プロ続々輩出!水戸ホーリーホック下部組織「急成長の理由」を直撃インタビュー

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Qolyでは「今Jクラブのアカデミーやスクールはどんな選手を求めているのか?」と第し、様々なチームの育成に関わるコーチに直撃する企画を進行中!

第1弾ではガンバ大阪を取り上げたが、今回は関東でこのところ存在感を高めている水戸ホーリーホックのアカデミーに接触してみた。

かなりのサッカーファンでも、水戸のユースは数年前までほとんど印象がなかったはず。しかしながらこのところは中川洋介選手、大原彰輝選手、平田海斗選手、さらに田辺陽太選手とプロ契約を結ぶ選手が常に輩出されており、その「急成長」が驚くべきものだ。

同じ茨城県に鹿島アントラーズという大きなクラブがあるという環境の中、水戸はどのようにアカデミーを成長させたのか。

水戸ホーリーホックでアカデミーダイレクターとユース監督を兼任する樹森大介さんに直撃し、その「変化」について聞いてきたぞ!(協力:FMおとくに[@fmotokuni] & カゴノブアキ[@cage_nob])

【動画】水戸ホーリーホックの下部組織に入りたいという方は必見!

――樹森大介さん、今回はお越しいただきありがとうございます。今の肩書としては?

「アカデミーダイレクター兼ユースの監督という形で、今年はやっております」

――現役時代のキャリア、そして指導者になってからの指導歴は?

「群馬県の前橋商業高校から専修大に進み、そこから湘南ベルマーレ、水戸ホーリーホック、ザスパ草津…という形でプロでのキャリアを終了しました。

指導者となってからは、ザスパのときに母校である前橋商業高校のコーチを3年ほど務めました。また、ジュニアユース年代なんですがFCコールージャという僕の出身クラブで3年指導しました。

そして2012年に水戸ホーリーホックのユース監督としてやってきて、今は9年目となります」

――水戸ホーリーホックのユースやアカデミー、スクールはどんな規模なのですか?

「ユースは3学年で38名です。ジュニアユースは1学年20人、計60人で活動しています。ジュニアの部は小学4年、5年、6年の3つのカテゴリで31〜32名だと思います。

スクールのところに関して言いますと、水戸校、那珂校、ひたちなか校、茨城町校、筑西校と大きく5箇所の会場で年間計550人前後ですね。

ちょっと今年は新型コロナウイルスの関係で少なくなってしまいまして、500名前後のスクール生とともに活動しています」

――茨城県には鹿島アントラーズがありますが、その影響は?

「鹿島アントラーズさんの本体に関して言えば、車でも1時間以上かかってしまう距離感なので影響はありません。

ただ、鹿島さんは本体、つくば、ノルテという3拠点を設けております。そのノルテという地域が水戸と結構被っていますね。

若干はもちろん違うんですが、ひたちや県北ですね。水戸の本拠地は中央地区というのですが、スクール会場などで多少重なります」

――そういえば、水戸と言えば新しいクラブハウスの「アツマーレ」ができましたね。下部組織にも影響は?

「アツマーレという場所は、水戸市から車で50分程度かかる上、交通手段があまりない場所なんですね。

ですのでアカデミー生やスクール生含め、行くことは年間数回です。イベント等々でグランドを使用したり、トップとの交流を図るときには使用しますが、基本的には回数は少ないかなと思います。

ただユースに関して言えば、練習試合やトップとの交流というのは頻繁に行っておりますので、バスや保護者の送迎もうまく使って開催しています。

――失礼ながら、以前は水戸のユースにほとんど印象がありませんでした。しかし、2017年に中川洋介選手、2018年に大原彰輝選手、2019年に平田海斗選手と、このところはコンスタントにプロ選手を輩出しています。なにか変化はあったのですか?

「水戸ホーリーホックは予算規模が少なく、アカデミーにパワーをかける力がなかった…というのが2000年代でした。

僕がやってきたのが2012年なんですが、なぜ自分が呼ばれたかと言えば『ユースの強化をしたい』ということだったんです。そこからはトップに繋がるような強化をしてきました。

中川は僕が来てから2年目に獲得した選手なんです。1年目は獲れないので、次の年ですね。

そこからは中川が出て、大原、平田、そして今年も田辺陽太という選手が昇格内定しておりますので、コンスタントに出るように『やっとなってきた』のが現状だと思います」

――中川選手と大原選手はアルビレックス新潟シンガポールに期限付き移籍、平田選手はブラジルに留学していましたね。クラブとして海外の経験は重視しているのですか?

