知らず知らず行っているかもしれない「睡眠の質を下げる3つの習慣」をご紹介します(写真:horiphoto/PIXTA)

残業続きで睡眠不足のため、日中は頭が回らず、仕事が片付かないからまた残業が増える……。そんな悪循環を断ち切りたい!という人も多いことでしょう。

そんな忙しいビジネスパーソンに、短時間でも疲労を回復できる“理想の睡眠”を伝授するのが、睡眠セラピストで『誰でも簡単に疲れない体が手に入る 濃縮睡眠®メソッド』の著者でもある松本美栄さんです。

知らず知らず行っているかもしれない「睡眠の質を下げる3つの習慣」を教えてもらいました。

睡眠の質を上げるために「やめるべき3つの習慣」

入眠してすぐに深い眠りに到達し、それが持続する――そんな理想的な睡眠を、私は「濃縮睡眠」と名付けています。この「濃縮睡眠」を実現できれば、たとえ短い睡眠時間であっても体と脳の疲れがとれ、すっきりと目覚めることができます。

今回は、睡眠の質を上げるために「やめるべき3つの習慣」についてお伝えしましょう。

まず1つ目は、「就寝前に考え事をするのをやめること」。

とくにデスクワーカーの疲れがとれないのは、体が疲れているからではなく「脳」が疲れているからです。脳疲労は睡眠の質を下げ、慢性的な疲れの原因になることが脳科学の研究によってわかっています。

脳が疲れている人は、交感神経が優位になった緊張状態のままです。この状態のまま眠ってしまえば、深い眠りに入ることはできません。脳疲労は眠りを浅くし、睡眠の質を下げる原因なのです。

それだけではありません。質の低い睡眠では、脳の疲労がとれないため、脳疲労が睡眠の質を下げる→質の低い睡眠がさらに脳疲労を蓄積させる→その結果、ますます睡眠の質が低下する……という悪循環が起きてしまうのです。

以上のように、脳疲労は睡眠の質を下げる最大の原因の1つです。よく眠るためには、脳疲労を上手に取り除いてあげなくてはいけません。

例えば、布団に入ってから、仕事で結果を出さなくてはいけない、明日のプレゼンはうまくいくだろうか……と考えてしまっていませんか? 頭の中にある不安は、放っておくといつまで経っても消えません。それどころか、頭の中でぐるぐると回っているうちに、どんどん大きくなっていくものです。

こうした大きな不安が頭の中に居座り続けると、これが脳疲労につながり、眠りを妨げることになります。そうならないためには、頭の中にある不安をいったん、外に出してあげるようにしましょう。

そこでおすすめしたいのが「不安のアウトプット」です。方法は簡単。不安に思っていることを、紙に書き出すだけです。

まず、適当な紙を用意してください。ノートでも、コピー用紙のような1枚の紙でもかまいません。ノートであれば左ページ、1枚の紙なら真ん中で折り目をつけた左半分に、不安を書き出していきます。

不安は、頭の中にあるときはモヤモヤとした曖昧なものです。「何が不安というわけじゃないんだけど、とにかく不安で仕方ない」ということはよくあると思います。ところが、おもしろいもので、「不安なことは何か」を考えて紙に書き出そうとすると、ある程度、はっきりした形が見えてくるようになります。例えば、「明日のプレゼンがうまくいくかどうか不安だ」というようにです。

じつは、こうして具体的に書き出しただけで、不安はかなり収まります。何が不安なのかを言語化できたということは、自分の置かれている状況を客観的に見ることができたということ。言い方を変えれば、問題をある程度、整理できたということでもあります。

頭の中にあったモヤモヤとした「なんだか怖いもの」が、対処すべき具体的な問題に変わったのです。

不安を紙に書き出しアウトプットする。たったこれだけのことでも、脳疲労の原因となるストレスはかなり軽減されます。

脳の温度と室温をコントロールする

2つ目は、「寝る直前の入浴をやめること」です。

眠りに入っていくとき、脳と体の温度、いわゆる「深部温度」は下がっていきます。スムーズに脳が冷めていかない環境では、なかなか眠りにつくことができません。

お風呂に入って温まった直後は、当然、脳の温度はかなり高くなっています。ここから脳が冷めるまでには時間がかかります。そのため、入浴した直後に布団に入ってしまうと、すぐには眠ることができないのです。

そこで、入浴後、できれば90分、最低でも60分が経過して、脳の温度が下がってきたころにベッドに入るのがベストなのです。

帰宅が遅くなったりして、入浴後に90分も起きていられない、という日もあるでしょう。その場合は、入浴の仕方を変えます。40度以下のお湯に短時間(10分以内)つかるようにするのです。このほうが、体温が上がりすぎず脳が冷めやすくなるので、ベッドに入るまでの時間を短縮することができます。

また、シャワーを浴びながら足湯だけつかることもおすすめです。入浴後から就寝まで必ず90分空けることは難しいかもしれませんが、これまで「風呂に入ったら寝る」という習慣だった人は、「入浴後はすぐに寝ない。脳を冷ます時間をとる」という意識を持つようにしてください。

