「就活セミナーや説明会の評価が高い」TOP20社
企業は就活生に向けてオンラインによるセミナーや説明会を充実させている(写真:metamorworks/PIXTA)
学生の企業研究は就職本や就活サイトから始まり、セミナーや説明会への参加によって実体験する。そして、志望を固めていく。そこで今回は、HR総研が「楽天みん就」と共同で実施した「2021年卒就活生を対象に就職活動動向調査」の3月調査と6月調査を合算したデータ(有効回答数1692件)から、学生から見たセミナー・説明会の好感度ランキングを見てみたい。
2020年卒採用までセミナーとは会場に足を運ぶリアルセミナーを意味し、遠方の学生向けの録画セミナーを除き、他の形態はほぼゼロに近かった。2021年卒採用ではオンラインセミナーというスタイルが登場した。今回のランキングに登場する企業の多くは、オンラインセミナーや説明会に対する評価となっていることが推測される。
アクセンチュアと旭化成が突出
この種の人気ランキング調査では常連企業の顔ぶれが決まっており、団子状態になることが多い。いずれも就職人気ランキングの上位企業である。そんな団子レースから抜け出ている企業が2社ある。アクセンチュアと旭化成だ。2社の票数は50台。他社は10票台から30票台までだから差は大きい。
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1位のアクセンチュア(59票=文系41+理系18)への感想を読むと、「頭がいい」「わかりやすい」という言葉が目立ち、社員に魅力を感じる学生が多かったことがわかる。オンラインセミナーも工夫されているようだ。
「話が端的でわかりやすかった」(早慶大クラス・文系)
「社員さんの回答が正直で頭がよさそう」(上位私立大・理系)
「社員とオンラインで話をする機会を多く設けていた」(上位私立大・文系)
「スマホで質問できるようなシステムになっていた」(上位私立大・理系)
リアルにせよオンラインにせよ、コンテンツは吟味され、豊富なメニューが準備されているようだ。無駄なく丁寧、コンテンツは多く、社員と話せる。その社員はとても頭がよくてカッコいい。とくれば人気があって当然だ。
一方、2位の旭化成(51票=文系33+理系18)で目立つのは「雰囲気」という言葉だ。アクセンチュアは社員一人ひとりの切れ味が魅力だとすれば、旭化成では場の醸し出す温かい空気感が心地よさそうだ。「ジップロックをくれる」(旧帝大クラス・文系)というコメントがあるように、お土産も雰囲気作りに役立っている。
「雰囲気がよく伝わった」(旧帝大クラス・文系)
「社員がいい人なのが伝わった」(早慶大クラス・文系)
旭化成でも社員と話す機会が設けられている。社員との接触は好感度アップの大事なポイントだ。旭化成は勘どころを心得てセミナーを構成している。回数が多いことも旭化成のセミナーの特徴。コンタクトが多ければ、理解は深まり好感度も上がる。頻繁な開催は手間がかかるが、見合うだけの効果がある。
「複数の社員が参加する座談会が何度か開催されていた」(上位国公立大・理系)
「頻繁に開催されていて、どの回も面白かった」(旧帝大クラス・文系)
丁寧に答えるカゴメ
3位のカゴメ(35票=文系23+理系12)で目立つ言葉は、「質問」だ。他社ではコンテンツへの言及があるが、カゴメのコメントにはない。学生の疑問に丁寧に答えることに徹している。学生は大人を警戒しているので、正直な大人に好感を抱く。
「飾らずありのままの話を聞けた」(早慶大クラス・理系)
「質問に丁寧に答えていた」(その他国公立大・文系)
斬新なコンテンツはなさそうだが、オンラインでの工夫はある。アーカイブを用意していつでも学生が視聴できるようにしているようだ。オンラインでの広報・選考ではネットリテラシーの有無が成否を分ける。カゴメは慣れているようだ。
「雰囲気が明るい。オンラインならではの、画角の意識などもちゃんとしていて『見られている』ということをちゃんと意識していたんだと思う」(旧帝大クラス・理系)
4位の日本航空(JAL、28票=文系25+理系3)は2010年代に入って就職人気が上がり、この数年ではJAL、ANAのエアライン2社がランキング1位、2位になることも多かった。コロナ禍によって航空旅客が減少して、経営環境は厳しさを増している。
しかし、就職セミナーはきっちり実施。オンラインセミナーやSNSも活用して学生への発信力を高めている。学生の評価を読むと絶賛に近く、就職人気が高いことの理由がわかる。一部の職種を除いて採用中止を発表したのは、本調査の後である。
「質問を受け付けその場で答えるなど、就活生にできるだけ企業のことを知ってもらおうとする姿勢が感じられた」(上位私立大・文系)
「説明が詳しかった。業務内容に関する理解や自分と合うかどうかなど考える材料をしっかりとくれた」(その他国公立大・理系)
「インスタを使ったものもあり、とても見やすかった」(中堅私立大・文系)
5位のNTTデータ(26票=文系15+理系11)で評価されたのは充実したプログラムだ。社風が伝わったと感じる学生もいるが、社員の話が説得力を持つのだろう。
「SIerという事業への内容を全般的に深めることができた点で有意義だった」(早慶大クラス・文系)