「シンガポールに関して言えばトップの年代で行きましたので経験の場です。アカデミーとしても、平田はクラブの計画で高1の時に短期留学という形でブラジルへ2週間程度行きました。

そして今年トップ昇格する田辺も1年生の時にブラジル留学をさせています。そういう活動をして強化に繋げてきました。

トップとアカデミーで多少考え方は違うと思うのですが、トップは経験の場として、ユースは世界のトップレベルの選手を肌で感じて成長する機会という形で行かせております」

――そういえば冨田大介さんが「クラブリレーションコーディネーター(CRC)」という聞き慣れない役職に就きましたが、下部組織との関わりは?

「クラブのフィロソフィ(哲学)や考え方をアカデミーにも伝えていただいたり、クラブとアカデミーの間に立っていろいろなことに前向きに取り組んでいます。

アカデミーは水戸事務所、トップはアツマーレ…この間は車で50分ほど掛かるので、コミュニケーションは簡単に取れなくなってしまったんですね、残念なことに。

そこで、冨田が練習現場に関わることによって、ユースの選手の成長や、アカデミースタッフの取り組みなどをしっかり見て、共有しているという形です。

『CRC』という名の通りアカデミーだけではないので、フロントとの間に入ったり、選手との間に入ったりですね。アカデミーのことを言えば、そのような形になります」

――アツマーレと水戸との間をつなぐ役割もあるんですね。

「そこまで離れてしまうと、水戸で一緒にいたときとは違った形になってしまうので…大きな役割になっていると思います」

――樹森さんから見て、水戸ホーリーホックの育成の特色は?

「普及のところで言えば、サッカーの楽しさを伝える、スポーツをサッカーを通して育てることが大きな形となっています。

この5年くらいですかね、競技的なサッカーに特化したスクールコーチも多く入ってきましたので、競技の能力向上という面も特徴です。

ジュニアからユースの年代に関して言いますと、うちのクラブは『人を育てる』ことが大きな言葉になっております。

サッカー選手としての成長はもちろんですし、目的はプロサッカー選手になることでありますが…それに加えて社会性ですね。人間的な成長というのを大きく謳っているのは大きいんじゃないかなと。そこを非常に大切にしています。

地域性の部分も大きく取り組みながら共有して、選手には伝えるようにしている…というのが大きな部分かなと思います」

――水戸ホーリーホックではどんな選手、どんな子供を求めていますか?

「内面的な部分でいえば、パーソナリティの高い選手を育てたい。ファン、サポーターに魅力的な選手だと思っていただきたいので、サッカーだけやっていればいいというわけではないですね。

なのでトップ同様、発信力や取り組む姿勢を持ち、前向きにやれる選手を育てていきたいと思っています。

また、そういう選手が上で活躍することによって、サッカー以外の役割も大きくなるんじゃないかなと思っています。

そしてサッカーの部分で言えば、特徴のある選手が上で活躍すると思います。水戸独自というよりは…クラブのフィロソフィやスタイルは構築しているんですが、自分の武器というのを成長させられるような取り組みをしています。『武器がある選手』を育てていきたいと思っています」

――水戸ホーリーホックに入りたいというお子さんや親御さんにメッセージを頂けますか?

「水戸ホーリーホックはサッカーを通じて人間的な成長を大きくできる場だと思っています。社会に出て輝ける人材を育てていきます。

もちろんその中でプロサッカー選手になるよう協力して頑張っていきたいと思いますので、ぜひ水戸ホーリーホックのアカデミーをよろしくお願いいたします」

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予算規模が小さく、さらに同県に大きなライバルがある後発クラブ…と、傍目からは厳しい環境にあるように見える水戸ホーリーホック。

その中で行われている様々な施策や人間性の育成にも焦点を合わせた取り組みなどを行い、クラブリレーションコーディネーターという新しい役割も生み出した。その結果は徐々に現れているといえるだろう。

水戸ホーリーホックでサッカーをやりたい、プロを目指してみたいという方は、ぜひクラブのホームページなどを引き続きチェックしてほしい。