意識して脳を冷ます時間をとることで、寝つきがよくなるのを実感できると思います。

そして、基本的に暑すぎる部屋は睡眠の質を下げてしまうため、寝室の温度は「ちょっと涼しめ」にしましょう。

具体的には、冬場は22〜23度。夏場なら25〜26度くらいが睡眠にとってはベストな室温だと一般的に言われています。

ただし、暑さ寒さの感じ方には性差や個人差があります。冷房の利いた部屋で、男性は「まだ暑い」と言っているのに、女性は寒くてカーディガンを羽織っている、といった光景はよく目にします。

ですから、先ほど挙げた温度を基準にして、自分にとって心地いい温度に調整するようにしてください。体感として「ちょっと涼しめかな」と感じられるくらいがちょうどいいでしょう。冷え性の人は、気持ちのいい暖かさを目指すというアプローチでもいいと思います。

エアコンで室温を調整するだけでなく、寝間着や寝具も使ったうえで、いちばん快適な温度にすることが大切です。

夏場は涼しく感じられる冷感機能のあるシーツを使ってもいいですし、冬場はモコモコと毛のついた敷きパッドを使って暖かく眠るのもいいでしょう。

寝具や寝間着は、温度調節だけでなく、肌触りにも注意して、身につけて気持ちいいものを選ぶことも心がけてください。

なお、湿度については、50〜60%が快適です。

夏場はエアコンを除湿モードに、冬場は加湿器を使うことをおすすめします。鼻炎や花粉症などのある方は、空気清浄機も使うといいでしょう。

「ソファ」と「ベッド」の用途に注意

3つ目は、「ベッドをソファ代わりにするのをやめること」です。

極端に忙しい生活をしている人は、ときどきソファで眠ってしまったりすることがあると思います。

ちょっとひと休みのつもりが、そのまま「寝落ち」して、明け方ソファで目が覚めた……という経験がある人も多いでしょう。

このように、ソファをベッド代わりにして寝てしまうのは、理想的な睡眠とは言えません。ちゃんとベッドに入ったほうがいいのはもちろんです。けれども、忙しい生活のなかでは、ときどきこういうことがあるのも仕方がないと思います。

それよりも、睡眠の質を高めるうえで絶対にやってはいけないのは、この逆のことです。

ソファをベッド代わりにするのではなく、ベッドをソファの代わりにすること。これは絶対にやめるべきです。

「ベッドは眠る場所」と認識させる

ベッドの上を、寝る時間以外にはくつろぎの空間として使っている人は少なくないのではないでしょうか。テレビを見ながらゴロゴロしたり、ゲームをしたり、パソコンやタブレットを持ち込んで動画を観たり、読書をしたり。ちょっとおやつをつまんだりすることもあるかもしれません。本来はソファでやるべきことを、代わりにベッドでやっているわけです。

これがどうしていけないのかというと、ベッドを眠る以外の用途に使っていると、「ここは眠る場所だ」という認識が薄くなってしまうからです。すると、いざ寝るためにベッドに入っても、脳と体がスムーズに眠りに入ってくれなくなってしまうのです。

ベッドはあくまでも眠るための場所です。眠るとき以外は、ベッドに入るべきではありません。これを徹底すると、夜、ベッドに入ったらすぐに眠たくなるようになります。「ここは眠るための場所だ」と脳が認識しているからです。筋肉が緩み、副交感神経が優位になって、自然と眠るモードに移行できるようになるのです。

また、同じ理由から、目覚めた後にベッドでいつまでもゴロゴロしているのもよくありません。やはり、「ベッドは眠る場所」という認識が弱まってしまいます。目覚めたら、できるだけすぐにベッドから出るようにしましょう。

とはいえ、ワンルームの部屋に住んでいる方は、どうしても起きている時間の生活空間としてもベッドを使わざるをえないと思います。

帰ってきたら、まずはベッドに座ってひと休み、という習慣があるかもしれません。テレビを観るときもベッドに座ったり、もしかすると食事もベッドに座ったままするかもしれません。このように、ベッドをソファ代わりに使わざるをえない人は、ちょっとした工夫をしてください。

朝起きたら、ベッド全体を覆うように大きな布をかけてしまうのです。


これで、ベッドはソファに変わります。起きている間は、ソファとして使ってかまいません。クッションを置いたりして、よりソファらしくするのもいいでしょう。

そして、いざ寝るときになったら、布をはずしてソファからベッドに戻すようにします。こうすると、布をはずした後のベッド、本来の形を取り戻したベッドは、眠るためだけの場所として意識できます。布をかけた「ソファ」と、布をはずした後のベッドは別物という認識になるわけです。

ベッドをソファ代わりに使うことによる問題は、このひと工夫で防ぐことができます。

以上が、理想的な睡眠を実現するための3つのヒントです。少しの工夫と心がけで、睡眠の質は劇的に変化します。ぜひ、実践してみてください。