「社員座談会が充実していた」(上位私立大・文系)
「アットホームな雰囲気で、オンライン配信にもかかわらず社風が伝わってきた」(上位国公立大・理系)
同率5位のバンダイ(26票=文系15+理系11)の感想には「楽しそう」という言葉が目立つが、商品イメージが影響しているのだろう。また参加学生もそういう雰囲気を期待しているように思える。
「終始丁寧で、質問にも詳しく回答してくれた」(早慶大クラス・文系)
「楽しそうな雰囲気が伝わった」(早慶大クラス・理系)
親切な社員に好感
7位の東京海上日動火災保険(25票=文系25+理系0)は社員のコミュニケーション力に好感を抱く学生が多い。「丁寧、親切」は応接の基本である。
「質問にできる限り答えてくれた」(その他私立大・文系)
「人事の人の話し方がすごくわかりやすかった」(上位私立大・文系)
ギフトも効果が高い。セミナーに足を運ぶには交通費と労力がかかる。お土産をもらえば出費に見合うお得感があり、セミナーの印象は強まるはずだ。
「ギフトカードがもらえた」(その他国公立大・文系)
「企業紹介ムービーがカッコいい。説明会参加特典が豪華」(早慶大クラス・文系)
同じく7位の東海旅客鉄道(JR東海、25票=文系16+理系9)。同社に限らず、JR各社やエアライン系企業の強みは、業務を細かく説明する必要がないことだ。学生が自社サービスを利用していることを前提にセミナーを準備できるのは大きなアドバンテージになる。学生は業務内容を知っているので、社員から企業風土を知ろうとするのだろう。
「社員の方の誠実さが伝わって来た」(その他国公立大・文系)
「雰囲気が伝わり、温かいイメージを持った」(その他私立大・文系)
オンラインセミナーでは動画コンテンツに驚いた学生が多い。多数の新幹線を安全に便利に時刻表通りに運行するためには多種多様な職種が必要だ。
「職種や性別など、多種多様な説明会動画が用意されていた」(その他国公立大・文系)
「気になる内容を選んで試聴できた」(中堅私立大・文系)
9位のJTBグループ(24票=文系24+理系0)へのコメントで目立つのは「明確」「積極的」。学生は前向きで力強い事業戦略を感じるのだと思う。
「他社との違いが明確に示されていた」(上位私立大・文系)
「様々な子会社の企業説明会を見ることができた。積極的に、情報発信していると感じた」(その他国公立大・文系)
10位の富士フイルム(23票=文系16+理系7)へのコメントでは「就活に役立つコンテンツ」が評価されている。多くのセミナーでは自社業界とポジショニングや業務・職務の説明が多いが、同社は学生の立場(就活生)に寄り添ってコンテンツを作成しているようだ。こういう姿勢は学生に話の公平性、透明感を与え、信頼感を醸成するのだと思う。
「社員の方が会社の情報を提供するだけでなく、就活における考え方など学生を思ったコンテンツだった」(早慶大クラス・文系)
「企業に関してだけでなく就活に関しても勉強になる説明会であった。志望度が上がるような説明会であった」(上位私立大・文系)
社長が登場するニトリ
11位のニトリ(21票=文系18+理系3)で目立つのは「副社長」「社長」という言葉。採用セミナーに経営層が来ていれば、学生に本気度が伝わる。その熱意が志望度を高めるだろう。
「副社長から人生について大切な話を聞けた」(早慶大クラス・文系)
「社長が来ていた」(上位私立大・文系)
「熱気が伝わった」(中堅私立大・文系)
同じく11位のソニー(21票=文系8+理系13)の特色は文系よりも理系が多いことだ。昔も今もダントツの理系就職人気を誇っている。コメントを読むと、「職場」や「行きたい部署」という言葉があり、志望学生がより深くソニーを知ろうとして参加していることがわかる。
「職場の様子を隠さず話してくれた。社員の方の雰囲気のよさが伝わってきた」(上位国公立大・文系)
「行きたい部署の先輩社員の話を聞けて参考になった」(上位私立大・理系)
以下順位は13位(20票)が楽天、14位(18票)がアサヒ飲料、味の素、NEC(日本電気)、17位(17票)がジェーシービー、東日本旅客鉄道(JR東日本)、資生堂、20位(16票)が第一生命保険、花王と続く。
2021年卒採用での「最も印象のよかったセミナー・説明会」コメントを見てきた。今年の採用選考の特徴はリアルとオンラインの混在。オンラインの短所として企業も学生も対面でないことのもどかしさを挙げるが、コメントを読んでみると学生の違和感は大きくないようだ。
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もちろんオンラインセミナーの参加学生はパソコンの前で視聴しているので、さまざまなコンテンツ(動画、アーカイブ)にアクセスできる。この自由度はオンラインの大きな強みだろう。
変わらない評価ポイント
企業と学生の接触の場として評価すると、オンラインではリアルほどの非言語情報(雰囲気や熱意など)を伝えたり、感じ取ったりするのには限界がある。ただ、人は人を通じて影響を受け、好感や嫌悪感を抱く。どういう形態のセミナーであっても親切で丁寧、かつ正直に対応してもらえれば、学生は好印象を持つものである。