なぜ価格高騰? 日産「シルビア」やトヨタ「マークII」 国産の旧車が年々高騰する理由とは

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いまや希少な国産マニュアルFR車という存在

 国内外のクルマ好きからいまでも熱狂的な支持を持つ、国産スポーツカーですが、なかでもドリフトを始めとするモータスポーツでは、日産「シルビア」(S13型からS15型)とトヨタ「マークII/チェイサー/クレスタ」(X90型からX100型)の3兄弟は、ベース車として人気を博しています。
 
 しかし、ここ数年でその中古車相場が急高騰しているといいますが、その理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

今後、価格高騰が予想されるシルビア(S15型)は、SR20DETを搭載した即ドリ車で価格は200万円前後。(画像は風間オートサービスの3点エアロに前後フェンダーを装着した仕様)

 1988年から1993年まで販売されていたS13型からはじまり、1993年から1999年のS14型、1999年から2002年のS15型といったシルビアには、排気量2リッターのSR20DETというターボエンジンが搭載されたグレードがあり、代を重ねるごとに熟成されてきました。
 
 いっぽう、1992年から1996年のX90型、1996年から2001年に販売されていたX100型のマークII/チェイサー/クレスタの3兄弟のなかにも、排気量2.5リッターの1JZ-GTEというターボエンジンが搭載されたツアラーVというグレードがありました。

【画像】カッコよすぎ! 「シルビア」&「スープラ」のエアロ仕様を見る(12枚)

 どちらも、ターボエンジンに加えてマニュアルトランスミッションが採用されているFR車で、価格帯も手頃なことからかなりの台数が販売されていました。

 そして販売終了後も、中古車としての流通量が多く、手頃な価格帯をキープしており、ドリフト界を筆頭に、タイムアタックやレースといったサーキット走行ユースだけでなく、ドレスアップ界においても、いまだに根強い人気を誇っているカスタムベース車として親しまれてきた車種となっています。

 型式やグレードに年式、走行距離や仕様にもよりますが、10年前ならシルビアで30万円台から、マークIIやチェイサーにクレスタの場合でも50万円台から、そこそこ状態のいいものを探すことができていたそうです。

 販売終了から10年以上が経過し、少しずつ個体数が少なくなるにしたがい、程度のいい個体が高値になってくことはあるものの、状況は一変。ここ数年で一気に相場が倍増してしまいました。

「シルビアなら150万円前後、マークIIとかチェイサーなどのツアラーVだと150万円から200万円くらいはないとまともに買えませんね」と、長年これらの車種を販売してきた風間オートサービス代表の風間氏は説明します。

 さらに、エアロが組まれていたり、ホイールが装着されていたりすれば、さらに値段が上がってくるというのが現状だそうです。

 価格上昇の理由としては、最終モデルだったとしても20年が経過した車種ということもありますが「スカイラインGT-R(BNR32型)の相場に引っ張られたのでは?」というのが風間氏の見解です。

 数年前に、通称“25年ルール”と呼ばれるクラシックカー登録制度が適用され、アメリカでも輸入できるようになったのが、日本を代表するスポーツカーとして広く知られている日産「スカイラインGT-R(BNR32型)」です。

 このとき、一気に相場が高騰した同車に釣られる形で、日本産のマニュアルFR車が世界的に認知され、シルビアやマークIIといった車種の価格も急上昇してしまったとのこと。

 シルビアやマークIIの価格上昇にも驚きましたが、スカイラインGT-Rにいたっては、R32、R33、R34にかかわらず、程度のいい個体やVスペックIIなどの限定車は1000万円台でも売れてしまうというのですから、驚愕の状況といえます。

 さらに、ホンダ「NSX(NA1型)」やトヨタ「スープラ(JZA80型)」といった車種もおなじく価格の高騰がみられるそうです。

 さて、シルビアやマークIIにおける価格高騰の原因はなんとなく判明しましたが、今後についてはどうなのでしょうか。

「S13型やS14型はそれほど相場変動しないと思いますが、S15型に関してはもうひと伸びしてしまうのではないかと考えています」と風間氏。

 これは、スカイラインGT-Rとおなじく、数年後に“25年ルール”が適用されるようになるからで、その人気次第ではS15型もプレミア価格となってしまうことが考えられます。

買っても故障の覚悟は必至か!?

 そして注意すべきは価格が高くなったとしても“20年以上も前に販売されていたクルマ”という事実に変わりはないということです。

 S15型やX100型の最終モデルだったとしても20年前なうえ、S13型やX90型の初期モデルともなれば、30年以上も前に販売されていた車種であり、いくら丈夫なイメージのある日本車といえど、とうぜんのように劣化がみられるそうです。

「もはやハコスカを買うイメージですね。しばらく動かしていなかったり、オーナーが変わったとかで壊れるケースはよくあります。

 まともそうに見えてもヤレてきていたり、ガタがあることもあるので、ある程度の故障は見越しておかないといけませんね」(前出・風間氏)

 そして、近年はネットオークションが盛んになっていますが、詳しく見てみたら結局はクルマ屋だったなんてことも多々あります。

 中古車販売サイトの場合は諸経費込みの価格となっていることも多いのですが「オークションの場合は諸費用にも注意したほうがいいです。実際にクルマを見れるのか、エンジンをかけたりできるのか」と、風間氏は重要になってくるといいます。

このスープラ(JZA80)は、販売できる状態へと仕上げている最中で、価格は高騰しており完成時には600万円前後にはなるという。

 ある程度の故障を覚悟して、それでも買うとなったのなら、次はお店選びが重要となります。

「けっこう部品も無くなってしまっているものもあるので、中古パーツをストックしていたり、その車種を得意としているお店を探すことも大事です」と風間氏がいうように、純正の新品が出てくればいのですが、廃盤となっているパーツもあるとのことで、壊れてもすぐに直せるかどうかは、選んだお店次第です。

 また「これらの車種を買うのであれば予算には余裕を持って、愛情を持って付き合っていくことが大切です」といいます。

 シルビアにしてもツアラーVにしても旧車と呼べるほど年月が経過しているだけに、ある程度の覚悟とともに、愛車に詳しいお店探しが重要となりそうです。