の大きな夫が一日中家の中にいることもなかった。子供もストレスたまってるからいろんなものを壊したり……。その毎日の繰り返しで体調に異変が起きてしまい、ついに起きられなくなってしまって、1カ月以上、ずっとベッドで横になる日々が続いたんです。

イベント会社を経営している夫も、仕事は全部キャンセルになりました。家にいる彼自身もつらいわけです。本来、みんな外で元気にやって、戻ってくるのが家族というもの。だから家族では癒されないんでしょうね。

またひどい片頭痛も始まって、病院に行ってMRIを撮っても脳に異常はなかった。やはり精神的なものだったようで。ドクターストップがかかってしまいました。

もともと、私は役づくりでもギューッと入り込む性格です。傷口に塩を塗り込んで痛がってる自分が好きみたいなところがあります。今まで、ずっと走り続けてきました。自分を大事にしてこなかったし、過酷な減量をしたり、息子が生まれてからは睡眠不足のまま仕事してきました。それが、コロナになって今までどおりにいかなくなったことが、やっぱりストレスだったんでしょうね。ついにオーバーヒートを起こしてしまったんです。

――そんなとき、「いつ電話してきてくれてもいいから」と救いの手を差し伸べてくれたのが、4歳年上の鍼灸師の従姉だったという。

彼女には「今までみたいに体が動かない、どうしよう」と、家族にも話せない悩みを打ち明けました。すると「そりゃ50歳近くにもなれば体もポンコツになるよ。でも、まだこれぐらいで済んだんだから、新しく発想の転換をしてけばいいんじゃない?」って言ってくれたんです。

これまでの人生、このまま続けることも無理ではない。しかし、人生はあと半分ある。ここから先、まるっきり違う人間にならなくても少しは変えられるかもしれない。自己否定ばかりしてきた人生ですが、自己肯定をするようにする。これを“第2期の寺島しのぶ”だと考えて、もうやるしかないなと思っています。

よく食べて寝てよく笑って、人間的な生活を送る。今までやってきていないことをちゃんとやらないといけない、と思い始めました。いろいろ本も読みあさりました。渡辺淳一さんの『鈍感力』も読み直しました。心と体が一致してないと絶対に健康ではない。鈍感力を持つ人こそ、したたかにはい上がれる力を持っていると――。

夫が探してきた、英語の瞑想のアプリにも助けられました。ハピネスとかストレスレスなど、レベルごとにその音を毎朝25分間ぐらい目をつぶって聴いていく。それは効果がありました。

9月から息子の学校も始まり、夫も仕事に出て、2人がいない時間が徐々に増えました。私も仕事を少しずつ再開してから、ようやく体調もよくなってきました。夫から「仕事があるだけ幸せだよ」と言われて、本当にありがたく感じないといけないなと思いました。今回の映画『ヤクザと家族 The Family』では、大きな心でいつでも受け入れる母親役を演じています。そういう母親って男性の理想なんでしょうね。

――寺島は今、日常生活を送るうえでテーマを3点、設けているという。(1)楽しむこと(2)癒されること(3)スッキリしたと思うこと。

小さいことでいいんです。朝、水を飲んでおいしく感じたことを楽しめるようにする、とか。

息子とも近ごろは1対1でピンポンのように話し合うようになりました。100%聞いてあげて100%返すってすっごい疲れるんですが、エネルギーをもらえます。最近では『鬼滅の刃』を一緒に見ました。ストーリーをわかろうとする私の姿勢がうれしいらしく、ちゃんと説明してくれます。一生懸命しゃべってる彼がかわいいなと思えるようになりました。疲れていると、そんなことも聞く耳を持てなくなってしまうんですよね。

お医者さんにも「何か新しい環境に変えてください」と言われたので、10月から黒柴を飼い始めました。かわいくて「ウニニニ〜」って自分でも思いも寄らない声が出ちゃって(笑)。

やっぱり家族間では絶対に癒されないものがあって、私は今まで犬に癒されてきたということが実感できました。従姉が言っていたのですが「更年期というのは人生が好転するいい機会だ」と。「将来、席を譲られて怒るのではなく、ありがとうと言ってニコニコ座れる朗らかなおばあちゃんがよくない?」って。ある現場で、宮本信子さんからもこう言われたんです。

「具合悪い? でも全然大丈夫! この先あと何年続くと思ってるの? 今がつらいって思うけど、どうってことないよ!」

本当にそうなのかもな、と――。いまは同世代の主婦の方と、お互いの悩みを話し合いたいですね。これまで白と黒の見方しかなかった私がグレーゾーンを習得し、今年はあわよくば七色になればいいと思っています。昨年より今年が悪いわけありませんから(笑)。

「女性自身」2021年1月19日・26日合併号 掲載